月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第190話 ウエストエンドの森3

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月の魔女とよばれるまで

第190話 ウエストエンドの森3

沙更とミリアがミストヘイムの救援の為に、パウエル達と離れて動く。

なぜ、この二人かと言えば加速魔法持ちで治癒魔法も攻撃魔法もこなせることと移動速度が速い事、ミリアの白の直刀は魔鉄以上の切れ味と耐久度を誇るからだ。下手な高ランクモンスターに出くわした場合に、この二人ならなんとか対処出来ると踏んだと言うのが大きい。

実際、パウエルたちと離れた途端にさらに加速する。ミリアの速度は盗賊系Aランク冒険者のそれを超えていた。が、それに追いつける沙更も桁が外れていると言って良い。

「リーダー達の速度に合わせていたけど、先輩達を救うとなると更に速度を上げないとね」

「ミリアお姉さん、その速度でも大丈夫そうですか?」

ちなみに、今出ている速度は徒歩の8倍以上。下手な馬車よりもよっぽど速度が出ている。普通の人間なら維持できない速度なのに、沙更もミリアも平然と移動していく。

エアウォークの加速に、元々の自身が出せる速度を足したらこうなったが正しい。なので、本人たちに取っては全然苦になっていなかった。

沙更の探査魔法に、ミストヘイムのメンバーが引っかかる。そこに、襲いかかるモンスターの数も表示されていた。

「ミストヘイムの方々に襲いかかるモンスター、数32。Cランク以上は確定です」

「セーナちゃん、そこまで分かるの?なら、さらに加速するよ」

ミリアが断りを入れて速度を上げると沙更もマイティアップで身体能力を引き上げ、その速度に追いつく。そこまで行くと、既に地上を歩いていない。森の木から木へと跳ねていく感じになっていた。

そんな調子で、急ぐ二人。ミストヘイムのメンバーまで、残りわずか。


沙更とミリアが急行していると知らないミストヘイムのメンバーは、余りにも濃い瘴気に困惑していた。

「これだけの瘴気が発生しているってこと自体が異常だな」

そう言いつつ、神官戦士が光の魔法で瘴気から身を守る為の膜を作り上げる。それをパーティーメンバーに張りつつも長く探索は出来ないことを否が応でも理解するしか無かった。

(こんな状態なら、長くは持たない。森が変容してしまったと言うのか?)

そんな状態の中、襲いかかってきたのはCランクモンスターのデスハウンド。しかも群れでこちらにどんどん近寄ってくる。

群れでの来襲に、迎撃が遅れる。その隙を突いて、仕掛けてくるデスハウンド。

(Cランクモンスターの群れなんて、今のあたし達じゃ荷が重すぎる。森の情報をもうちょっと掴んでおくべきだった)

神官戦士はそう思うが、そう思ったところで事態が良くなるわけでも無い。流石にデスハウンドをあっさり片付けられる程こちらも強くは無いからだ。

なんとか体勢を立て直そうとして、鎧戦士が前に出るがそこに数体のデスハウンドが仕掛けていく。それなりの質での人海戦術は、劣勢のミストヘイムにしてみればかなり厳しい状態に陥ってしまった。
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