356 / 365
最終章 目覚める神
第330話 月の魔女と呼ばれて4
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
第330話 月の魔女と呼ばれて4
ダイスが馬車に乗って、エンシェントゲートを出たのを確認してからパウエルたちと沙更もこの地を後にした。言うまでもなくルートは大森林を抜けて、クルシスへ向かう。
エアウォークに進化してから、更に使い続けているだけに下手な馬車顔負けの速度を叩き出せるようになっていた。確実に徒歩でクルシスに向かっているエンシェントゲートの住民たちやギルド支部長を追い抜けると確信して、先を急ぐ。
行きに来た道を帰りも使っているからか、モンスターの気配が少ない。月が昇り、魔力が世界に広がっている影響なのだろう。元々、強い魔力を持つ人間にモンスターはあまり近寄らない。獣とは違う理屈で動いているようだ。
だからこそ、沙更の探知魔法を感じたモンスターはこちらに向かっては来ないと読むこともできる。大気の後押しを受けつつもクルシスに向かって歩く。
いつもならゴブリンなどのモンスターがそこかしこにいるはずの大森林だが、沙更の探査魔法で魔力を放っているからかやはりモンスターの姿はこちらに向かってこない。行きと同じく、帰りもモンスターに襲われることなく大森林を徒歩の八倍以上の速度で進んでいく。
日が傾いた頃、大森林を抜けたパウエルたちがクルシスに到着していた。一日で、ウエストエンドからエンシェントゲートまで行った時よりもさらに速度が上がっていたからこその荒業で、荒野の狼だからこそとも言える。沙更がいなければ、元々成り立たない上にパウエル達が沙更を信頼しているからこそ出来ることであった。
「クルシスまで前よりも早く着きました。夜になって、野宿すると思っていたんですけど」
「俺たちもそこは考えていたが、流石に早いな。補助魔法をかけてくれるセーナちゃんのおかげだよ」
「大森林を抜ける肝の強さがなければ提案出来ませんし、パウエルたちだから出来るって分かっているからです。でも、先回り出来ましたね」
パウエルの言葉にそう返しつつも沙更はそう答える。大森林は、並大抵の冒険者なら確実に近寄らない危険な場所、そこを抜けると言うことが出来る時点で冒険者としては稀有であった。
クルシスの門を抜ける時に、衛兵たちがパウエルたちを見て驚く。盗賊退治の件で顔を覚えられていたらしい。
「あんたたち、あの時の冒険者か?」
衛兵の言葉に頷くと衛兵の表情が変わった。
「良ければ、ゼオン様のところに寄ってはくれまいか?」
「ゼオンさんに?」
「ああ、困っているようでな。俺たちでは力になれない。君たちなら…」
衛兵でなんとか出来る範囲ではないと言う事のようだ。そもそもゼオンには、お世話になったこともある。断る理由も無かった。
衛兵に見送られつつ、前はリエットに連れられて行ったゼオンの屋敷に向かう。騎士爵である彼の屋敷は、前と変わらずそこにあった。
第330話 月の魔女と呼ばれて4
ダイスが馬車に乗って、エンシェントゲートを出たのを確認してからパウエルたちと沙更もこの地を後にした。言うまでもなくルートは大森林を抜けて、クルシスへ向かう。
エアウォークに進化してから、更に使い続けているだけに下手な馬車顔負けの速度を叩き出せるようになっていた。確実に徒歩でクルシスに向かっているエンシェントゲートの住民たちやギルド支部長を追い抜けると確信して、先を急ぐ。
行きに来た道を帰りも使っているからか、モンスターの気配が少ない。月が昇り、魔力が世界に広がっている影響なのだろう。元々、強い魔力を持つ人間にモンスターはあまり近寄らない。獣とは違う理屈で動いているようだ。
だからこそ、沙更の探知魔法を感じたモンスターはこちらに向かっては来ないと読むこともできる。大気の後押しを受けつつもクルシスに向かって歩く。
いつもならゴブリンなどのモンスターがそこかしこにいるはずの大森林だが、沙更の探査魔法で魔力を放っているからかやはりモンスターの姿はこちらに向かってこない。行きと同じく、帰りもモンスターに襲われることなく大森林を徒歩の八倍以上の速度で進んでいく。
日が傾いた頃、大森林を抜けたパウエルたちがクルシスに到着していた。一日で、ウエストエンドからエンシェントゲートまで行った時よりもさらに速度が上がっていたからこその荒業で、荒野の狼だからこそとも言える。沙更がいなければ、元々成り立たない上にパウエル達が沙更を信頼しているからこそ出来ることであった。
「クルシスまで前よりも早く着きました。夜になって、野宿すると思っていたんですけど」
「俺たちもそこは考えていたが、流石に早いな。補助魔法をかけてくれるセーナちゃんのおかげだよ」
「大森林を抜ける肝の強さがなければ提案出来ませんし、パウエルたちだから出来るって分かっているからです。でも、先回り出来ましたね」
パウエルの言葉にそう返しつつも沙更はそう答える。大森林は、並大抵の冒険者なら確実に近寄らない危険な場所、そこを抜けると言うことが出来る時点で冒険者としては稀有であった。
クルシスの門を抜ける時に、衛兵たちがパウエルたちを見て驚く。盗賊退治の件で顔を覚えられていたらしい。
「あんたたち、あの時の冒険者か?」
衛兵の言葉に頷くと衛兵の表情が変わった。
「良ければ、ゼオン様のところに寄ってはくれまいか?」
「ゼオンさんに?」
「ああ、困っているようでな。俺たちでは力になれない。君たちなら…」
衛兵でなんとか出来る範囲ではないと言う事のようだ。そもそもゼオンには、お世話になったこともある。断る理由も無かった。
衛兵に見送られつつ、前はリエットに連れられて行ったゼオンの屋敷に向かう。騎士爵である彼の屋敷は、前と変わらずそこにあった。
0
あなたにおすすめの小説
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
『 私、悪役令嬢にはなりません! 』っていう悪役令嬢が主人公の小説の中のヒロインに転生してしまいました。
さらさ
恋愛
これはゲームの中の世界だと気が付き、自分がヒロインを貶め、断罪され落ちぶれる悪役令嬢だと気がついた時、悪役令嬢にならないよう生きていこうと決める悪役令嬢が主人公の物語・・・の中のゲームで言うヒロイン(ギャフンされる側)に転生してしまった女の子のお話し。悪役令嬢とは関わらず平凡に暮らしたいだけなのに、何故か王子様が私を狙っています?
※更新について
不定期となります。
暖かく見守って頂ければ幸いです。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
【完結済】悪役令嬢の妹様
紫
ファンタジー
星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。
そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。
ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。
やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。
―――アイシアお姉様は私が守る!
最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する!
※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>
既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
黒豚辺境伯令息の婚約者
ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。
ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。
そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。
始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め…
ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。
誤字脱字お許しください。
追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~
たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。
辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。
壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。
その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。
ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる