月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
260 / 365
フィリエス家の内情と戦

第240話 猪の鼻亭での料理対決3

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第240話 猪の鼻亭での料理対決3

ジークに盗賊たちのアジトて手に入れた財宝を渡して、孤児院から外に出る。そろそろ猪の鼻亭に行く時間になっていたからだ。昼の鐘が鳴ってからかなりの時間が過ぎていた。

流石に、お腹も空いてきた荒野の狼の面々。リエットも孤児院に遠慮して、お腹に物を入れていなかった為に大分お腹が空いていた。

そろそろマッグスから言われた時間でもある。そろそろ猪の鼻亭に向かっても問題ないだろうと思って動くことにした。


その頃、猪の鼻亭でのお昼の営業を終えたマッグスは、沙更の到着を心待ちにしていた。

ウエストエンドには食堂は数店しかない。今の辺境伯は商業に力を入れていないこともあり、店を出すのも王都が一番であると理由もあって、ここで店を開こうと言う人間はそんなにいなかった。

本当ならば、王国第三番目の都市なのでかなり賑わっていてもおかしくは無いのだ。それが出来ていないのは、辺境伯の重税に他ならない。実際、他の都市に猛追されていて王国第三番目から転落しかかっていると噂が流れるほど人が減ってきていた。

今あるお店も昔から営業しているところが大半で、新規の出店はほぼ無いと言って良い。町自体の活力が失われつつあるのを見ていたがそれは辛い物であった。

お店のやりくりも大分苦しくなり、昔なら豚の塩漬け肉を使わなかったが今では料金を維持するために質を落とさざるを得ない。

そんな決断をしながらもお店を営業してきていたが、料理人として諦めが出てしまっていたことにも気付いていた。それだけに、沙更の言葉にやはりこのままではいけないのだと気付かされる格好だったのだ。

(あんな幼い子に背を押して貰ったなんて言えねえな)

このところの精神的疲労で、かなり弱気になっていたことを独りごちる。娘も妻もそんなマッグスに気付いていなかった。妻はお店のやりくりで奔走しているし、娘には店を手伝って貰っている。そんな二人に弱音は吐けなかった。

ある意味男の意地が、マッグスを追い詰めて行っていたと言うから笑えない。


沙更やミリア達荒野の狼とリエットが猪の鼻亭に付いたのは孤児院を出てからすぐのこと。マッグスも流石にリエットが混ざっている事に驚きを隠せない。

「貴族のお嬢さんがうちの店に来るとはな」

「リエット様の事は気にしないでください。護衛をしなければならない関係上、離れて貰っては困るので一緒に来て貰っただけですから」

沙更の言葉に、マッグスは首をかしげる。アンナの友達のミリアが冒険者なのは知っていたが、貴族の護衛が出来るほど凄腕と言う事は聞いていなかったからだ。

「あんた達、毎回毎回うちの飯を食べに来てくれてるが何者なんだ?」

素朴な疑問がマッグスの口から出る。その言葉に返したのはミリアだった。

「この間、この町の最高ランクであるBランクに上がった冒険者パーティー荒野の狼はあたしたちのことだよ」

「えっ!?じゃあ、森の異変を騎士団より早く鎮圧した冒険者ってあんたたちのことだったのか!!」

知らなかったとは言え、この町を救ってくれた冒険者とはマッグスは思っていなかった。荒野の狼がそう言う大それたクエストを受注できるようになったのも沙更のおかげと知らないから。

「とりあえず、豚の塩漬け肉とキャベツで何が作れる?」

「いろいろと試そうと思います。水はどのくらい使っていますか?」

沙更の質問にマッグスは大体大きめの木桶一杯分程度と答える。それならば、やりようがあると沙更は思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜

たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...