月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第200話 エリシア

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月の魔女とよばれるまで

第200話 エリシア

沙更として、ミリアがここに居て欲しいと望むのならしばらく居る気で居たからそう返す。その言葉にほっとした表情を浮かべる彼女。

「もの凄い治療をしてくれたのは分かっているの。だけど、また悪化しないか心配で」

「そう言う意味なら、私がきっちり見るから安心して欲しい。それに、貴女の身体を蝕んでいた病魔はもう居ない。確実に良くなっているのは理解出来ていると思う。不安に思う部分があるのは分かるけれど」

あれだけの病魔を退治してからの光と聖属性混合の水魔法で一気にウィルス退治をしたのだから、病気の元は既に排除されていると言って良い。

確実に、今までに例の無い治療をしているだけに経過観察は必須であった。新しい治療法を使った時に、経過を見ないなんてことはあり得ない。副作用は無いかなど探るところは一杯あるのだから。

「本当にしばらく居てくれるの?」

「ミリアお姉さんが望む限り、私はここに居ます。それに、貴女の魔力を引き上げてしまった。その事は謝らないといけないの。緊急処置だとしても無茶をしたのは確かだから」

沙更が謝ると少女は首を振った。そもそも死ぬのが見えている時に、生きるために出来る事をしてくれた自分より小さい女の子に謝られることをされたとは思っていなかった。

「あたしが生きるのに必要だったんだと思う。だから、謝らないで良いよ」

「もしかしたら、人生狂っちゃってるかもだけどそれでも?」

「だったら、それが運命ってことじゃないのかな?死ぬはずだったのをねじ曲げたら、凄い力が付いて来ちゃったってことでしょ?なら、受け入れてあげなきゃ」

何というか、妙に強い少女だなあと思ってしまったのは一回死の淵を見ているからかもしれない。いつ来るか分からない死を目の当たりにしていれば、その気持ちになるのかと思う。

死が怖くないわけがない。けれど、ここに来た時点で受け入れざるを得ないのだろうと思われた。ここで、何人の子供が死んでいったのか分からない。そこまでの重病で、子供の命を救うことが出来る孤児院はまずこの世界ではあり得ない話だ。

お金に困っている状態で、重病人を抱え込んだらたちまち火の車になってしまうだろうと思う。泣く泣く、シスターヴァレリーたちはここに入れたのだろう。

神は既にこの世に居ない。だからこそ、シスターヴァレリーの祈りにも応えてはくれない。信仰が無くなりつつあるのは、信じてすがるものが既に失われていることだろう。

もしかしたら、沙更が神に変わることになるのかもしれない。が、月女神がそれを望むとは到底思えなかった。神が居なくても大丈夫だと言ってしまったのは人間であった。

そう、モンスターにそそのかされたとしても言ったのは確かなのだ。肉体を滅ぼされて、魂を二つに割られてもなお月女神は人間に対して怒ることはなかったのだから。

「しばらく居てくれるって分かって安心したかな。えっと、ごめんね。あたしの名前を名乗ってなかったよね。エリシアって言うの。よろしくね」

エリシアがそう言って笑うと沙更も少し笑みを浮かべた。多大な魔力を馴染ませてしまったことで、エリシアにかなりの負担をかけることになってしまった。その事が頭によぎる。

が、彼女はそれを許してくれた。その事に、嬉しさと同時に申し訳なさも覚えてしまうのはやはり無理矢理だったからかもしれない。
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