215 / 365
新たなる住処
第199話 孤児院の重病人8
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
第199話 孤児院の重病人8
目を覚ました彼女が顔を上げると沙更が姿を見せる。
「あれ、様子を見に来たの?」
「久しぶりだと思うけど、シチュー食べるかなと思って持ってきたよ」
沙更の手にある湯気を上げているシチューを見て、少女のお腹が鳴った。考えてみれば、しばらくご飯らしいご飯を食べられていなかったからだ。
隔離部屋に来たら死を待つのみ。元々の孤児院なら病人でもある程度のご飯を与えることが出来ていたが、今の孤児院にそこまでの余裕がない。だから、少女に食事を与えられなかったのだ。
とは言え、今は沙更が居るのでそう言うこともないのだが。
「葉野菜と干し肉のシチューは食べられそうですか?」
沙更の問いに少女は頷く。孤児院で、そこまで凝った料理が出てくるのはかなりまれでなかなか無いことだった。
それだけに、久しぶりの食事としてはかなり豪華だなと少女は思う。
「えっと、良いの?あたしが食べても」
「食べて貰うために、持ってきた物だから食べて欲しい」
沙更がそう言ってシチューが入った皿とスプーンを差し出すと少女はそれを受け取って、一口食べる。温かいシチューがご飯を食べられていなかったお腹に優しく溜まっていく。
塩をあまり使っていない事。そして、牛乳の甘みと煮込んだことで干し肉と葉野菜の栄養が溶け込んだおいしさを感じて、驚いてしまう。
「ご飯も久しぶり。でも、このシチューは美味しいね。誰が作ったんだろう?」
少女の問いに、沙更は自分を指さす。
「美味しいって言ってくれて嬉しいかな。作ったのは私だから、生の声が聞けるって嬉しいよね」
その言葉に、少女は驚いた。五歳の女の子がこれ程の料理を作るなんて想像もしていなかったのだから。少なくても元気だったとしても自分が同じことが出来るとは思えなかったのが大きい。
食材があってもそれを生かせるかは、料理人の腕次第。沙更としてはなるだけ美味しく食べてほしいと思って作ったからほっとしたのだった。
人によっては口に合わないこともあるから、そこも考えるとなかなか難しい。
「口に合って良かった。食べ慣れない味だから、美味しくないこともあるし、ちょっと心配だったから」
「孤児院でこれだけのご飯が出てくることなんて滅多にないよ。それに、十分おいしいから安心して」
少女はそこまで言うとゆっくりゆっくりシチューに口を付けていく。沙更はそれをただ見守っていた。何も言葉を発しなくても別に気にならない。何というか、患者と医者という関係ではなくなっていた。
少女がシチューを食べ終わる頃には流石に冷めてしまっていたが、それでも久しぶりの食事は孤児院で出る食事としてはかなり豪華だったことで、笑顔を浮かべてくれた。
「久しぶりのご飯がこれで凄く嬉しかった。治癒士さんは、ここに居てくれるの?」
「私?私は、ミリアお姉さんに連れられてここに来たからしばらくはここに居るよ。でも、どうしてそのことを聞いたの?」
沙更として、その問いに首をかしげる。少女がどうしてその事を聞いたのか分からなかったからだ。
第199話 孤児院の重病人8
目を覚ました彼女が顔を上げると沙更が姿を見せる。
「あれ、様子を見に来たの?」
「久しぶりだと思うけど、シチュー食べるかなと思って持ってきたよ」
沙更の手にある湯気を上げているシチューを見て、少女のお腹が鳴った。考えてみれば、しばらくご飯らしいご飯を食べられていなかったからだ。
隔離部屋に来たら死を待つのみ。元々の孤児院なら病人でもある程度のご飯を与えることが出来ていたが、今の孤児院にそこまでの余裕がない。だから、少女に食事を与えられなかったのだ。
とは言え、今は沙更が居るのでそう言うこともないのだが。
「葉野菜と干し肉のシチューは食べられそうですか?」
沙更の問いに少女は頷く。孤児院で、そこまで凝った料理が出てくるのはかなりまれでなかなか無いことだった。
それだけに、久しぶりの食事としてはかなり豪華だなと少女は思う。
「えっと、良いの?あたしが食べても」
「食べて貰うために、持ってきた物だから食べて欲しい」
沙更がそう言ってシチューが入った皿とスプーンを差し出すと少女はそれを受け取って、一口食べる。温かいシチューがご飯を食べられていなかったお腹に優しく溜まっていく。
塩をあまり使っていない事。そして、牛乳の甘みと煮込んだことで干し肉と葉野菜の栄養が溶け込んだおいしさを感じて、驚いてしまう。
「ご飯も久しぶり。でも、このシチューは美味しいね。誰が作ったんだろう?」
少女の問いに、沙更は自分を指さす。
「美味しいって言ってくれて嬉しいかな。作ったのは私だから、生の声が聞けるって嬉しいよね」
その言葉に、少女は驚いた。五歳の女の子がこれ程の料理を作るなんて想像もしていなかったのだから。少なくても元気だったとしても自分が同じことが出来るとは思えなかったのが大きい。
食材があってもそれを生かせるかは、料理人の腕次第。沙更としてはなるだけ美味しく食べてほしいと思って作ったからほっとしたのだった。
人によっては口に合わないこともあるから、そこも考えるとなかなか難しい。
「口に合って良かった。食べ慣れない味だから、美味しくないこともあるし、ちょっと心配だったから」
「孤児院でこれだけのご飯が出てくることなんて滅多にないよ。それに、十分おいしいから安心して」
少女はそこまで言うとゆっくりゆっくりシチューに口を付けていく。沙更はそれをただ見守っていた。何も言葉を発しなくても別に気にならない。何というか、患者と医者という関係ではなくなっていた。
少女がシチューを食べ終わる頃には流石に冷めてしまっていたが、それでも久しぶりの食事は孤児院で出る食事としてはかなり豪華だったことで、笑顔を浮かべてくれた。
「久しぶりのご飯がこれで凄く嬉しかった。治癒士さんは、ここに居てくれるの?」
「私?私は、ミリアお姉さんに連れられてここに来たからしばらくはここに居るよ。でも、どうしてそのことを聞いたの?」
沙更として、その問いに首をかしげる。少女がどうしてその事を聞いたのか分からなかったからだ。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる