月の魔女と聖剣

空流眞壱

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序章

閑話1 シルバール王家

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月の魔女と聖剣

閑話1 シルバール王家

 辺境伯カタリーナが沙更の知恵を使い、ウエストエンドの再開発を行っている頃、王都シルバールではシルバール王ジョージ41世が宰相ガーゼルベルトと会談中であった。

「ここ一年、辺境が平和になったと同時に活況なようじゃ。古い城壁都市であるウエストエンドの再開発など今までには出来なかったことだろう?」

「懸案事項を排除仕切れた結果だろう。そもそも辺境は、モンスターの群生地であり、古代遺跡も多い場所。モンスターの氾濫で滅んだ町も数多く、人々が恐れる地であったのは王もご存知のはず」

 王の言葉に、淡々と返すガーゼルベルト。先王から仕える老将にジョージ41世は頭が上がらなかった。王国存亡の危機を助けてきたのがこの老将であり、宰相であったから。

「辺境が穏やかになったことで、他の貴族達がざわめいておる。それでなくてもそなたが重用されすぎているとやっかむ者が多すぎるのもなあ」

「王、あの程度の戯れ言に耳を傾けることのないよう。あれらは、自分の腹を肥やしたいだけの亡者ゆえ」

 王であるジョージ41世に諫言出来るのはもうガーゼルベルトくらいしか残っていないと言う事実がここにあった。他の家臣たちは、ガーゼルベルトを宰相から引きずり下ろしたくてしょうがないのだ。

 そもそも王家と辺境伯の関係性は強い。王家の守りとして辺境を守護する者で、千年もの間その関係を保ってきた。王家の危機にはすぐに助けに行く王家の盾でもあり、剣である。他の貴族達とは関係性が違いすぎた。

 建国当初からの譜代の臣であり、武と知を併せ持つ優れた能力を持って生まれやすい家柄だけに他の貴族達はそれをやっかんでいて、いつ辺境伯の地位から引きずり降ろそうかと虎視眈々と狙っていた。

 王家も長い平和で腐敗してきていた。ジョージ41世も貴族達を抑えることが出来ない程に権力がない。次世代はどうなるかわからないが、このままの状態では良くないのは分かりきっていた。

(これからの世はどうなるのであろうか?わしには読めぬ。才無く平凡なわしには先を読むことなど出来ぬよ。ガーゼルベルトには、これから先が読めているのだろうか?)

 ジョージ41世は、そう思う。己に才がない故に、王となることが出来た。だが、貴族達に専横され王として動くことも叶わず忸怩たる思いもある。それらの貴族の抑えがガーゼルベルトであったが、老齢に差し掛かりこれからもその働きを願うのも難しくなっていた。

 そんな王を見つつ、ガーゼルベルトは嘆息する。

(王家にはわしが居る限り大丈夫だろうが、これから先が心配ではある。カタリーナにその役目は難しいだろう。孫のリエットにその役目は重すぎる)

 これからの王家を考えると辺境伯として出来る事はそれほど多くはない。だが、他の貴族たちからの専横を食い止めるとなると重責となってしまう。今では、その役目が出来るのは辺境伯たる人間だけとなってしまっていた。
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