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第2話 出会い
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そう、さっき言った通りカイルはもともとは私のストーカーである。この点についてカイルに語らせると必ず事実と乖離したことを言い出すから私が説明しようと思う。
私、ライラは一年ちょっと前の、28歳のときに子供ができなかったことを理由に離婚した。そのあとは、離婚の際に元旦那からもらった手切れ金で、地方に引っ越しこの屋敷を買ってひ一人でひっそり暮らしていた。私は大学で語学を習っていたから、結婚していたときからぼちぼち翻訳の仕事をしていて、離婚してからもその翻訳の仕事を続けて生計を立てていた。
もう結婚の話はこないだろうし、仕事も在宅仕事だ。屋敷からたまに買い物に出るぐらいの静かな生活を送っていたし、これからもそれが続くものと思っていた。
ところがである。買い物に商店街へ出て、屋敷へ帰ろうとしていた道中で、突然声をかけられた。
「好きです! どうか僕を恋人にしてもらえませんか!」
小太りの青年がいきなり目の前に現れ、そう言い出したのだ。この青年がカイルである。
私は、自分で言うのもなんだが美人の部類である。いろいろな人からそう言われてきたのだから間違いないだろう。しかし、小学校から大学まで全て女子校、そして大学卒業してすぐに親が決めた相手と結婚したから、男性に言い寄られた経験はあまりなかった。結婚していた時に声をかけられたこともあるが、旦那がいたから返事は「NO」一択だったし、言い寄られた男性とどうこうなったことがない。
そして、現在住んでいるこの街では、私は屋敷に一人で暮らす謎の女という印象を街の人に与えていて、あまり声を掛けてくれる人はいなかった。だから、こんな正面切って言い寄ってきた男性は、独身になってから初であった。
私はこのとき、反応に困った。もう独身だから、旦那がいますのでとも言えず、どう断ればいいのかわからなかったのだ。そもそももう独身なのだから断わらなくてもよいことに気がついた。
私は、唐突に求愛してきた青年を改めて見た。
私より頭一つ分背が低く、小太りで、服装はごく庶民的で、地味な色の服を着ている。顔は丸顔で、若いのか年寄りなのかよくわからない顔だ。お世辞にも美形とは言えなかったが、小動物のような愛らしさを少し感じた。
「あなた、お名前は?」
「カイルといいます」
「お年は?」
「20歳であります」
このやりとりは約一年前なので、このときカイルは19歳だが、だいたいの年齢を言ったそうだ。
「まあ、お若いのね」
さすがに年が下すぎて、私は気後れしてしまった。
「私はもう28歳よ。あなたの恋人としては年が行き過ぎていると思うわ。他をあたってください」
「そんな、年齢なんて気にしませんから」
「私が気にします。お気持ちはありがたいけど、年が近い人と恋人になった方がよいと思いますよ。それじゃ」
「ああ、せめてお名前教えていただけませんか」
「ライラです」
「ライラ様ですね。わかりました。それじゃ」
カイルは商店街の人混みの中に消えて行った。手に荷物を持っていたから、仕事中だったのかもしれない。いずれにせよ、カイルは私を諦めたのだと思っていた。
しかし、カイルは全く諦めてなどいなかったのだ……。
私、ライラは一年ちょっと前の、28歳のときに子供ができなかったことを理由に離婚した。そのあとは、離婚の際に元旦那からもらった手切れ金で、地方に引っ越しこの屋敷を買ってひ一人でひっそり暮らしていた。私は大学で語学を習っていたから、結婚していたときからぼちぼち翻訳の仕事をしていて、離婚してからもその翻訳の仕事を続けて生計を立てていた。
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私はこのとき、反応に困った。もう独身だから、旦那がいますのでとも言えず、どう断ればいいのかわからなかったのだ。そもそももう独身なのだから断わらなくてもよいことに気がついた。
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「あなた、お名前は?」
「カイルといいます」
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「ああ、せめてお名前教えていただけませんか」
「ライラです」
「ライラ様ですね。わかりました。それじゃ」
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