月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第336話 カタリーナと月女神の邂逅

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月の魔女とよばれるまで

第336話 カタリーナと月女神の邂逅

 あらかじめ、支部長の話は聞いているとカタリーナが言ったのにはそれ以外の件が最重要だったからだ。モンスターの氾濫を抑えきった事に付け加えて、月の浮上があったことでそちらを重要視していると伝えたかったのだ。

 カタリーナがそう思うだろうなとは沙更も思っていたので、パウエルと目配せしてどちらが報告するかを確認する。パウエルとしてみれば、結局沙更に頼り切った形になってしまった上に月の浮上の原因を知らない。それだけに今回の報告は沙更が行う事になった。

「報告は私からさせていただきます。カタリーナ様よろしいでしょうか?」

「貴女にはわたくしや娘のリエットも救って貰った。それに、戦の時にも助けて貰っているから疑うなんて事はしないわ」

 辺境伯としても母親としても、沙更に助けられた。今回の件もとなれば、尚更であった。領地すら救って貰ったのだから、恩人どころの話では無い。

 それを沙更も分かっているから、先に結果から話していく。

「モンスターの氾濫は終息しています。1000ほどを開拓村側にて撃破、氾濫の半数を私の魔法と荒野の狼の奮闘で撃破。残り半分は、浮上したあの巨大なものが倒してくれました」

「あの巨大なものが味方をしたと言うの!?」

「カタリーナ様、驚かれるかも知れません。私の内に宿る者が挨拶をしたいとの事で聞いて貰えますでしょうか?」

「貴女の内に眠る…?」

 カタリーナとして、沙更の内に眠る者と言う言葉で流石に理解の範疇を超えたようだ。そもそも沙更の力だけでも人を超えているのに、その内で眠る者がいるとなれば理解が及ばないのも無理は無かった。

 そもそも、月女神の存在は既にこの世界から忘れ去られていると言っても良い。だからこそ、月の存在すら忘れていたのだ。数千年という月日は、何もかもを風化させるには十分すぎた。

「どちらにしろ、驚かれると思いますから先に言っておきます。人間の尺度では測れませんからそのつもりで」

 沙更は先にそう言うと内に眠る月女神が目覚める。辺境伯の屋敷に濃密な魔力が一気に放出されていくのをカタリーナもジークもリエットも驚いた表情で見つめるしかなかった。これほどの魔力を持つ存在など、カタリーナすら知らないのだから。

「初めまして、わたくしの名は月女神。この時代なら邪神と言われていたりするかも知れないけれど、今の人が覚えているかは分からない」

 月女神の言葉に、カタリーナはピンと来る物があった。古代魔法文明を調べる上で、月女神の存在は欠かせないのだ。それに、ここ辺境は古代魔法文明の中心地であった。それ故に、月女神自体の記録も残されていた。

 昔、ガーゼルベルトに古代魔法文明の事を聞いていた上にジークが元々古代魔法文明の発掘などを行っていたこともあり、ある程度かじっていたからとも言える。

「貴女様があの月女神様なのですか?」

「もしや、貴女は異世界からの邪神の影響を受けていない?それともエーベルが残してくれた文献がこの時代にも?」

 カタリーナの問いに、月女神は驚きつつもそう問い返してしまっていた。

 異世界からの邪神によって、死に追いやられた月女神は邪神と貶められていたからだ。だが、カタリーナはそれらの貶めを知らない。古代魔法文明の遺跡に残されていた文献で、月女神の存在を知っていたが異世界からの邪神がでっち上げた文献は見ていなかった。

 それ故の反応だったのだが、どうやら月女神は早とちりをしてしまったらしい。
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