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第1話 恋人
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先程の白髪騒ぎのあと、ライラ様は寝入ってしまった。僕はワインでベトベトになった自分の顔と髪と洗い、ガウンに着替えたあと、床にぶちまけられたワインを雑巾で拭き取った。
ライラ様の眠るベッドの枕元に置かれた小さなランプだけが部屋を照らしていた。
僕は、ガウンを脱ぎ捨て全裸になりライラ様の眠るベッドにするりと入り込んだ。ベッドはキングサイズなので、ライラ様の横に入る余地は十分にある。
「ライラ様……」
僕は自分に背を向けて寝ているライラ様の腰に手を回し、黒いスリップドレスから覗く白い肩に唇をあてる。肩の辺りで切りそろえられた黒い髪は、白髪が一本見つかったとはいえ、さらさらと艶があり、薔薇の匂いがした。
「こんなに綺麗なのに……何を悩むことがあろうか……」
ライラ様は、街の中で、いや、僕が20年生きてきて出会った中で一番の美女だった。僕はこの人を抱けるならなんでもする。さっきはあんな仕打ちを受けていたが、僕とライラ様はれっきとした恋人である。
スリップドレスの中に手を入れて胸を触ろうとしたとき、ライラ様がピクリと動いた。目を覚ましたようだ。
「カイル、掃除は終わったの?」
ライラ様は僕に背を向けたまま尋ねた。
「はい、ワインが溢れる前よりもピカピカにしておきました」
「そう」
僕はそのままライラ様の胸をさすっていたが、ライラ様は別段怒りもしない。ライラ様は普段はあれだが、ベッドではお優しいのだ。今までも、ベッドに入り込んでからひどい仕打ちを受けたことは一度もない。
「ライラ様、僕、思うのですが」
「なあに」
相槌もこころなしか柔らかい。
「やはり、ライラ様の心の平穏には、子供ができるのが一番いいのでは」
この言葉を言った途端、ライラ様は僕の方に体を向けた。
「お前は本当に人の心に遠慮なく乗り込むわね。そりゃ、私も子供は欲しいわ。だけど子供ができなかったから前の旦那と離婚してるのよ。私は子供が出来ない体なのよ」
このことがライラ様にとって大きな傷なのは僕も承知している。この話のときだけは、ライラ様は悲しみのお顔を見せる。この暗い部屋でもそれがわかるぐらいに。
「相手の男が変わればできたという話はよく聞きますよ。僕とならできますよきっと」
「そう言ってお前とこうなって三ヶ月ほど経つけどやはりできないじゃない。やっぱり私の体に原因があるのだわ」
「三ヶ月ならまだわかりませんよ」
「というかお前、やりたいだけでしょう」
「はい」
「断言かよ」
「ライラ様を抱きたくない男がいましょうか」
「……しょうがないわね」
ライラ様がふと笑顔を見せた瞬間を見て、僕はライラ様に覆いかぶさりそのまま唇を塞いだ。スリップドレスの下に下着は履いていないのを指で確認したあと、ライラ様の中に入った。ワインをぶちまけられてからまだ一時間も経っていないうちから抱かせてくださるのだから、やはりライラ様はお優しいと思う。
「ライラ様、子供ができたら結婚しましょうね」
事を終えたあと、僕は言った。ライラ様は同じ悲しみを繰り返したくないようで、子供ができでもしないと僕と結婚してくれない。僕としては今すぐにでも結婚したいのだが。
「お前、ほんとに大したものだわ。ストーカーからここまでくるなんて。お前の執念で子供ができるような気がしてくるわ……」
「へ? なんのことでしょ?」
「なにしらばっくれてるの。お前、もともとはただのストーカーだったでしょ!」
ライラ様の眠るベッドの枕元に置かれた小さなランプだけが部屋を照らしていた。
僕は、ガウンを脱ぎ捨て全裸になりライラ様の眠るベッドにするりと入り込んだ。ベッドはキングサイズなので、ライラ様の横に入る余地は十分にある。
「ライラ様……」
僕は自分に背を向けて寝ているライラ様の腰に手を回し、黒いスリップドレスから覗く白い肩に唇をあてる。肩の辺りで切りそろえられた黒い髪は、白髪が一本見つかったとはいえ、さらさらと艶があり、薔薇の匂いがした。
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ライラ様は、街の中で、いや、僕が20年生きてきて出会った中で一番の美女だった。僕はこの人を抱けるならなんでもする。さっきはあんな仕打ちを受けていたが、僕とライラ様はれっきとした恋人である。
スリップドレスの中に手を入れて胸を触ろうとしたとき、ライラ様がピクリと動いた。目を覚ましたようだ。
「カイル、掃除は終わったの?」
ライラ様は僕に背を向けたまま尋ねた。
「はい、ワインが溢れる前よりもピカピカにしておきました」
「そう」
僕はそのままライラ様の胸をさすっていたが、ライラ様は別段怒りもしない。ライラ様は普段はあれだが、ベッドではお優しいのだ。今までも、ベッドに入り込んでからひどい仕打ちを受けたことは一度もない。
「ライラ様、僕、思うのですが」
「なあに」
相槌もこころなしか柔らかい。
「やはり、ライラ様の心の平穏には、子供ができるのが一番いいのでは」
この言葉を言った途端、ライラ様は僕の方に体を向けた。
「お前は本当に人の心に遠慮なく乗り込むわね。そりゃ、私も子供は欲しいわ。だけど子供ができなかったから前の旦那と離婚してるのよ。私は子供が出来ない体なのよ」
このことがライラ様にとって大きな傷なのは僕も承知している。この話のときだけは、ライラ様は悲しみのお顔を見せる。この暗い部屋でもそれがわかるぐらいに。
「相手の男が変わればできたという話はよく聞きますよ。僕とならできますよきっと」
「そう言ってお前とこうなって三ヶ月ほど経つけどやはりできないじゃない。やっぱり私の体に原因があるのだわ」
「三ヶ月ならまだわかりませんよ」
「というかお前、やりたいだけでしょう」
「はい」
「断言かよ」
「ライラ様を抱きたくない男がいましょうか」
「……しょうがないわね」
ライラ様がふと笑顔を見せた瞬間を見て、僕はライラ様に覆いかぶさりそのまま唇を塞いだ。スリップドレスの下に下着は履いていないのを指で確認したあと、ライラ様の中に入った。ワインをぶちまけられてからまだ一時間も経っていないうちから抱かせてくださるのだから、やはりライラ様はお優しいと思う。
「ライラ様、子供ができたら結婚しましょうね」
事を終えたあと、僕は言った。ライラ様は同じ悲しみを繰り返したくないようで、子供ができでもしないと僕と結婚してくれない。僕としては今すぐにでも結婚したいのだが。
「お前、ほんとに大したものだわ。ストーカーからここまでくるなんて。お前の執念で子供ができるような気がしてくるわ……」
「へ? なんのことでしょ?」
「なにしらばっくれてるの。お前、もともとはただのストーカーだったでしょ!」
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