362 / 365
最終章 目覚める神
第336話 カタリーナと月女神の邂逅
しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで
第336話 カタリーナと月女神の邂逅
あらかじめ、支部長の話は聞いているとカタリーナが言ったのにはそれ以外の件が最重要だったからだ。モンスターの氾濫を抑えきった事に付け加えて、月の浮上があったことでそちらを重要視していると伝えたかったのだ。
カタリーナがそう思うだろうなとは沙更も思っていたので、パウエルと目配せしてどちらが報告するかを確認する。パウエルとしてみれば、結局沙更に頼り切った形になってしまった上に月の浮上の原因を知らない。それだけに今回の報告は沙更が行う事になった。
「報告は私からさせていただきます。カタリーナ様よろしいでしょうか?」
「貴女には私や娘のリエットも救って貰った。それに、戦の時にも助けて貰っているから疑うなんて事はしないわ」
辺境伯としても母親としても、沙更に助けられた。今回の件もとなれば、尚更であった。領地すら救って貰ったのだから、恩人どころの話では無い。
それを沙更も分かっているから、先に結果から話していく。
「モンスターの氾濫は終息しています。1000ほどを開拓村側にて撃破、氾濫の半数を私の魔法と荒野の狼の奮闘で撃破。残り半分は、浮上したあの巨大なものが倒してくれました」
「あの巨大なものが味方をしたと言うの!?」
「カタリーナ様、驚かれるかも知れません。私の内に宿る者が挨拶をしたいとの事で聞いて貰えますでしょうか?」
「貴女の内に眠る…?」
カタリーナとして、沙更の内に眠る者と言う言葉で流石に理解の範疇を超えたようだ。そもそも沙更の力だけでも人を超えているのに、その内で眠る者がいるとなれば理解が及ばないのも無理は無かった。
そもそも、月女神の存在は既にこの世界から忘れ去られていると言っても良い。だからこそ、月の存在すら忘れていたのだ。数千年という月日は、何もかもを風化させるには十分すぎた。
「どちらにしろ、驚かれると思いますから先に言っておきます。人間の尺度では測れませんからそのつもりで」
沙更は先にそう言うと内に眠る月女神が目覚める。辺境伯の屋敷に濃密な魔力が一気に放出されていくのをカタリーナもジークもリエットも驚いた表情で見つめるしかなかった。これほどの魔力を持つ存在など、カタリーナすら知らないのだから。
「初めまして、私の名は月女神。この時代なら邪神と言われていたりするかも知れないけれど、今の人が覚えているかは分からない」
月女神の言葉に、カタリーナはピンと来る物があった。古代魔法文明を調べる上で、月女神の存在は欠かせないのだ。それに、ここ辺境は古代魔法文明の中心地であった。それ故に、月女神自体の記録も残されていた。
昔、ガーゼルベルトに古代魔法文明の事を聞いていた上にジークが元々古代魔法文明の発掘などを行っていたこともあり、ある程度かじっていたからとも言える。
「貴女様があの月女神様なのですか?」
「もしや、貴女は異世界からの邪神の影響を受けていない?それともエーベルが残してくれた文献がこの時代にも?」
カタリーナの問いに、月女神は驚きつつもそう問い返してしまっていた。
異世界からの邪神によって、死に追いやられた月女神は邪神と貶められていたからだ。だが、カタリーナはそれらの貶めを知らない。古代魔法文明の遺跡に残されていた文献で、月女神の存在を知っていたが異世界からの邪神がでっち上げた文献は見ていなかった。
それ故の反応だったのだが、どうやら月女神は早とちりをしてしまったらしい。
第336話 カタリーナと月女神の邂逅
あらかじめ、支部長の話は聞いているとカタリーナが言ったのにはそれ以外の件が最重要だったからだ。モンスターの氾濫を抑えきった事に付け加えて、月の浮上があったことでそちらを重要視していると伝えたかったのだ。
カタリーナがそう思うだろうなとは沙更も思っていたので、パウエルと目配せしてどちらが報告するかを確認する。パウエルとしてみれば、結局沙更に頼り切った形になってしまった上に月の浮上の原因を知らない。それだけに今回の報告は沙更が行う事になった。
「報告は私からさせていただきます。カタリーナ様よろしいでしょうか?」
「貴女には私や娘のリエットも救って貰った。それに、戦の時にも助けて貰っているから疑うなんて事はしないわ」
