月の魔女と聖剣

空流眞壱

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聖剣の鞘の行方

閑話9 貴族連合軍辺境に向けて動く

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やはり、月の魔女と聖剣

閑話9 貴族連合軍辺境に向けて動く

 王都を陥落させて放棄して、かなりの日数が経った。王都から離れ、辺境を狙い動き出した。私兵の集まりとは言え、兵数5万以上はこの国の中で最大級である。とはいえ、寄せ集めの兵だけに連帯感はなかった。

「やはり、あやつを潰さねばこの国を手に入れたことにならん」

「ガーゼルベルトを倒さなければ実権を握る事すら出来ん。それに、聖剣も奴の元にあるとなればそれを手に入れねば話にもならんな」

 公爵としては、ジョージ41世から聖剣キャリバーンを手に入れられなかったのを悔やんでいた。来るのが分かっていたかのようにウィリアム第二王子に聖剣を託して、第一王子のヘンリーに渡さずにガーゼルベルトと合流させたあたりは腐っても王家の意地があることを認めざるを得なかった。

 おかげで、王都を放棄しても聖剣の探索に時間を費やすことになり、自分達の懐にかなりの打撃を受けることになった。が、聖剣がガーゼルベルトの元にあるとなればそれは確実に奪取しなければならなかった。

 そのまま聖剣を収めたままでは、王家を滅ぼした公爵たちの権威が失墜するのは目に見えていたからだ。それ故に、確実に辺境を落とさなければならない。そのための兵力が5万に膨れ上がっていたのだった。

 強いて言うとこの状況かなりまずい。公爵家も今回の派兵で大分資金を使ったため、もし今年の秋に不作だった場合作物の購入する資金がなかった。侯爵家でもそこは同じで、出来る限り資金を抑えなければならない事態になりかけていたのだ。

 私兵を使っているだけに、金の減りが早い。食料も買い付ける事になっていることもあって、尚更出費が増えていた。そんな状況で、辺境攻めをしようとするのだからどれだけ自己顕示欲に取り付かれているのかが良くわかる格好である。

 そんな公爵たちの私兵の集まりである貴族連合軍を言うまでも無くガーゼルベルトは監視していた。相手が動く頃を情報として得ていないわけには行かない。防戦をするつもりであるだけに、相手の行軍速度やどこから攻めてくるかの情報は確実に抑える必要があった。

 そう言う面でも、公爵たちはガーゼルベルトに負けていた。既に、こちらが動いている事を確認されているとは思ってもいない。公爵達がたどり着く頃には、どれだけの防備で待ち構えてくるかはガーゼルベルトの心の内にあると言って良かった。

 ウエストエンドの防壁の強化も進んでいる為、防戦を行った際の損耗度はかなり低下するのが見えていた。戦上手のガーゼルベルトと極星騎士団に辺境の騎士団と兵士の練度は、寄せ集めの貴族連合軍とは比べものにならない。こういう時に一番頼りになるのはやはり兵の練度であり、戦に慣れているかいないかが指標になってしまう。

 攻め込んだとしても厳しい戦いになると言う事を公爵達は、まだ知らない。それは幸福であると言えるのかは誰にも分からなかった。
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