月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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新たなる住処

第228話 森を浄化した報酬

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月の魔女とよばれるまで

第228話 森を浄化した報酬

ジークの登場で、一時は驚いたものの用件が分かれば納得できる理由だったことでほっとする両パーティー。ジークは自分の用件を終えるとギルドマスターのダイスに一言二言話をすると冒険者ギルドを去って行った。

ジークがいなくなったところで、ルーカとダイスが上の会議室へと両パーティーを呼ぶ形になった。二人ともこうなるとは思ってなかったことから、驚きは隠せないものの騎士団が少しは変わってくれることを期待する格好になっていたのだが。

会議室に移ると先にルーカが口を開いた。

「無事に戻ってきてくれてよかったわ。瘴気の方もなんとかなったのはこちらでも確認取れているの。森の瘴気で山まで見えなかったのが見えるようになった時点で瘴気は浄化出来たと思っても良いのよね?」

「森自体の瘴気はもうかなり薄れていると思います。問題は森の奥に溜まっていた瘴気がどれだけ森に影響を与えているかですかね」

ルーカの言葉にパウエルが答える。実際、かなりの瘴気は浄化出来ている。が、そこまでの間に森に変化を与えていないとは考えづらい。だから、調査は必要だと伝えておいたのだ。

「後輩達の退路の確保をしていたが、それでもCランクモンスター23体を討ち取っている。ある程度森のモンスターも強くなっている可能性が高いと思っておいてくれ。それと森の奥の調査は私たちミストヘイムがやろう」

「こちらも、グレーグリズリー30体とヘルハウンド数体を切ってきている。元凶は、瘴気を操るモンスターだったがそれはセーナちゃんが対処してくれた。下手に接近戦でやるものじゃないな」

異界の者とやりあって、異界の神とも戦った事実を隠蔽しつつもモンスターと戦ったことにすると口裏を合わせることにしておいたのが功を奏した。どちらにしろ、月女神の復活の件と異界の神の話は余りにもスケールが大きすぎて話したところで理解されるかどうかすら怪しい。

そもそも、月女神が邪神になっていることを鑑みると下手に報告しない方が安全と言える。そして、セーナがここに関わっていると言う時点で黙秘する方向となったのは否めなかった。

実際瘴気を生み出すモンスターと接近戦は危険きわまりない。下手すれば、変質化させられる可能性すらありえる。光魔法が使えないパーティーではまさに絶望しか見えない。そもそも、光魔法が使えないパーティーに瘴気の除去など頼めはしないだろうが。

「今回の件、両方のパーティー共にお疲れ様でした。無事に戻ってきてくれて嬉しい。かなりの大事になってしまったし、今回のクエスト自体こちらとしても報酬を多めに用意させて貰ったわ」

ルーカがそう言って、ミストヘイムと荒野の狼のメンバーに出した金貨は普通のクエストよりも多めであった。退路の確保をしたミストヘイムに金貨60枚。元凶に対処した荒野の狼に120枚。計金貨180枚だった。

Cランクの冒険者パーティーのクエストの報酬が30~40枚が通常と考えるとかなり多めなのが分かる。Bランク冒険者パーティーが100枚なので、そこも割合増やしたのも見て取れた。

「あの森がダメだったら、ウエストエンドは危機に陥るところだった。こちらで出来ることはこんな物だが、受け取ってくれ」

ダイスがそう言うと言う事は、ルーカだけではなくダイスも動いたと言う証だった。それだけ危険視していたと言う事でもある。

通常ならば、ここで使ったポーションやらなんやらの話になるのだが荒野の狼側としては一切使っていないので、その話をする必要性が無い。ミストヘイム側で、若干使ったかと言ったところのようだ。

治癒魔法だけで、怪我を治せていられるほど魔力に余裕が無いのは沙更としても分かっている。が、沙更にその理屈は適応されないだけに羨ましい顔をセリエに向けられてしまう。

「後輩達が羨ましい。彼女の魔法は凄いの一言だからな」

「流石に先輩達でもセーナちゃんは譲れませんよ」

セリエの軽口にパウエルが困った顔をしてそう言う。話をされているのが自分だと分かっている沙更としてみれば、どうしたものかと考えてしまう。

側に居るミリアに、そこの当たりをちょっと相談しておく。

(ミリアお姉さん、私が一人で行動するのは余り推奨出来ないんですよね?)

(うーん、出来ればよして貰えるとかなあ?もしかして、先輩達とも動いてみたい?)

(ちょっと魔力操作とか魔力循環の手ほどきくらいなら良いのかなと。一人でダメなら、ミリアお姉さんも付いてきて貰えると嬉しいんですが、ダメですよね?)

(あたしはリーダーに呼ばれてなければそこまで忙しくないから、先輩達と一緒に行ってみたいなら別に反対はしないよ)

二人でこそこそ相談していると鎧戦士が気にしたようだ。

「幼い大魔法士の彼女と腕を上げたミリアは相当仲が良いのか?」

「えっと、ミリアお姉さんは私が最初に助けたのといろいろとあって仲が良いのです」

「先輩に言うなら、助けて貰ってばかりだけどセーナちゃんに出来る事で返してるところです」

「なるほどな。で、こそこそ話をしていたが内容を教えて貰えないか?」

ある意味直球で来る鎧戦士に、沙更としては苦笑を浮かべつつも口を開いた。

「もし良ければ、一回一緒に居る魔法士さんたちに魔力についての手ほどきくらいなら良いかなとそれとミリアお姉さんと一緒に一回クエストにお邪魔させて貰っても?」

沙更の言葉に、セリエが満面の笑みを浮かべた。いろいろと気になっていたのは分かっていたが、ここまでの反応をされるとまさに苦笑を浮かべるしか出来ない。

「うん、是非に是非にクエストに行こう!いつが良いだろうか」

「あー、セリエが暴走を始めた。珍しいなあ」

「セーナちゃんの綺麗さの時点でセリエはこうなると思ったよ」

「暴走するのも無理はないかなー。セーナちゃん凄すぎるしね」

「はあ、セリエがこうなるのが分かっていたからわざわざ口にしなかったんだが、済まんが一回だけで良いから頼めるか?」

ミストヘイムの面々の反応を見ていると、とても乗り気であるのが見て取れた。余程気になっていたらしい。
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