月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第239話 盗賊の財産の使いみち

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月の魔女とよばれるまで

第239話 盗賊の財産の使いみち

辺境伯に対してはジークを頼るしかない。そう思っていたのだが、不意に沙更は盗賊たちのアジトで不自然な資金が置かれていたことを思い出した。

「ジークさん、そう言えばリエット様を捕らえていた盗賊のアジトに不自然な資金やミスリルがあったのですがそれは何かに使えますか?」

沙更の話を聞いていた荒野の狼の面々は、沙更に預けていたことを思い出した。とは言え、あまりの大金に使う気もしなかったのが本音だったのだ。

もし、そのお金の出処が辺境伯だった場合、返却する必要があることに思い至っていた。

いきなりの沙更からの申し出にジークとしても驚かされていた。冒険者なら、それだけの大金があれば使おうと考えるのが普通であり、そうだと思っていたから余計だった。

(流石に予想以上と言うしかあるまい。まさか、あの盗賊たちに裏帳簿の資金が置かれていたとは思いもしない。何より、盗賊を退治した彼女から言ったと言うことが一番の衝撃だった訳だが)

ジークからしてみれば、盗賊を退治して手に入れた物はその人間の所有物になるだけに、自分の手に入れた物を他人に差し出すことが出来る沙更は異質でしかない。

それだけに驚きが勝ってしまったわけだが、それでも調べる必要があるのは流石に分かる。

「少しの間預かっても良いだろうか?」

「そのために渡す物ですから、調べられるだけ調べてください」

沙更はそう言うとミリア達を見てから、ジークにお金とミスリルを見せる。流石に出てきたミスリルのインゴットにはジークもリエットも目を丸くするしか無かった。

「なっ、ミスリルのインゴット!?盗賊が持つには高価すぎる。本当に裏帳簿のお金の可能性が出てくるとは」

「もしかしたら、お父様の裏金の一部かも知れないわ。そういう所、ずさんだったもの」

ジークとリエットの感想がずれるのは視点が違うからだろう。ジークからすれば、重要な証拠であったがリエットからしてみれば親の犯罪の証拠である。それだけに、思うところも違うのは当然だった。

盗賊のアジトにあったお金とミスリルのインゴットをジークに渡すとジークは足早に辺境伯の屋敷に戻ることになった。リエットと合流し、護衛の依頼を受けた今離れるのは得策では無い。

「リエットさん、これから猪の鼻亭と言うところで料理を作りますけど一緒に来ますか?」

「えっ、幼い治癒士様が料理をするのですか?」

「私の趣味の一つで、実用的でもあります。ミリアお姉さん達には基本的に作ったら振る舞ってるんですけど、一緒にいかがですか?」

リエットに料理対決と言うところは伏せておく。それで無くても沙更は、見た目だけは幼い女の子でそこまで卓越した技術を持っているようには見えない。

が、異世界の料理の知識を持っている上に実践してきていることで、ここの世界では屈指の腕になっていることを本人は気付いていなかった。
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