198 / 365
新たなる住処
第182話 正当な報酬
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
第182話 正当な報酬
ゴブリンジェネラルやゴブリンロードの魔石に盗賊の頭の魔鉄の斧とクエスト二つを片付けた荒野の狼のメンバーに、ダイスもルーカもしっかり報酬を算出していた。
そもそも、クエストで張り出す予定であった。が、どちらにしろ受ける冒険者がほぼいないと思われた。既にBランク以上の冒険者はこぞって王都に移動していたからで、残っている冒険者の最上位がCランク中位だった。
その状態だったのが、荒野の狼がBランクに昇格したことで荒野の狼が冒険者最上位になった。このことは、ウエストエンドの冒険者ギルドにとって大きい。
ゴブリンの巣の討伐に金貨200枚、街道の盗賊退治に金貨130枚を用意していた。それをすぐに払うことになるとは思ってもみなかった。
「と言うわけでだ。双方の報酬金貨330枚しかと確認してくれよ」
「クエストとして発注をかける前に潰してきたって言うのは貴方たちが初めてだけどね。大森林を抜けてこようなんて普通は考えないわ」
ダイスから金貨を渡されたヘレナがそれを数える。それを見つつ話すルーカの表情は呆れていた。
大森林を抜ける冒険者など聞いたことが無いし、それをやる人間はもっといなかった。それをあっさりやってのけてきたと言う当たりが、沙更が居ると言う凄さなのだろうと一人納得していた。
実際は、沙更の加速魔法と探知魔法でモンスターを近寄らせずに駆け抜けたと言うのが正しい。別段縄張りを邪魔するほど奥に行ったわけでもないので、既にモンスター達は元に戻っている。
沙更の強力な魔力を探査魔法でばらまいた結果がそれなのだから笑えない。完全にモンスター避けの作用を起こしていたのはそれだけ、その魔法に込められている魔力の濃さがしゃれになってなかったと言う証でもあった。
そう言う考察はさておき、ヘレナが金貨の枚数を確実に数え終える。
「きっちり金貨330枚ですわ。と言っても、この報酬をどうするか考えませんといけませんわね」
「それはお前達で考えろ。俺たちが言うことじゃないだろうが」
「それもそうですけど、セーナちゃんがどうしたいかを聞いた方が良いと思いますよ」
ヘレナの困った顔を見つつ、ダイスは突き放すがルーカが知恵を出してくれた。考えてみれば、そこは沙更に聞いた方が早いと言うのも確かだった。大体において、補助魔法等々の援護が無ければここにいないのだから当然と言えば当然だった。
「えっと、私ですか?」
「確かにセーナちゃんがいなかったら、あたしたちここにはいないよ?」
「丸々俺たちで分けると言うのも確かに違う気がするな」
「あれだけ魔法を使い続けてくれたんだ、報酬の割方は考えねえとなあ」
「わたくしの治癒魔法では全然追いつかなかったのは分かっているわ。だから、セーナちゃんはどうしたいか教えて欲しい」
四人の顔が沙更の方に向いたので、どうしたものかと考えてしまった。
そもそも、大森林に向かったのも開拓村の生き残りを助けるためでそれは達成されている。クルシスの町まで送り届けることが出来ているからだ。そして、無事ウエストエンドまで送って貰っているから、沙更として報酬を貰うつもりは一切無かった。
冒険者になったのは今さっきであり、その資格があるかと言われると首をかしげてしまう。
「あの、私としては報酬を貰えません。結構皆さんに無理を言った格好ですし、開拓村の生き残りの人達を助けて貰いました。それに、ウエストエンドまで送って貰いましたし…」
「えっと、セーナちゃん。それだとあたしたちだけ丸儲けになっちゃうけど良いの?」
「どちらにしろ、私が貰ったとしてもミリアお姉さんに預けるだけですから余り変わりはありませんよ?どうせ、防具も武器もこれ以上の品は多分無いでしょうし」
言われて見るとそうなるのも四人として、納得できる範囲であった。沙更の武器防具は、本人の魔力で全て補われている。下手な市販品ではその魔力で作られた一品に勝つことすら叶わない。そのため、更新する必要が無かった。
第182話 正当な報酬
ゴブリンジェネラルやゴブリンロードの魔石に盗賊の頭の魔鉄の斧とクエスト二つを片付けた荒野の狼のメンバーに、ダイスもルーカもしっかり報酬を算出していた。
そもそも、クエストで張り出す予定であった。が、どちらにしろ受ける冒険者がほぼいないと思われた。既にBランク以上の冒険者はこぞって王都に移動していたからで、残っている冒険者の最上位がCランク中位だった。
その状態だったのが、荒野の狼がBランクに昇格したことで荒野の狼が冒険者最上位になった。このことは、ウエストエンドの冒険者ギルドにとって大きい。
ゴブリンの巣の討伐に金貨200枚、街道の盗賊退治に金貨130枚を用意していた。それをすぐに払うことになるとは思ってもみなかった。
「と言うわけでだ。双方の報酬金貨330枚しかと確認してくれよ」
「クエストとして発注をかける前に潰してきたって言うのは貴方たちが初めてだけどね。大森林を抜けてこようなんて普通は考えないわ」
ダイスから金貨を渡されたヘレナがそれを数える。それを見つつ話すルーカの表情は呆れていた。
大森林を抜ける冒険者など聞いたことが無いし、それをやる人間はもっといなかった。それをあっさりやってのけてきたと言う当たりが、沙更が居ると言う凄さなのだろうと一人納得していた。
実際は、沙更の加速魔法と探知魔法でモンスターを近寄らせずに駆け抜けたと言うのが正しい。別段縄張りを邪魔するほど奥に行ったわけでもないので、既にモンスター達は元に戻っている。
沙更の強力な魔力を探査魔法でばらまいた結果がそれなのだから笑えない。完全にモンスター避けの作用を起こしていたのはそれだけ、その魔法に込められている魔力の濃さがしゃれになってなかったと言う証でもあった。
そう言う考察はさておき、ヘレナが金貨の枚数を確実に数え終える。
「きっちり金貨330枚ですわ。と言っても、この報酬をどうするか考えませんといけませんわね」
