月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第187話 追いかける準備2

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月の魔女とよばれるまで

第187話 追いかける準備2

若い男に、お金は大丈夫かと言われた沙更は前に買い物をしたおばさんに金貨は小さい商店では不向きだと言われたのを思い出していた。なので、先にミリアに両替して貰っていた銀貨を4枚ほど見せる。

「えっと、銀貨四枚ありますけどそれで足りますか?」

「えっと、全て買うなら銀貨3枚と銅貨6枚だな。銅貨4枚のおつりだけど、うちのお店ので良いのか?」

「はい、貴方のお店の野菜だから買うのです」

あっさり頷かれて、若い男としては苦笑を浮かべてしまう。まさか、こんな市場の奥の小さい露店に小さい娘が買いに来ること自体がまれだと言うのに、さらに全て買っていくと言うのだから。

流石にその申し出を断る理由も無い。実際、若い男は夜明け前にウエストエンドから離れた農村から野菜を毎日運んではこの露店で売っていた。なかなか売れないが、それでも現金収入があるのとないのとでは大違いなのだ。

「そう言われちゃ、断れねえな。銀貨受け取るぜ」

若い男に、銀貨4枚を渡して銅貨4枚を受け取る。そうして、店にある野菜を沙更に渡そうとするが幼い彼女に全て受け取れるわけが無い。

困った顔をする若い男だが、次の瞬間に驚かされる羽目になる。渡した野菜が消えていたからだ。

「あれ、渡した野菜は?」

「大丈夫です、ちょっと移し替えただけですから」

そう答える沙更に首をかしげる若い男。一瞬のうちに虚空庫に入れられているとは思いもしない。時空間魔法は既に無くなって久しい。なので、そんなことが出来るなどと思いも寄らないのだ。

あっと言う間に、全ての野菜が虚空庫に送られる。いつの間にかなくなった野菜に首をかしげる若い男。だが、売れた事実は手に残った銀貨の重みが教えてくれていた。

市場の奥からパウエル達との待ち合わせである市場の前に戻ってくると既にパウエル達は戻っていた。

「セーナちゃん、良いのがあったみたいだね」

「顔に出てる。でも、市場にそこまで良いのあったか?」

「そういえば、セーナちゃんは野菜とか食材選び上手いわよね?なにかコツでもあるの?」

表情で、パウエルとガレムには分かったらしい。それと、ヘレナにそう言われて沙更はさらっと魔力鑑定のことを口にした。

「えっと、魔力で品物の鑑定が出来るんです。それで真贋見極めしてます」

「鑑定のスキル自体結構レアなのに、それを魔力でってどれだけ特殊なことをしてるか」

その事を聞いたヘレナが崩れ落ちる。魔力鑑定自体は、現代でも出来る人間はいるがかなり限られる。宮廷魔法士クラスじゃなければ扱えないと言われるレアスキルだからだ。

古代魔法士のエーベルに知恵などを授けられた結果、ミリア達と一緒になった時にはもう使えるようになっていたのだが、それは内緒である。

そもそも、沙更自身が魔力に猛烈に好かれているために起こった現象であった。月女神の生まれ変わりと神の器を持つからと言うよりも沙更本人に魔力に好かれる何かがあるらしい。本人もそれには気付いていなかった。魔力と相性がやたらに良いんだなあ位にしか思っていなかったから。
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