月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
205 / 365
新たなる住処

第189話 ウエストエンドの森2

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第189話 ウエストエンドの森2

ウエストエンドの近くにある森は、周辺部は冒険者の初心者向けのクエストの場らしい。ちらほらと薬草取りや低ランクのモンスター退治をしている若い男女を見かける事が多かった。

低ランク向けの狩り場でもあるのだろうと思う。沙更がお邪魔することはほぼなさそうだが、薬草とかの知識を手に入れに行くのはありかなと思ったりもする。

そんな沙更を見ていて、ミリアが首をかしげる。

「セーナちゃん、ちらちらと低ランクの子達を見てたけど気になる子でもいた?」

「そう言うわけじゃ無くて、薬草の知識もあればいいなって思っただけです。魔力が高いから、治癒魔法に頼りがちですけどそれだけじゃ助けられないこともあり得そうだから、もしもの時の為を考えてです」

沙更の言葉に、先を見据えている気がミリアにはした。いずれ必要になると思っていると考えている当たりが、飛び抜けている事を示唆している気がしたから。

その言葉に驚いているパウエル達だったが、確かに治癒魔法で助けきれないことがあると言う事を知らなかったからだ。

そのまま、森を更に奥へと向かう。中間点を超えた当たりから、どす黒い霧が周囲を覆い始めていた。沙更はエーベルからの知恵で、このどす黒い霧が瘴気を濃縮した物だと知っていただけに驚くしか無かった。

「こんなところで、こんな高濃度の瘴気の霧が出ている時点でかなり危険です。高ランクモンスターが出てきても不思議でもなんでもない」

「えっ、セーナちゃん。それって、かなり危険ってこと?」

「危険どころの話ではないです。人間でも数時間浴びていたら気が狂ってしまうでしょう。ある程度浄化しつつ動かないと動けなくなる可能性があります」

瘴気は、この世界の物では無い。それだけに、この世界を手に入れたいモンスター達の大好物であり、進化する力の元になる物でもあった。

そんな瘴気が高濃度で霧化しているこの場所自体、どれだけの危険地帯になっているかが想像できないくらいなのだ。

エアウォークで加速しつつ、更に奥へ行くと人の気配を感知した。どうやら、先行していたミストヘイムの面々のようだ。だが、そこにめがけてモンスターの群れが近づいているのも感じて、ミリアの顔を見る。その表情で、ミリアはパウエル達に声をかけた。

「リーダー、先輩達にモンスターの群れが迫ってる。あたしとセーナちゃんで先行するけど大丈夫?」

「分かった。俺たちも追いかけるが、先輩達のことを頼むぞ」

「了解、じゃあ先に行くね」

ミリアがそう言うと沙更の手を取る。

「ごめん、セーナちゃん。一緒に来て」

「ミリアお姉さん一人で行かせませんから、大丈夫です。それに、このままだと危険すぎますから私も行きます」

瘴気を知るのは古代魔法士の英知故。だからこそ、この状態がかなりの危険状態だと理解していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...