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新たなる住処
閑話12 続辺境伯
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月の魔女とよばれるまで
閑話12 続辺境伯
古代遺跡に送った兵士達の報告が途切れて数日、辺境伯は最悪の事態に頭を抱えていた。
古代遺跡に異変があった事で兵士達を派遣したが、報告が途切れて数日が経っている。そして、盗賊に売ったはずの娘が戻ってきた。その時点で盗賊たちが壊滅したと言う事実を突きつけられる。
さらに、盗賊たちのアジトを前辺境伯がお目付として付けたあのゼオンを中心とした騎士と衛兵の混合団で捜索したと報告が来たのだ。
盗賊たちのアジトには、辺境伯が隠した裏金がそっくり眠っていた。裏切らないと言う証のために置いておいたのだが、まさか盗賊たちが壊滅したと言う事実とそのお金をゼオンに抑えられた可能性が高いと言う事が頭を悩ませる一因になってしまった。
「くそっ、あの盗賊どもめいざというときに役にたたん。流れの冒険者に討伐されただと!?魔鉄の斧を持たせた意味が無いでは無いか」
それに、リエットが戻ってきたことで盗賊たちに売ったことも屋敷の者たちにばれてしまった。最大の難点はジークがそれを知ったことでこちらに反意を翻す可能性すらあることだ。もし、ジークがリエットに付いた場合は貴族として処刑される可能性すら出てくる。
少なくても当主から引きずり落とされる事は否めない。それだけの実力と権力をジークは持っているのだ。前辺境伯が付けたお目付役の一人であり、妻の相談役である。
実は辺境伯は、辺境伯の血筋ではない。入り婿であるが故に、簒奪したと揶揄されることもしばしばだ。それでなくても妻が病に倒れてから、侯爵になろうと付け届きを上位貴族に行ってきた。
おかげで、資金繰りが厳しくなり税金を重くしたと言う経緯がある。勝手に税率を動かしている当たりが簒奪したと言われることに繋がっているとは思いもしない当たりが、ダメ婿と言うべきだろう。
そんなジークが買っていたのがリエットである。辺境伯と愛人の間には数人の子供が居るが、ジークは正妻の娘であるリエットを認めている節があった。それだけに、ジークの翻意を断ち切る為に盗賊に売ったのだ。
完全に逆効果だったと言うのは言うまでも無い。そういう点では、やることなすこと裏目に出てしまう。妻が居る時は好き勝手出来なかった分だけ暴走しているのだ。
自分の価値を認めさせたいと言う一心ではあったのだが、何処でどう間違えたらこうなるのか欲望を丸出しにして動いてしまっている。貴族らしからぬと言うか貴族だからと言うべきかは難しい所だろう。やることなすことですべて裏目に出てしまい、それが段々と自分の首を絞めて行っていると分からぬまま、これからどうやって資金を捻出するかしか頭になかった。そのこと自体がこの男の限界だったのかもしれない。
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