月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第188話 ウエストエンドの森1

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月の魔女とよばれるまで

第188話 ウエストエンドの森1

パウエルさん達に頼んだ干し肉の買い込みは冒険者ギルドであっさりと買えたことで簡単に終わったらしい。露店で若い男から買った野菜とジャガ種を買えた事を伝えると後買うのは牛乳とバターだ。

この世界でも酪農製品は鮮度がすぐに失われてしまうため、牛乳は高価な部類になる。一リットルの牛乳が銀貨1枚という時点で高価なのが分かる。バターも加工にそれなりの技術が必要になることからこちらも一ブロック銀貨1枚だった。

ある意味、両方とも保存にかなりの神経を使う形なのだが沙更に取っては全然問題なかった。時を止める虚空庫に、その心配は無用の長物だったから。

酪農関係を扱うお店をミリアから聞いて、沙更達はそちらに向かう。

無事、お店に着いたが昼を過ぎたことで、ある程度商品が売れてしまったようだ。が、まだ在庫はあるとのことでほっと胸をなで下ろす。

「牛乳二リットルとバター二ブロックをお願いします」

「あれ、ここらで見ない顔だね。お嬢ちゃん、親のお使いかい?」

「そう思ってください。えっと、銀貨4枚で代金は足りますか?」

沙更の言葉に、店員は頷くと裏から牛乳二リットルとバター2ブロックを取ってくる。

「はいよ、これがお品だ。銀貨4枚しかと受け取ったぜ」

沙更から銀貨4枚を受け取り、商品を渡してくれる。子供が持つには若干重いと思われたけれど、マイティアップを瞬時に詠唱していたので平気だった。

店員に頭を下げつつ、沙更は店を後にする。ミリアに品物を持ってもらいつつ、店から見えない距離まで来ると牛乳もバターも虚空庫に入れる。下手に持ったままでは鮮度が落ちてしまうからだ。

牛乳とバターが手に入ったことで追いかける準備は完了。後は追いかけるだけとなった。

「準備は、これで完了です。お待たせしました」

「いつもだけど、セーナちゃんが鑑定出来るからって目利きが凄いと思うよ。市場の奥のお店に並んでいる野菜全て買い込むとか普通やらないからね。絶対、勘違いされてそう」

「そうですか?良いものが安く売っているのなら、買い時だと思って動いただけです。それに、そろそろ店じまいの時間だったはずですし、大丈夫かと思います」

そのやり取りにヘレナが呆れた表情を浮かべた。どこのお大尽だと言いかねない行動を沙更はしていたのだ。

基本、露店でお店に並んでいる野菜を全て買うと言う行動をする人間はいないからだった。余程気に入ったとかならまだ分かるが、それでもそんな行動をする人間は珍しいと言って良かったのだから。

その一件で、市場奥のお店にお大尽が出没すると噂が立つことになるのだが、後の話である。

食料を買い込んだパウエルたちは、そのままウエストエンドから出発した。元々、装備を着込んで冒険者ギルドに向かっていたのですぐに動ける状態だったからだ。

沙更のエアウォークで普通に歩く速度の六倍を叩き出しつつ、加速魔法を維持しながらの探査魔法に、ミリアの気配察知も使って移動していく。大森林を移動した時と同じ事を今回も行っていた。

ウエストエンドの城壁から見える位置に森は有った。それ故、入るまでに掛かった時間はほんの数分。

森の中に入ったとしても、大気の後押しを受けての移動はすこぶる快適であった。歩きにくい樹木の間なども大気が補助してくれるから歩き易くなっていたからだ。

補助を受けているミリアたちは、あまりの補助に苦笑を浮かべていた。

「思ったけど、これ慣れちゃったら不味いかも」

「凄く楽に動けているけど、足の負担が少なすぎて筋肉が落ちそうだぜ」

「今は良いだろう。先輩たちを追いかけなきゃいけないんだ。せっかくセーナちゃんが使ってくれているんだから、有効に使った方が良いはずだ」

ガレムの言葉に、パウエルとしてそう言う。加速魔法自体が長持ちするものではない。だが、沙更だから出来る荒業だった。
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