月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第309話 逐次モンスター投入の図

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月の魔女とよばれるまで

第309話 逐次モンスター投入の図

 300体のモンスターが近づいてきていることに、慌てる荒野の狼。だが、これは実力がある者ならではとも言える。自分の実力が分かっていなければ、逃げると言う手すら考えない。

 確かに普通のBランク冒険者なら、手に負えないほどのモンスターの数である。死を意識しない方がおかしい。それに、もうある程度距離を詰められている事から逃げるには厳しい状態になってしまっていた。

 慌ててるのはパウエルとヘレナ、かえって冷静になっていたのはミリアとガレム。そして、沙更であった。

「くそっ、逃げるにも距離が近い!」

「こんな数じゃ、押しつぶされてしまうわ!」

「逃げる時間を作るくらいなら出来るはず」

「ったく、とことん暴れる場所を作ってくれる気かよ。まったく」

 持てる力の差がここには現れていて、パウエルとヘレナ、ガレムとミリアの能力に違いがあるからこそだと言って良い。そして、沙更もミリアの側だった。

「距離がこれだけあれば大丈夫。次の魔法行きますね」

 先ほど、かなりの魔力を使ったが沙更の魔力は既に元に戻っている。そして、次の魔法のイメージも出来上がっていたこととモンスター達の中にAランクが混ざっていないことからこれもこちらの力を測っていると言う見方も出来る。

 でも、そうだとして出し惜しみをするつもりは沙更には一切無い。預かっている神の器とセーナが眠っているこの状況下で、出来る事をしないわけにはいかなかった。

 徐々に距離を詰めてくるモンスター達に、沙更は手に持つスターサファイアのロッドに再度魔力を集め始める。プロミネンスの時と同様に、可視化出来る程に集まる魔力はまさに魔法士を超える者であった。

 流石に、その魔力量にモンスター達も立ち止まらざるを得ない。人ならざる力に恐怖するのは、なにも人間だけでは無いのだから。Bランクモンスターと言えど、その理から外れているわけでは無いのだ。

 一千万を超える魔力を制御仕切る沙更に、モンスター達の視点が釘付けになる。排除するならば、あの小娘からだと襲いかかるまで数秒。だが、その数秒で沙更の魔法は完成していた。

「行きます、ニブルヘイム!!」

 ロッドに集められた魔力を解き放つとモンスター達を中心に自動で魔方陣が展開。そして、魔方陣が沙更のイメージをそのまま現実に現出させた。ニブルヘイム、北欧神話に出てくる氷に閉ざされた場所。そのイメージそのままに、魔法にしたもの。

 魔方陣自体、直径数キロの範囲で展開されていてそこから氷の柱が次々と立ってはモンスター達を貫いていく。直径数キロの氷の世界を作り上げた後、数分で魔力切れと共に氷解していく。

 氷が消えた後には、モンスターたちの魔石が残るばかり。まるで氷と共に幻であったかのように消えてしまっていた。

 だが、消えたモンスター達の後ろからさらにモンスター達の群れを感知した。ここまで来ると逐次投入と言う文字が頭に浮かぶのも無理は無かった。
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