月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第337話 カタリーナへの報告2

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月の魔女とよばれるまで

第337話 カタリーナへの報告2

 月女神が驚いたのも無理は無いが、ジークもガーゼルベルトも古代魔法文明に詳しい。そもそも、冒険者として慣らしたジークが主に活動していたのは古代魔法文明の遺跡の探索だったし、ガーゼルベルトに至ってはそれを領主として大がかりにやっていた人物だけにその手の知識も豊富だった。

 そう言う意味では、この辺境伯家は月女神を知っていた。邪神じゃ無いと言う事も古代魔法文明の守り神だったこともだ。

「この地は、古代魔法文明の中心地だったのはご存じでしょう?それ故、他の大陸に比べて真実が残っていたのです。月女神様が戻られた事を喜ばしく思います」

 カタリーナのその言葉に、月女神はひとしずくの涙をこぼす。この時代まで、月女神の真実を伝えてくれた事に感謝しての涙であった。

 その涙に、カタリーナは口を開こうとして止めた。流す涙が綺麗だったのとその理由に下手に触れるべきじゃないと判断したからだった。

「神でも、涙を流すのだとびっくりされたかしら」

「いいえ、それだけの想いがあると分かっただけでもわたくしたちに取っては良い事だと思うわ。守り神様がそれだけの思いを抱いてくれているのだから」

 カタリーナとしてそう言うに留める。いろいろと聞きたい事もあるけれど、今それを問うのは違う気がしていた。もっと別な場があれば、話をしてみたいとも思う。恐れ多いことだとは思うが、それでもそう思う事だけなら許されると信じて。

「この子に戻る前に、二つ伝えておきます。空高く舞い上がったのは我が宮殿であり、魔力を地上に送り届けるための施設です。今後、月が宇宙そらに戻った事で大地に魔力が戻っていくでしょう。もう、辺境の地はセーナの魔力を十分に注ぎましたから、大地の力も戻っているはずです」

 そう言い残すと月女神は、沙更に身体を返す。積極的に世界に関わり合いを持つつもりはないから、沙更とセーナを代理にしていると伝えんばかりに。

 沙更に戻ったところで、カタリーナは息を吐く。流石に、超高密度な魔力を浴びていただけに圧が凄かったからだ。貴族だから顔に出さずに居たが、耐えるのもかなり厳しかったのだ。

「ふうっ、ごめんなさいね。古代魔法文明の守り神の魔力の圧は、人には厳しい。他の貴族なら多分怒っていたわ。それとこのことは公にはしない。伯父様が聞いても同じ判断をされると思うし、守り神様をわずらわせるのはこちらの怠慢になってしまう」

 カタリーナは、月女神との邂逅を他に話をしない事を決めた。相手が古代魔法文明の守り神ならば、この大地ごと破壊することすら容易なのだと知っているから。

 息を吐いて、落ち着きを取り戻したカタリーナに沙更は次の報告をすることにした。
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