辺境伯としても母親としても、沙更に助けられた。今回の件もとなれば、尚更であった。領地すら救って貰ったのだから、恩人どころの話では無い。
それを沙更も分かっているから、先に結果から話していく。
「モンスターの氾濫は終息しています。1000ほどを開拓村側にて撃破、氾濫の半数を私の魔法と荒野の狼の奮闘で撃破。残り半分は、浮上したあの巨大なものが倒してくれました」
「あの巨大なものが味方をしたと言うの!?」
「カタリーナ様、驚かれるかも知れません。私の内に宿る者が挨拶をしたいとの事で聞いて貰えますでしょうか?」
「貴女の内に眠る…?」
カタリーナとして、沙更の内に眠る者と言う言葉で流石に理解の範疇を超えたようだ。そもそも沙更の力だけでも人を超えているのに、その内で眠る者がいるとなれば理解が及ばないのも無理は無かった。
そもそも、月女神の存在は既にこの世界から忘れ去られていると言っても良い。だからこそ、月の存在すら忘れていたのだ。数千年という月日は、何もかもを風化させるには十分すぎた。
「どちらにしろ、驚かれると思いますから先に言っておきます。人間の尺度では測れませんからそのつもりで」
沙更は先にそう言うと内に眠る月女神が目覚める。辺境伯の屋敷に濃密な魔力が一気に放出されていくのをカタリーナもジークもリエットも驚いた表情で見つめるしかなかった。これほどの魔力を持つ存在など、カタリーナすら知らないのだから。
「初めまして、私の名は月女神。この時代なら邪神と言われていたりするかも知れないけれど、今の人が覚えているかは分からない」
月女神の言葉に、カタリーナはピンと来る物があった。古代魔法文明を調べる上で、月女神の存在は欠かせないのだ。それに、ここ辺境は古代魔法文明の中心地であった。それ故に、月女神自体の記録も残されていた。
昔、ガーゼルベルトに古代魔法文明の事を聞いていた上にジークが元々古代魔法文明の発掘などを行っていたこともあり、ある程度かじっていたからとも言える。
「貴女様があの月女神様なのですか?」
「もしや、貴女は異世界からの邪神の影響を受けていない?それともエーベルが残してくれた文献がこの時代にも?」
カタリーナの問いに、月女神は驚きつつもそう問い返してしまっていた。
異世界からの邪神によって、死に追いやられた月女神は邪神と貶められていたからだ。だが、カタリーナはそれらの貶めを知らない。古代魔法文明の遺跡に残されていた文献で、月女神の存在を知っていたが異世界からの邪神がでっち上げた文献は見ていなかった。
それ故の反応だったのだが、どうやら月女神は早とちりをしてしまったらしい。
0
あなたにおすすめの小説
魔の森に捨てられた伯爵令嬢は、幸福になって復讐を果たす
三谷朱花
恋愛
ルーナ・メソフィスは、あの冷たく悲しい日のことを忘れはしない。
ルーナの信じてきた世界そのものが否定された日。
伯爵令嬢としての身分も、温かい我が家も奪われた。そして信じていた人たちも、それが幻想だったのだと知った。
そして、告げられた両親の死の真相。
家督を継ぐために父の異母弟である叔父が、両親の死に関わっていた。そして、メソフィス家の財産を独占するために、ルーナの存在を不要とした。
絶望しかなかった。
涙すら出なかった。人間は本当の絶望の前では涙がでないのだとルーナは初めて知った。
雪が積もる冷たい森の中で、この命が果ててしまった方がよほど幸福だとすら感じていた。
そもそも魔の森と呼ばれ恐れられている森だ。誰の助けも期待はできないし、ここに放置した人間たちは、見たこともない魔獣にルーナが食い殺されるのを期待していた。
ルーナは死を待つしか他になかった。
途切れそうになる意識の中で、ルーナは温かい温もりに包まれた夢を見ていた。
そして、ルーナがその温もりを感じた日。
ルーナ・メソフィス伯爵令嬢は亡くなったと公式に発表された。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら
すみ 小桜(sumitan)
恋愛
レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。
そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~
みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる