レベル1からレベル100-即死魔道士成長物語-

コサキサク

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第12話 最初の魔法

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 ホームルームのあとは、一般魔法クラスの魔道士の先生が僕たちの教室に来て、一般魔法および一般教養の講義の説明が行われた。各講義の概要および日程が書いた冊子を渡される。特殊クラスの生徒も興味のある講義は好きに参加してもよいそうだ。

 僕は、一般魔法の講義とは無縁になるかと思われたが、案外そうでもないようだ。魔法陣の書き方の講義や、魔法を詠唱する時間を短縮する講義、魔力を回復する方法の講義は僕にも役立ちそうだ。
 国語や数学などの一般教養の講義も、習って損はないだろうから、受けられるものは受けることにした。

 特殊クラスの生徒は、朝のホームルームの後はは一般魔法クラスに混じって各自勉強し、その合間に特殊魔法の修行を行うこととなるので、案外忙しい学校生活になりそうだった。

 講義は明日からで、今日はこの後は自由に過ごしてよいとのことだった。まだ昼だったので、特殊クラスの皆で食堂に昼食に向かう。簡略魔道士リャと笑わせ魔道士ショウが蘇生魔道士リリイを食堂に誘うと、付いてきた。リリイは、今日までは寮の自室に籠もっていたものの、さすがに今日の入学式やホームルームにはきちんと出席していたし、食堂にも付いてきた。初めてここに連れてこられた日よりは元気そうに見えた。
 食堂につくと、いつものように特殊クラスで固まって食事をした。僕はリリイに話しかけたかったが、食堂で食事している間は女子が話しかけていたのでリリイと直接話すことはできなかった。リリイは口数は少ないものの、質問にはちゃんと返している。女子たちの会話を聞く限り、やはりリリイは相当なホームシックにかかっているようだ。魔法に興味はあったから講義は楽しみなものの、田舎の村に帰りたくてたまらないらしい。
 僕は故郷の田舎町になんの未練もなかったし、王都の生活が楽しくてしょうがなかったが、リリイは完全にその逆のようだ。リリイの故郷は、よほどいい村だったのだろうか。
 女子たちはこの後王都の街で遊ばないかと誘ったが、リリイは王都の街に興味がないようで、自室で魔導書を読みたいからと言って断った。リリイは少しの量しか食事せず、皆より早く食事を終えると自室に帰ってしまった。
「うーん、リリ、大丈夫かなあ」
リリイの名前を勝手にリリと略したリャが、心配そうに言った。
「大丈夫! 私が笑わせ魔法を早く覚えて笑わせてあげるわ」
と、ショウが言い出した。ショウは、見た目は可愛らしいものの、面白いものが大好きで、一人でひっそりダジャレを考えてロビーで披露し、皆を凍りつかせたりしている。早く笑わせ魔法を覚えてこいと皆からブーイングを受けてもちっともひるまない。笑わせ魔道士という肩書きといい、うちのクラスで一番変わり者はショウのような気がする。
 いや、うちのクラスは皆結構変わり者かもしれない。まともなのって、今日のホームルームの冒頭で学級委員をやることが決まった複合魔道士ポールトーマスぐらいじゃなかろうか。彼はしっかりしている。

 僕もリリイと話したい気持ち、というか仲良くしたい気持ちは大いにあるのだが、あの様子だとどこから取り入ったらいいのかわからない。

「キルルはこの後は何するの?」
クイズ作成魔道士のトイが話しかけてきた。僕は、スーのところに遊びに行こうかと考えたが、スーもたしか今日から学校が始まるらしいし、まだ学校かもしれない。となるとやりたいことは一つだった。
「即死魔法を早速使ってみるよ」
「早速人殺し!?」
トイの反応に笑ってしまった。
「レベル1じゃ人殺せないよ」
「だよな。だけど、呪文を知ってたら魔法が使えるわけじゃないから、多分簡単な魔法でも今日いきなり使ったりできないよ」
「そうなの? じゃあどうすれば?」
「自分の魔力を上手くコントロールできるようにならないとな。少し練習が必要だよ。たしか一般魔法の魔法基礎の授業で教えてくれるよ」
「そうか……」
 たしかに、呪文さえわかれば魔法が使えるというのであれば、適性検査を受ける前の子供でも魔導書片手に魔法が使えてしまう。魔法というのも、そう簡単にはいかないようだ。

 僕は、食事のあと、ひっそり校庭に出た。うちの学校にも校庭はあり、花壇や小さな農園がある。僕は校庭の端にある雑草ばかり生えた場所に来て、草を枯らせる呪文を唱えた。もしかしたら、上手くいくかもという淡い期待を持って。とりあえず試してみたかったのだ。

 すると、僕の足元の周りの草だけが、茶色に変わっていった。

「え……?」

 まさか、上手くいった!?

 足元をもう一度確認してみる。僕の両足の周り3センチの範囲の草が、茶色くなって枯れている。

 僕は、少し移動した後、もう一度同じ呪文を唱えた。するとまた同じように草が枯れた。

「やった!」
 地味であるが、魔法が使えた!どう考えても、自然にこうはならない。僕は魔法が使えるようになったんだ!

 喜んでいると、唐突に肩がものすごく重くなった。体がだるい。僕はふらふらになりながら寮に戻った。ロビーに行くと、僕の様子がおかしいことに気がついて、ポールトーマスがすぐ校長先生を呼んだ。

「魔力切れですね」
校長先生が言った。僕はロビーのソファに横になっていた。
「ということは、もう魔法使ったのか!?」
トイが驚いていた。ロビーにいた他のみんなも驚いて僕を囲んだ。
「そういうことですね。呪文を教えただけで使えるようになるとは、先生も驚きです。キルルさん、今日は慣れないことをして体調を崩しただけですし、今後は魔力切れでもここまでにはならないので安心してください。今日は安静にしてくださいね」
「はい」
 僕は素直に返事したあとすぐ寮の自室に戻り、朝まで眠った。









 


 


 
 


 

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