月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第310話 辺境にマナが満ちる時

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月の魔女とよばれるまで

第310話 辺境に魔力(マナ)が満ちる時

 再度襲いかかるモンスターの群れを感知した沙更は、相手の意図を読めずにいた。数百のモンスターの群れを大規模魔法で二度壊滅させられているのに、さらに投入してきたのだから。

 確かに人間では無いから、数の暴力でごり押しは考えられる。だが、統率する者がいるのならそれは愚策だと思うはずだ。なら、目的は別にあると考えるべきだった。

 そう、沙更の魔法に使われる魔力は沙更の身体から湧いて出る物であり、今この世界では枯渇寸前の代物である。だからこそ、それが満ちるのを待つ存在が居た。

「ああ、御方が蘇るに相応しい魔力が満ちてきた。この時を待ち焦がれて、数千年。貴女は今いずこ」

 そう、元月女神の眷属で今では邪神に片足を突っ込んでいる者だ。月女神の復活を望むが故に、この世に魔力を満たすことしか考えてこなかった男。

 既に、月女神は戻ったと知らぬが故の行動。だが、当の本人はそれを望むわけも無い。既に、沙更とセーナに託していたのだから。

 己の主人の考えと全く違う考えで突っ走った結果がすれ違いを産んで、決別せざるを得ないと月女神に言わしめる結果になろうとは、まったく笑える話では無かった。

 だが、着実に沙更が魔法を使うごとに辺境に魔力が満ちていく。この世界から失われていく一方だった魔力を取り戻した大地には徐々に地力が戻り始めていた。月女神を失い、守護者がいなくなったこの世界から失われていく一方だったものがまた取り戻されようとしていたのだ。

 さらなるモンスターの群れが沙更たちの所に来るまで、まだ若干の時があった。沙更は、再度スターサファイアのロッドに自分の魔力を込めていく。度重なる膨大な魔力を集めていく行為は、開拓村周辺の土地に再度魔力を吸収させていく。それは大地の再生と言っても良い。魔力を失い、痩せた土地となったこの辺境の地が蘇ろうとしていた。

 沙更がスターサファイアのロッドを振った一度目は高温ガスを磁力線により吹き上がらせ焼き尽くすプロミネンス。二度目はこの地を完全なる氷の地へと変貌させたニブルヘイム。今回の三度目は、天の怒りと言っても良い稲妻が荒れ狂う嵐テンペストだった。

 モンスターの群れを稲妻が幾度も襲い、そして猛烈な風が切り刻んでいく。猛烈な風は大地すら削り、稲妻は大地に焦げ跡を残していく。まさに神の怒りを再現したと言えるほどの猛烈な嵐が収まった時には、モンスターの群れは完全に存在を消されていた。

 そこに残るは、削れて焼け焦げた大地だけだ。魔石すら残っていない。だが、削れた大地には沙更が使った魔力を吸収したことで元に戻る力すら強まっていた。

 この場所に、徐々に魔力が戻ってきている事に気付いたのは沙更だった。魔力に関しては神の器を持つ事もあり、感覚が鋭くなっていたからだ。

「えっ、この場所に魔力が戻りつつある?私が魔法を使ったからなの?」

 自分の魔力でここの土地が再生することになるとは予想すらしていなかった。
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