月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

閑話14 元辺境伯

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月の魔女とよばれるまで

閑話14 元辺境伯

リエットが沙更がいる孤児院に身を寄せた頃、シルバール王国の王都シルバールでは、宰相となった元辺境伯が現辺境伯の不正を洗っているところであった。

宰相の執務室で部下からの報告書を読む。貴族の不正で、しかも辺境伯のとなれば捜査は慎重に行われていた。気づかれては証拠を隠滅されてしまうことを念頭に置いての地道な仕事だが、そのお陰で動いていた事実を掴むことができていた。

「彼女の仕事ではあるまい。あやつの悪い癖が出たか、全くもって不甲斐ない」

元辺境伯としては、婿として奨めた男の自堕落ぶりにため息をつく。そもそも、現辺境伯は彼の姪で領地経営に長けていたから託してきた。

国王から辺境伯の時に宰相として取り立てられ、後を任せてから数年が経っていた。

その間に姪が病に倒れたことは聞いていたし、見舞いにも行ったが、治癒士にかかっても病は軽減するのが関の山で良くならなかった。その間に、入り婿が動き出したことは掴んでいた。

念の為に、家臣である騎士ゼオンにお目付け役を頼んではいたが、そのゼオンからも報告が来ていることで裏付けの洗い出しを行っていたのだ。

こうやって、不正の数々が表に出てきてしまっている以上この国の宰相として見過ごすわけに行かない。

国王にその件での報告をしようかと動こうとした時、執務室に一人の男が入ってきた。

「宰相様、お久しぶりですなあ」

「ふっ、お前が来るとはな。ジークからか?」

「ええ、お嬢様は伏せってますからジークの旦那からこれをと言われましてね」

男はそう言うと一枚の書状を宰相に手渡す。宰相が受け取るとその場から姿を消していた。

「あやつは相変わらずか、茶の一つでも飲んで行けばいいものを」

宰相に渡った書状には、ジークから辺境伯に入り婿に入った男の行ってきた犯罪の数々とその証拠が書かれてあった。ご丁寧にも、リエットを盗賊に売り渡した件も書かれてあったのだ。

「実の娘ですら陞爵の為なら売り払うか、まさに悪魔と言って良い行いだな。流石に、そこまでしたのならば推した己の責でもあろう」

そう言った宰相の目に鋭い光があった。シルバール王国で、絶対に怒らせてはいけない男が動くと決めた瞬間である。

宰相は、書状を持ったまま国王のところへ向かう。この件は自らが動くと伝えるために。

その後、謁見の間にて国王と話すことになった。

「宰相自身が動くと?確かにかなりの不正ではあるが、部下にまかせられないか?」

「今回の件、己の失態故に貴方様のお言葉と言えど頷くわけには参りませぬ。自身が出向いて、引導を渡さねば収まりがつかぬのです」

宰相の目に怒りを感じ取った国王は、流石に宰相の申し出を受けるしかなく、渋々許可を出した。

後に、国王はその時の事を宰相が代替わりした時に語っている。英雄であった前任の宰相のあまりの怒りを感じ、頷くしか出来なかったと。
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