「それはお前達で考えろ。俺たちが言うことじゃないだろうが」
「それもそうですけど、セーナちゃんがどうしたいかを聞いた方が良いと思いますよ」
ヘレナの困った顔を見つつ、ダイスは突き放すがルーカが知恵を出してくれた。考えてみれば、そこは沙更に聞いた方が早いと言うのも確かだった。大体において、補助魔法等々の援護が無ければここにいないのだから当然と言えば当然だった。
「えっと、私ですか?」
「確かにセーナちゃんがいなかったら、あたしたちここにはいないよ?」
「丸々俺たちで分けると言うのも確かに違う気がするな」
「あれだけ魔法を使い続けてくれたんだ、報酬の割方は考えねえとなあ」
「わたくしの治癒魔法では全然追いつかなかったのは分かっているわ。だから、セーナちゃんはどうしたいか教えて欲しい」
四人の顔が沙更の方に向いたので、どうしたものかと考えてしまった。
そもそも、大森林に向かったのも開拓村の生き残りを助けるためでそれは達成されている。クルシスの町まで送り届けることが出来ているからだ。そして、無事ウエストエンドまで送って貰っているから、沙更として報酬を貰うつもりは一切無かった。
冒険者になったのは今さっきであり、その資格があるかと言われると首をかしげてしまう。
「あの、私としては報酬を貰えません。結構皆さんに無理を言った格好ですし、開拓村の生き残りの人達を助けて貰いました。それに、ウエストエンドまで送って貰いましたし…」
「えっと、セーナちゃん。それだとあたしたちだけ丸儲けになっちゃうけど良いの?」
「どちらにしろ、私が貰ったとしてもミリアお姉さんに預けるだけですから余り変わりはありませんよ?どうせ、防具も武器もこれ以上の品は多分無いでしょうし」
言われて見るとそうなるのも四人として、納得できる範囲であった。沙更の武器防具は、本人の魔力で全て補われている。下手な市販品ではその魔力で作られた一品に勝つことすら叶わない。そのため、更新する必要が無かった。
0
あなたにおすすめの小説
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ化企画進行中「妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
部屋にこもって絵ばかり描いていた私は、聖女の仕事を果たさない役立たずとして、王太子殿下に婚約破棄を言い渡されました。
絵を描くことは国王陛下の許可を得ていましたし、国中に結界を張る仕事はきちんとこなしていたのですが……。
王太子殿下は私の話に聞く耳を持たず、腹違い妹のミラに最高聖女の地位を与え、自身の婚約者になさいました。
最高聖女の地位を追われ無一文で追い出された私は、幼なじみを頼り海を越えて隣国へ。
私の描いた絵には神や精霊の加護が宿るようで、ハルシュタイン国は私の描いた絵の力で発展したようなのです。
えっ? 私がいなくなって精霊の加護がなくなった? 妹のミラでは魔力量が足りなくて国中に結界を張れない?
私は隣国の皇太子様に溺愛されているので今更そんなこと言われても困ります。
というより海が荒れて祖国との国交が途絶えたので、祖国が危機的状況にあることすら知りません。
小説家になろう、アルファポリス、pixivに投稿しています。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
小説家になろうランキング、異世界恋愛/日間2位、日間総合2位。週間総合3位。
pixivオリジナル小説ウィークリーランキング5位に入った小説です。
【改稿版について】
コミカライズ化にあたり、作中の矛盾点などを修正しようと思い全文改稿しました。
ですが……改稿する必要はなかったようです。
おそらくコミカライズの「原作」は、改稿前のものになるんじゃないのかなぁ………多分。その辺良くわかりません。
なので、改稿版と差し替えではなく、改稿前のデータと、改稿後のデータを分けて投稿します。
小説家になろうさんに問い合わせたところ、改稿版をアップすることは問題ないようです。
よろしければこちらも読んでいただければ幸いです。
※改稿版は以下の3人の名前を変更しています。
・一人目(ヒロイン)
✕リーゼロッテ・ニクラス(変更前)
◯リアーナ・ニクラス(変更後)
・二人目(鍛冶屋)
✕デリー(変更前)
◯ドミニク(変更後)
・三人目(お針子)
✕ゲレ(変更前)
◯ゲルダ(変更後)
※下記二人の一人称を変更
へーウィットの一人称→✕僕◯俺
アルドリックの一人称→✕私◯僕
※コミカライズ化がスタートする前に規約に従いこちらの先品は削除します。
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
聖女だと呼び出しておいて無能ですか?〜捨てられた私は魔王様に溺愛される〜
みおな
恋愛
学校帰りにいきなり眩い光に包まれて連れて来られたのは異世界でした。
王子はこんなちんちくりんは聖女ではないと言い放ち、私を王宮から追い出しました。
元の世界に帰る方法は、魔王の持つ帰還の指輪が必要と言われ、途方にくれた私の前に現れたのは、美形の魔王でした。
そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~
みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。
生贄公爵と蛇の王
荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。
「お願いします、私と結婚してください!」
「はあ?」
幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。
そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。
しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる