月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第208話 クエスト前の準備

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月の魔女とよばれるまで

第208話 クエスト前の準備

沙更は、今回もウエストエンドの市場の奥にお店を出しているだろうお兄さんのお店へと向かった。質が良く、それなりの値段でかつ量もそれなりなので仕入れる側としては助かる場所だったから。

今日も農家のお兄さんはお店を出しているようだ。それも昨日よりも量が多い。お店に並んでいる野菜自体の質は昨日と一緒なだけに、売れないのがもったいないなと思う。

だが、沙更にとってそれは好都合であった。昨日、買った野菜とジャガ種は使い切ってしまった。牛乳とバターはまだ残りがあるが、それも後で仕入れる予定だったから、

「お兄さん、またくださいな」

「えっ、昨日の子?あれだけの野菜とジャガ種、もう使い切ったのか!?」

「孤児院に頼まれて仕入れた分なので、昨日で使い切ってしまいました。なので、今日も仕入れに来たんですけどお野菜ありますか?」

「確かに孤児院で頼まれた分だったのなら、すぐに使い切っても納得できるな。って、まさか今日もある分買いますなんて言わねえよな?」

お兄さんはある意味警戒しているらしい。無論そのつもりで居るから、その警戒は無意味なのだけどと思いつつも再度声をかけた。

「今回は、おいくらですか?」

「マジで、今回も買い占める気か!?流石に、今回は数が多いから銀貨6枚と銅貨4枚だが出せるのか?」

沙更はお兄さんから聞いた金額を聞いて、今持っているお金の金額を考えると全然大丈夫だとほっとする。流石に金貨になるかなと思っていたからだ。すぐに銀貨6枚と銅貨4枚を出すとお兄さんは呆れた顔をした。

「お嬢ちゃん、君は一体?」

「ただのお使いできている女の子で良くありませんか?お兄さんが仕入れてくる野菜は質が良いので、私としても嬉しいです」

「俺の村で取れる野菜なんだ。そう言ってくれると嬉しいぜ。それじゃ、このお店の野菜はお嬢ちゃんのだぜ」

今回のお兄さんの露店の品には、葉野菜とジャガ種以外にカブのような根菜と大きめの赤い実が並べられていた。沙更は当たり前として、この世界に生まれたセーナでもカブのような根菜と大きめの赤い実を見たことがない。

開拓村付近では作れない野菜だとその時点で瞬時に判断する。どうしても開拓村周辺の気温は作物を作るには余り適していないからだ。

「お兄さん、この赤い実を食べてみても良いですか?」

「お嬢ちゃんが買った野菜だ。好きにすると良いさ。でも、それ余り甘くないからな」

お兄さんの言葉に頷いてから、一口赤い実をかじる。かじって出てくる汁は、沙更のよく知る味だった。

(これ、トマトだ。これなら、いろいろと料理に幅が出来そう。トマトソースに、ケチャップは難しいかもだけど大分作れる物が増えるかも)

そう、赤い実は沙更の知るトマトそのものだった。
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