月の魔女と聖剣

空流眞壱

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極星騎士団と王都冒険者ギルド

第54話 オーク大発生の後始末3

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月の魔女と聖剣

第54話 オーク大発生の後始末3

 グレイドは沙更の魔力に気づいて、驚愕の表情を浮かべる。人間を遥かに超えた半神の魔力など感じる機会などそんなにない。

「貴様、まさかあの邪神の眷属か!?」

 グレイドの言葉に、沙更は首を振る。すでに月女神の眷属は滅んでいるからだ。そう言えば、その話はガーゼルベルトとカタリーナ、そしてルーカやダイスまでにしか話をしていなかった。信じられるかは別として話をしたのだが、グレイドまで話は行ってなかったようだ。

 信じられるか分からないが、沙更は紫の大剣を虚空庫から引っ張り出す。古代から人の血を啜ってきた邪剣。だが、既に主は滅んでいる。沙更だから触れるわけで、普通の人間が触ったら呪われて、体が維持出来なくなる。それほどの邪剣であった。

「これが、ここにある時点で理解はできますか?」

「それは、まさか!?」

「既に、これの持ち主は滅びました。貴方がそれを信じるか信じないかは自由ですが、嘘は言ってはいません」

 沙更として、そこまでは言えるが誰が何を滅ぼしたかまでは話す気がなかった。グレイドとは初対面の上、魔力で下手に疑われたのでは信用に値しないと判断されても文句は言えない。

 ミリアも沙更の思いを理解して、首をかしげた。

「オーク大発生でこちらを頼りにしたのはエリィさんだけど、ギルドマスターが出るはずの案件だったって聞いてるよ?本来ならば、王都の冒険者でどうにかしたかったのは分かるけど」

「今の世代で行かせたら、Aランク冒険者でもボロボロだろう。おまえ達はこうやって何事もなく話しているがそれが異常だってことに気づいてるのか?」

 王都の冒険者すら信用していないグランドギルドマスターって一体と沙更は思うが、どうやら基準がガーゼルベルトになっていることに気づく。その時点で、ほとんどの冒険者は歯牙にもかからないだろう。シルバール王国の生ける伝説と肩を並べられる冒険者などいるはずがなかった。

 それに気づいてしまうと沙更としては苦笑いを浮かべるしかない。グレイドの理想は遠い彼方にしかないのだ。

「グレイド様、今回の件は通常では起きないことです。オーク大発生を鎮められる冒険者が他にいたのなら、その方がに依頼をすればよろしかったのでは?」

「エリィも余計なことをしてくれた。俺が出張るチャンスが無くなったのだからな」

 グレイド自身が出たかったらしい。そう言う部分はダイスと同類なのだと理解出来た。だが、冒険者ギルドのグランドマスターがそれでは冒険者たちの立場が無い。手に負えないから出張ると言うのは後進の育成という意味では良くないのだ。

 沙更が少し頭を抱えるとそこに、部屋のドアがノックされて受付嬢が入ると要件を伝える。

「グランドギルドマスター、宰相ガーゼルベルト様がおいでになっています。お通しいたしますか?」

「あいつが来た?俺に用でもあるまいが通せ」

 グレイドはそれだけを言うと受付嬢が部屋にガーゼルベルトが案内されてくる。パウエルたちの側面のソファーに腰掛けるとグレイドを睨む。

「今回も馬鹿をやってどうする。チーフ受付嬢に迷惑をかけ、討伐してきた冒険者に難癖をつけてどうする気だ?後、あの子を怒らせるな。怒らせたら人の身で太刀打ちできると思わないことだ」

「ガーゼルベルト、お前あの子が何者か知ってるのか?」

 グレイドの言葉に、ガーゼルベルトは深々と息を吐いた。沙更の正体を知ってどうにか出来ると思っているグレイドの頭がお花畑に見えて仕方が無い。

「グレイド、どこまで脳筋になった?彼女の魔力を感じて警戒したのは分かるが、勝てると踏んだのなら衰えたな。昔のお前ならあの子の魔力を感じて、あれと同じだと思わなかっただろう」

 ガーゼルベルトから容赦ない言葉がグレイドを呆然とさせていく。流石に衰えたなの言葉にはパウエルやガレムも驚いたが、そこまで正直に言える間柄なのだと理解は出来た。

「ガーゼルベルト、お前…」

「グレイド、彼女を愚弄することは俺と辺境伯家を敵に回すことになると言うことを覚えておけ。姪も姪の娘も彼女たちのおかげで助けて貰っているのだからな」

 ここまでガーゼルベルトに言われっぱなしだとグランドギルドマスターの地位も形無しである。それだけ、ガーゼルベルトが凄すぎるのかもしれない。

 沙更として、この場でグレイドとやり合うつもりはない。だが、もし相手から仕掛けられたら身を守る位のことはする。防衛まで捨てたつもりはないからだ。

 そこまで言われて、ようやく落ち着いたのかグレイドの表情が元に戻った。さっきまで警戒しっぱなしだったことを考えるとようやく話が出来ると思ったのだが、そうは簡単にはいかない。

「王都の冒険者のめぼしいのがいないから、彼女たちにチーフ受付嬢が無理を言って助けを求めたのだろう?トップのお前が現場をかき乱してどうするのだ?今回は彼らが辺境から来ていたから良いが、いなかったらお前が行く?馬鹿なことを言うんじゃない!」

「ガーゼルベルト、俺は」

 グレイドがそこまで言ったところで、ドアが勢いよく開いて現れたのはエリィであった。
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