月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
195 / 365
新たなる住処

第180話 荒野の狼のランクアップ

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第180話 荒野の狼のランクアップ

沙更のハイヒールが凄すぎたのが衝撃的すぎたのか、一気に静まりかえってしまう。そこに、模擬戦と言う果たし合いを終えたミリアが側に寄った。

「セーナちゃんごめん、面倒をかけちゃった」

「ミリアお姉さんこそお疲れ様です。えっと、軽くですけどヒール」

沙更は、ミリアに軽く癒やしの光を当てるとミリアの身体から疲れが抜けていった。沙更の気遣いにミリアは頭を撫でて、ありがとうを伝える。

そんな二人を見つつ、ルーカはパウエル達が既にBランクに到達していることをなんとなく理解した。ダイスに打ち勝てる冒険者はそうはいない。

最低でもBランク上位でなければ、打ち合いで体力切れを起こすはず。それをたった2撃でとなれば、既にAランクに到達していることを意味していた。

それに、先に出ていたゴブリンジェネラルにゴブリンロードの討伐はBランク以上推奨であり、Cランクでは請け負うことも出来ないクエストであった。それをこなしてくることを換算にいれて、Cランクのままにしておくのは損失でしか無い。

一瞬で、そこまでそろばんを弾いたルーカだったが、沙更のつぶやきに更に驚かされることになる。

「そう言えば、ルーカさん。盗賊の件って報告を受けていますか?」

「えっと、盗賊の報告とは?」

思わず聞き返してしまったルーカだが、ふと疑問に思う。盗賊の件の報告って何のことだと思うが、その事を口にする前に沙更が答えを言った。

「なるほど、まだゼオンさんたちの確認が取れていないから冒険者ギルドに報告が行っていないとそう言うことですか」

「えっ、ゼオンってあの正騎士ゼオン様のことですか?」

「はい。実は、盗賊たちに襲われましてアジトごと返り討ちにしたのです。で、その確認にゼオンさんを頼った次第なのですが、まだみたいですね」

沙更の言葉に、驚くルーカ。街道の盗賊たちもCランクの冒険者で対処出来ない相手であった。

そもそも、Bランク昇格試験が盗賊退治であることからして既にBランクになってもおかしくない。ゴブリンロードと街道の盗賊退治で充分にギルド貢献度は足りていた。

「えっと、盗賊退治の証拠はこの斧でどうでしょうか?」

そう言って取り出したのは盗賊の頭が使っていた魔鉄の斧。そこに、起き出したダイスがその斧を見て目を見開いた。

「おい、この斧はもしや街道の盗賊のか!?刃にひびが入ってやがるが、誰がやった?」

その問いに答えたのはガレム。自分の斧を見せつつ口を開く。

「それをやったのは俺だ。この斧で全力のフルスイングを叩き込んだらそうなった」

「はっ?その斧、鋼の斧だよな?魔鉄の斧をそれでひび入れただと!?」

驚くのも無理はない。この世界の鋼は頑丈さで魔鉄に勝てない。魔力を込められたら尚更で、鋼が勝てる要素が無くなってしまうのだ。

だが、沙更の修復魔法で修復した炭素鋼の斧は鋼に分類できるギリギリまで炭素の量を増やした一品であり、炭素量が増えている為に普通の鋼よりは脆いが魔鉄以上の硬さを手に入れていた。その為、魔力を込めない魔鉄に打ち勝ったのだ。

「セーナちゃんが炭素鋼って言ってたな。鋼の仲間だとさ」

ダイスもルーカも炭素鋼と言われてもわからないようだ。馴染みがないのは炭素鋼自体、かなりの熱を必要とするだけに、鋼をなんとか作れる位の設備では作ることは出来ない。

それなので、もしかしたらと沙更がある金属の名前を出すと二人に驚かれると同時に納得されることになる。

「ダマスカス鋼って言えば分かりますか?」

「はっ!?ダマスカス鋼だと!古代の鋼じゃねえか、ああそれなら魔鉄に打ち勝てるのも納得だ」

「実は魔鉄を使い始めたのはここ数百年ほどで、それ以前は鋼だけだったそうです。でも、古代の鋼だとするとその斧は下手すると魔鉄の斧より高いかもしれません」

そう言われて、沙更はまたやってしまったことに気づく。やはり、武器はその人に取っての命綱でもあるからそれはそれで良かったのかもと思い直す。

「流石に、この斧を手放すような奴じゃねえ。となるとだ、お前たちを昇格させることになるな」

「私も反対しませんし、むしろさせるべきです。現状を考えれば尚更でしょう」

そうして、パーティー荒野の狼のBランク昇格が決まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

根暗男が異世界転生してTS美少女になったら幸せになれますか?

みずがめ
ファンタジー
自身の暗い性格をコンプレックスに思っていた男が死んで異世界転生してしまう。 転生した先では性別が変わってしまい、いわゆるTS転生を果たして生活することとなった。 せっかく異世界ファンタジーで魔法の才能に溢れた美少女になったのだ。元男は前世では掴めなかった幸せのために奮闘するのであった。 これは前世での後悔を引きずりながらもがんばっていく、TS少女の物語である。 ※この作品は他サイトにも掲載しています。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

『公爵家を乗っ取った男爵一家は、家系図から消えました』 ―偽令嬢は王太子妃を夢見て国外追放、私は公爵として責務を果たします―

ふわふわ
恋愛
両親を亡くし、幼くして公爵家の当主となったエレノア。 後見人を名乗って入り込んできたのは、男爵である叔父一家だった。 「公爵家は私たちが守ってあげる」 ――そう言いながら、彼らはいつしか公爵を名乗り、財産を使い込み、娘を“公爵令嬢”と偽って社交界へ。 やがて王太子との婚約話まで進み、公爵家は完全に乗っ取られたかに見えた。 だが―― 「その公爵令嬢、偽物ですわ」 静かに微笑んだ瞬間、全ては覆る。 血統の証、一族会議での断罪、王家への正式告発。 爵位僭称、王家欺瞞、財産横領。 男爵一家は次々と罪を暴かれ、家系図から名を消されていく。 救済はない。 情もない。 あるのは責務のみ。 「公爵は、情より責務です」 本物の公爵令嬢エレノアが、奪われた家と誇りを取り戻し、王家と対等に並び立つまでの徹底ざまぁ恋愛譚。 偽物は消え、本物だけが残る。 これは、乗っ取られた公爵家を完全に取り返す物語。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...