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フィリエス家の内情と戦
第237話 孤児院でのひと時
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月の魔女とよばれるまで
第237話 孤児院でのひと時
沙更たちとジークに合流出来たリエットは、孤児院の現状を知って顔を青くさせていた。父親が領民に重税を課している事は知っていた。が、ここまで過酷な状況だとは思っていなかったようだ。
自身も連れ去られて、平民と同じように振る舞うことを強制されたりしていたが、大きい屋敷に監禁されていたが故に他の領民達がどういう暮らしをしているのかが分かっていなかったらしい。
「もしや、この状態はお父様の重税が元でしょうか?ここまでの重税とは思っていなかったのです」
「リエット様にここに来て貰ったのは、ジークさんの入れ知恵でしょう?少しでも領民のことを知らなければ、領主として立つことは出来ません。現状を知ることは大切なことですから」
沙更はそう言いつつもジークを見ると頷いた。ジークとしても、この機会を使ってリエットにこのウエストエンドの現状を見て貰う必要があっただけに利用したと言う事だろう。
父親が入り婿であり、辺境伯家を取り仕切る母親が現状伏せっている状態では、父親が暴走するのも当たり前というか狙った節があった。それ故、ジークが裏付けを取りつつ暗躍していたと言う経緯があるだけに、リエットにも現状がいかにまずいかを見せておく必要があったのだ。
他の子息や子女と違い、リエットは母親の血筋を色濃く受け継いでいるからか頭の回転が速い。出過ぎたことはしなかった故の父親からの虐待からの盗賊に売られると言う悲惨な目に遭った。母親もリエットの才能を見抜けずに、愛情を注いでは来なかった。
が、それに対してジークやメアリーはそんなリエットを支えてきたと言って良い。騎士ゼオンもそのうちの一人になる。辺境伯家では家内部での序列が一番下であったが、辺境伯の裏を司るジークがその才能を認めていた為に生きてこられたと言う事情があったりする。
そんな境遇のリエットだが、沙更が使ったムーンライトでの治療で更に頭の回転に磨きが掛かり、今では辺境伯家随一の才女になっていたのだ。
「お父様は侯爵になることを諦めていないと言う事なのでしょう」
父親の権力欲は相当な物なのをリエットとしても知っているだけに、それ以上の言葉は出なかった。それに、沙更もミリアも辺境伯代行の行動は知っているだけに頷くしか無い。会ってはいないが、それでも感じられてしまうあたりでどうにもならないことを悟ってしまう。
「リエットお嬢様の守りは君たちでなければ担えないだろうと思って、冒険者ギルドには指名依頼として依頼させて貰ったが早急すぎた気もしていた。だが、今のお嬢様を見れば正解であったのだろう」
ジークとしては、リエットの境遇を知るだけに心穏やかに暮らせる場所が孤児院以外にあり得ないと言う事を理解していた。奴隷同然に売られて、一時のご飯は相当質が下がったこともある。
そういう点では、一般的な貴族の令嬢よりも打たれ強いと言って良い。既に地獄に近いところまで叩き落とされた経験があると言うのはそれだけ精神的に強いと言う証でもあったから。
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