月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第205話 冒険者ギルドに呼ばれて3

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月の魔女とよばれるまで

第205話 冒険者ギルドに呼ばれて3

森の瘴気は、今沙更のサンクチュアリで大分押さえ込んでいる。今のうちに行動しなければ、瘴気が拡大してウエストエンドを飲み込む事はなんとなく予想できた。

「彼女の魔法で瘴気を抑えている間に、出来るだけ原因の排除を試みたいと言うのが本音だ。冒険者ギルドの方もそう考えているようだが、今のウエストエンドにそれをなせる冒険者がいない」

「セーナちゃんを抱える俺たちだから出来るところまでと言ったところですか…。セーナちゃんはどうする?」

「私ですか?ミリアお姉さんがここを諦めるわけがないと思うので、そのお手伝いはさせて貰います」

沙更として、ミリアが望むことをすると決めている。だから、力を貸すとだけ伝えてルーカの側に近づく。

そんな沙更に気付いたルーカは、用意してあった銀の冒険者証を取り出した。

「セーナちゃん、お待たせしたわね。これが貴女の冒険者証よ。Cランクだから銀なの。無くさずに持っていて」

「はい。無くさないようにします」

沙更は、ルーカから冒険者証を受け取るとあらかじめ用意しておいた鎖を取り付けて首にかける。すると銀の冒険者証が自ずと輝き始めた。流石に、このことにみんな驚くしかない。

数秒後、光が消えるとそこには薄い黄色と銀色が混ざり込んだ不思議な金属証が出来上がっていた。

(沙更、何も出来ない私からお守りを渡しておくわね。その銀が昔月で取れたものだったから、時間を巻き戻して月の銀(ムーンシルバー)に変化させたの。魔術的お守りだと思って)

沙更の内で眠る月女神がそう教えてくれた。どうやら、冒険者ギルドで使われている銀は古代から伝わる月で取れた銀で出来ていた物だったらしい。

長い時の中で失われた月の力を月女神が時間を巻き戻すことによって取り戻させたと言う事のようだ。月の銀、ムーンシルバーとなった冒険者証に沙更の魔力が吸われていく。目に見えるほどの濃密な魔力を吸い込むごとに、冒険者証が淡く黄色の光を放ち始めた。

しばらくして大量の魔力を吸い込んだ冒険者証は、その魔力を蓄える力を持つらしい。事実、沙更の魔力を吸い込んで淡く光っているのだから。

あまりにあり得ないことが起きたことで、一気に話も止まってしまう。それもそのはず、これだけの異変を起こされて驚かないわけがなかった。

困ってしまった沙更に、ミリアが話しかける。

「もう、セーナちゃんったらいろいろと起こしすぎだよ。でも、その冒険者証あれだけの魔力を吸い込んだのにひび割れすらしてないね。普通の金属なら多分ぼろぼろになってると思うんだけど」

「鉄や鋼じゃ、あれだけの魔力には耐えられませんよね。魔鉄でもあの量は厳しいと思うんです。えっと、この冒険者証は月の銀で出来てるって」

沙更がそこまで言ったところで、その言葉に反応したのがルーカだった。
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