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第11話 即死魔法の書

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 国立魔道士養成学校の入学式が行われた。この学校はなんらかの魔法がレベル100まで到達する素質がある者しか入れないため、そもそも入学資格のある者が少ない。一般魔法クラスは火魔法クラス、水魔法クラス、土魔法クラス、風魔法クラス、草魔法クラスに分かれるがそれぞれ30人ほどだ。そして僕たち特殊クラスの新入生が8人。一般魔法は到達レベルが人によってまちまちだが、特殊魔道士はその素質がある時点で必ずレベル100まで到達できる素質があるそうだ。なので特殊魔道士は国立魔道士養成学校しか面倒が見られないので強制入学となるのだ。
 入学式はごく一般的なものだったと思う。校長先生が入学祝いの言葉と才能ある者への激励の言葉を送った。

 そして、特殊クラスでの最初のホームルームが行われた。僕たちはこの日、初めて特殊クラスの教室に入った。教室はロビーの反対側の廊下の突き当たりだった。席順は名簿順だったが、変わりたいものは後でそれぞれ交渉するように言われた。ホームルームを仕切るのは校長先生だ。特殊クラスは人数が少ないため毎年校長先生が担任だそうだ。
 クラスメイトの顔と名前はもう把握していたので自己紹介は省略された。
 特殊クラスのカリキュラムの説明が行われる。説明を聞く限り、特殊クラスはほぼカリキュラムなど存在しないに等しかった。
「現在、退化魔道士ネルさんがレベル5、クイズ作成魔道士トイさんがレベル10です。それ以外の皆さんの特殊魔法はレベル1です。とにかく、皆さん自分が素質があると言われた特殊魔法がレベル100になるように精進してください。手段は問いません。この一年でレベル30にならなかった者は留年になります。卒業までにレベル100になってもらいます。三年後、レベル100になっていれば無事卒業です。一般教養及び一般魔法に興味がある者は、一般魔法クラスに混じって授業を受けることができます。一般教養及び一般魔法は必修ではないので自由にしてください。特殊クラスは校則も特になしです。ただ、毎朝のホームルームは顔を出してくださいね。出席してくれないと、先生泣きます。ちなみに一昨年と去年は先生泣きまくりでした。では今から教科書を配ります」
 先生が一人一人に教科書を配った。どれも薄く、教科書というより冊子だった。
「それぞれ素質のある魔法についての説明がかいてあります。これも特殊なインクで書いているので素質がある者にしか文字が読めません」
 僕には「即死魔法の書」と書かれた冊子が渡された。横の席にいた音楽魔道士カランドの教科書を覗いてみたら白紙だった。僕には見えないようだ。
「では、その教科書を各自で読んでください。音読はダメですよ」
 
 僕は「即死魔法の書」を開いた。「即死魔法の書」にはこう書かれていた。

「即死魔法はあらゆる自然物の命を奪う魔法であるから、即死魔道士は精霊には嫌われ、一般魔法を使うことができない。そして筋力や体力にもあまり恵まれない運命にあり、即死魔法がなければ無能そのものとされる。しかし、それは当然なのだ。即死魔道士に一般魔法や腕力は不要である。即死魔法は大変強力であり、一般魔法使いや腕力のある戦士よりも恐れられる存在になれるからだ。

即死魔法のレベルを上げるには即死魔法によりありとあらゆるものを殺すこと。これに尽きる。即死魔道士は殺すことによる罪悪感などは生まれつき持ち合わせていないし、残虐な殺生に対する憧れもあるだろうから、レベルアップは容易だろう。世間一般の道徳は度外視し、大いにその残虐性を発揮せよ。

ただし、即死魔法は失敗したときに一定確率で自身が死亡する。なので蘇生魔道士の蘇生魔法に頼る機会が必ず出てくる。なので蘇生魔道士との関係は良好に保つように注意すること。蘇生魔道士は即死魔道士と逆で慈愛の心の持ち主であるから、あまり残虐性を垂れ流して生きると蘇生魔道士に嫌われかねない。なので、己の気質はあまり表に出さぬことを勧める。

即死魔道士が陥りがちな問題は、蘇生魔道士との関係性を良好に保つのが難しい点、そして他の人間にも恐れられ、孤立しがちな点だ。己の気質と能力と周りの人間とのバランスを上手く保てるようになれば、よき即死魔道士となれるだろう」

その次のページに、使える魔法とその効果、使うために必要なレベルについて書かれていた。

「レベル1から5までは植物を枯らすことができる。レベルが上がるにつれ枯らすことができる植物の大きさおよび範囲が広がる。

レベル6になれば手の上に乗るサイズの虫や動物、モンスターを殺せる。レベルが上がるにつれ大きな対象物が殺せるようになり、一度に殺せる量が増える。

レベル50からは自分より大きな動物とモンスターが殺せる。レベルが上がるにつれ大きな対象殺せるようになり、一度に殺せる量が増える。

レベル80からいよいよ人間を即死させられるようになる。即死魔道士はレベル80になったとき、性格上、必ずこの魔法を使いたくなる。しかし、ここからはリスクが伴い、失敗したときに一定確率で自身が死亡する。レベル80だと失敗率はおよそ10%である。レベルが上がるにつれて失敗率が下がり、即死魔法の射程距離が上がり、殺す相手が遠くにいても殺せるようになる。レベル100になれば失敗率は0.1%になる。そして殺す相手の顔と名前さえ知っていれば殺せるようになる。

人殺しの魔法は魔力の消耗が激しくレベル100であっても一日に一人しか殺すことができない」

そのあとに各魔法の呪文などが書かれていた。

これが「即死魔法の書」のすべてだった。

なかなかすごい内容だ。他の魔道士が読めなくなるように配慮されているのもうなづける。

教科書を読み終わったところでホームルーム終了の時間になった。











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