月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第242話 猪の鼻亭での料理対決5

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月の魔女とよばれるまで

第242話 猪の鼻亭での料理対決5

沙更の豚の塩漬け肉とキャベツの蒸し料理とマッグスの豚肉の塩焼き肉とキャベツの付け合わせが出そろったところで、荒野の狼の面々とアンナとリエットに食べて貰うことになった。

やはり、ここで問題になるのは塩気だった。食べ比べてみれば分かる程に塩の加減が如実に表れてしまっていたのだ。

「やっぱり、朝から食べるとなるとセーナちゃんの方が良いかな。温かいのもそうだけど脂っこくもないし、塩も薄いかなとは思うけれどキャベツの甘みと合わせると丁度良い感じ」

「確かに、朝からとなればセーナちゃんの方を押したい。昼、動いた後ならばマスターので良いんだがいかんせん塩が強い」

「まあ、どちらかと言えばマスターの料理はお腹を空かせた人間向けなんだろうよ。で、セーナちゃんのはちょっと違うんだろうとは思うぜ。上手くは言えねえけど」

「やっぱり、セーナちゃんの料理は優しいわ。塩もそうだけど、キャベツと合わせて食べた時の味がおいしいと思うのよ」

荒野の狼の面々は、沙更の料理を食べているだけにそのおいしさもよく分かっている。それだけに、判断が寄ってしまっている感じはする。それでも、食べやすいと言ってくれたことにほっとしていた。

アンナも初めて、蒸し料理を食べてみるが思っている以上に油も無いし、キャベツの甘みが増えている事に気付いた。それに、合わせて食べたとしても思ったほど硬くも無い。思っている以上に食べやすかった。

「キャベツが甘いし、思っている以上に塩が少ない気がする。最初に洗ってはいたけど、キャベツの甘みもあって食べやすい」

アンナとしてみれば、同じ食材でここまで分かれるのかと驚くしか無い。蒸し料理を食べてからだとマッグスの塩焼き肉は塩気が強すぎると感じてしまうからだ。

「お父さんのは塩気が強すぎて、他が余り感じられないのと油もあるから重い感じ。確かに、食べてみないと分からないと思う」

アンナとしても、マッグスの料理に問題があるのは認めるしか無かった。蒸し料理を食べた後だと塩気が強すぎて、水が無いと厳しい。

リエットとしても、沙更とマッグスの料理どちらを食べたいかと言われれば沙更の蒸し料理に手を上げる形だった。そもそも、領主の娘とは言え食事の質は平民と余り変わらない事も多かっただけに、この塩の多さは問題だと思ったらしい。

「ここまで塩が多いと他の良さを殺してしまってはいませんか?幼い治癒士様の料理は、その素材のおいしさを引き出していると思うのです」

女性陣が多いとは言え、食べ慣れた荒野の狼からも言われてしまってはマッグスとしてもやはり間違っていたと認めることが出来る。

「塩の問題だけじゃなさそうだ。お嬢ちゃん、君の料理を貰っても良いか?」

沙更は、作った蒸し料理をマッグスに渡す。流石に大分冷めてきてしまっていたがそれでも蒸した効力はまだ残っていた。ほんのりと温かくそして甘みのあるキャベツと豚の塩漬け肉を洗ったことで塩気を抑えた事により、甘みと塩気が両立したその料理を口にして、やはり間違ったのだと悟ったのだった。
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