月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

閑話20 辺境伯カタリーナ

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月の魔女と呼ばれるまで

閑話20 辺境伯カタリーナ

 ダイスが、ウエストエンドに戻ることを決めた頃。領都ウエストエンドで、カタリーナは部下から現状の報告を受けていた。

「カタリーナ様、辺境のモンスターの氾濫に関してですが冒険者ギルドのマスターであるダイス殿が動いたようです。それとリエット様を救い出した冒険者のパーティーも先行しているようです」

「ギルドマスターが動いたとなれば、防衛戦に参加してくれる気になったと言うことかしら?それとあの子を助けたあの冒険者達が動いてくれたとすると時間は稼いでくれそうね。それにしても、あの浮かび上がっていったあれはなんなのかしら?」

 カタリーナはそう言うもパウエル達が向かってくれた事に感謝していた。時間を稼いでくれれば、それだけ軍の再編成する時間を作る事が出来るからだ。だが、この時点で既にモンスターの氾濫を食い止め終えていたとは思ってもみない。

 そして、浮かび上がった月が混乱に拍車をかけていた。それもそのはず、あんな巨大な物が空高く浮かび上がり空よりさらに上に行ってしまったのだから。

 分からない事だらけすぎて、カタリーナとしても判断に困ってしまう。月の浮上はどの国からでも見る事が出来た上に、空高く昇っていっただけにそんな事が出来る国は今の世界ではあり得ない話だった。

 だからこそ逆に疑問が生まれてしまうのだが、その疑問に答えられる人間はいない。強いて答えられるとすれば、今ここにはいない沙更くらいだろう。

「あの巨大なものが昇っていった理由は未だ不明です。それとエンシェントゲートの冒険者ギルド支部長が越権行為をし、エンシェントゲートの民を逃がしたと報告が」

「エンシェントゲートはモンスターの氾濫の防衛拠点よ。あそこを放棄したというの!?」

「はい、民と共に逃げたと」

 その報告を受けて、表情は変えないがカタリーナの心中は穏やかでは無かった。辺境伯軍が駐屯できる一番奥地の拠点がエンシェントゲートであり、あそこを放棄するとなると防衛線をかなり下げる必要がある。そうなった場合、こちらの補給は楽になるが守る部分が長くなるため、数の上の不利をまともに被る事になるからだ。

 数で負けているのに、その数を守る拠点が増えてしまえば守りに避ける兵の数が限られてしまい突破されるのが目に見えていた。

「ダイス殿はそれを知っているの?」

「ウエストエンドをダイス殿が出発した後のことなので多分知らないかと思われます。ギルド支部長の独断で動いた可能性が高いかと」

「どこにでもいるのね。自己保身だけは一人前、だけど他の事まで頭が回っていないから他の人の足を引っ張るのよ。どちらにしろ、ダイス殿にこのことは報告しなさい。冒険者ギルドのミスではあるけれど、あそこに領主として拠点を築いていなかったこちらの不備でもあるわ」

 実際、ここ数年の領地経営は良くはなかった上に、盗賊が街道を襲ったりと治安が悪化したことからエンシェントゲートの開発が余り進んでいなかった。それを理由に兵士の宿舎などを作る予定が延びていたのだ。

 兵士をおけない事から冒険者ギルドに頼る格好となったが、それでも質が足りなかった。今回の逃亡もパウエル達が先行してくれたからこそ逃げる時間も稼げたわけで、本当だったら成功する訳がない愚策だった。それをカタリーナは理解していたからこその言葉だった。
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