月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第193話 ウエストエンドの森6

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月の魔女とよばれるまで

第193話 ウエストエンドの森6

サンクチュアリを発動させたことで、ひとまず瘴気がこれ以上蔓延する事はなくなった。それでも森の奥までは効果が出ないことからどこまで不味いかが分からない。そういう点を考えても現状はかなり厳しい。

どちらにしろ、今張ったサンクチュアリも間に合わせでしかなかった。しかも、今はミストヘイムのメンバーを無事にウエストエンドに戻って貰わなければならない為、奥に行くことは出来ない。

いきなりのCランクモンスターのデスハウンドの群れに襲われたことですぐに動く事も出来なかった。後方の安全を確保していると言うわけでは無いからだ。

ひとまず、冒険者パーティーミストヘイムの救援は完了したことで最悪だけは回避出来た。問題はこれからであった。

「一回、ここは退きましょう。ミストヘイムの皆さんも現状の状態で、更に奥に踏み込む気にはなれないと思います。ここまで来た事を報告して、どうするか考えませんか?」

沙更の言葉に、ミストヘイムのリーダーであるセリエは頷く。流石に、鋼鉄装備でここを切り抜けられるとは到底思えなかった。

まだ、森の中程からちょっと先に行った程度でこれだとすると奥にどれだけのモンスターがはびこっているかなど想像も付かない。

もし、ミリアと沙更の二人が救援に来なければここで屍になっていたと言うのは言わずとも理解出来たから。

「戻ったら、少し話して貰うことにしよう。ミリア、君も一気に強くなった理由を教えてくれるか?」

「セリエさんに隠し事はしません。だけど、突拍子も無いと思う。ほとんどセーナちゃんが絡んでいるからね」

「私は、ミリアお姉さんを助けただけ。それに、白の直刀はミリアお姉さんだからこそ気に入ったんだと思ってる」

二人の会話を聞いて、セリエはかなりの信頼関係が築かれていることに気付く。

(一つのクエストを終える位の間にこれだけ親しく話しかけられるようになっていれば、それは変わるのも当然と言う事なのだろう)

あくまでセリエの主観ではあるが、そう思えた。

撤退する頃になったところで、パウエル達が合流した。流石に先行したミリアと沙更の二人の速度がエアウォークで加速した三人よりも速かったことで追いつくのに時間が掛かったようだ。

「流石に、ミリアとセーナちゃんの速度が早すぎだ。追いかけるのに時間が掛かった」

「確かに時間は掛かったが、きちんと加速魔法を維持してくれたセーナちゃんに感謝しないといけないぜ?あれだけ離れたのに、加速魔法の効果が切れてないのはちゃんと維持してくれたからだろ?」

「二人に先輩達の救援を任せた時点で、パウエルは文句を言うものではないわ。それに、こうやって無事先輩達を救援できているんだから問題ないでしょ?」

パウエルとしては、自分にも役目を欲しかったと思ったようだがガレムとヘレナはあれだけの速度で動かなければ危険な状態だと言うのを分かっていた。それ故に、パウエルを止める側になってしまったのが笑えない。

「パウエルさん、助けるのにあの速度じゃないと間に合いませんでした。下手するとまずい状態だったのはデスハウンドの魔石の量で解ると思うのですが」

「うっ、確かにその数だと俺たちでも厳しいかもしれないな」

「いや、リーダーはともかく俺とミリア、セーナちゃんに取っては余裕だろ。数を頼みにするモンスターなら、少なくても俺の防御は抜けねえ。守りつつも仕掛ければ、時間は掛かるがなんとかなるだろうさ」

そんな問答に、セリエの表情が驚愕に彩られた。そう、ガレムがこんなに理論的な話をしているのを初めて見たからその衝撃の度合いもひとしおだった。
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