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第4話 買い物
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その後数日は屋敷に籠もって翻訳の仕事をしていた。カイルは幸い屋敷に押しかけてくることはなかったのでとりあえず一安心した。
そろそろ食料を買いに行くか、と商店街に行き、買い物を済ませた辺りで、
「あっ、ライラ様、こんにちは!」
とカイルが話しかけてきた。何か箱を首からぶら下げている。
「今日はうちの物を売り歩いていたところです。うちの農場で作ったジャムなんですが、いかがですか?」
カイルが首からぶら下げていた箱には瓶詰めのジャムが入っていた。
私は少し悩んだ。ジャム、買ってしまったらつけあがりそうだ。
「ジャムはもう十分あるの。だからごめんなさいね」
丁重に断りカイルの元を去ろうとした。いつもならここで終わるのだが、なんとカイルはそのまま私の後を追いかけてきた。
「な!? ちょっと、ついてこないで」
「営業しているだけです。ジャム買ってください」
カイルは大真面目な顔で答えた。
私は逃げるように屋敷に向かった。カイルはそのまま追いかけてくる。まずい。このままだと屋敷まで追いかけて来てしまう。
「しょうがないわね、一個買ってあげるからお帰り」
私は仕方なくそう言った。一個分のお金を渡す。
「ありがとうございます。ライラ様なのでおまけつけます」
一個だけ買うと言ったのに、五個も渡してきた。
「こんなに持って帰れないわよ」
「サービスでお家に運んであげます」
「あなたそう言って私の家まで来る気でしょう! 一個だけ置いて早くお帰り!」
「あ、バレました? じゃあ一個で。毎度ありです。ではライラ様、また」
カイルはジャムを一個だけ手渡して去って行った。
「はあ、買い物一つで疲れる……」
私は屋敷に帰ると疲れが出てへたりこんだ。
しかし、よりによってカイルから買ったジャムはとても美味しかった。また欲しいけど……カイルに私から話しかけようもんなら大変なことにならないかしら。なんて考えていたが、その後カイルを街でしばらく見かけなかった。
「もう、今ならジャム買うために話しかけてやるのに、いないなんて間の悪い男ね」
街の片隅でそうぼやくと、
「ジャム気に入っていただけました?」
背後にカイルが立っていた。私の悲鳴が街に響きわたる。
「なんでいるの」
「ライラ様、目立つんですもの、この街でそんな洒落た人他にいませんよ。なんですかその恐ろしくつばの大きい帽子」
カイルに見つからないように被っていたのにどうも逆効果だったようだ。
「日に焼けたくないのよ。ところで、なんでこのところいなかったの」
「そりゃ僕も街の外に出ることもありますよ。僕に会いたがってくれたなんて光栄です」
「あなたに会いたいんじゃなくて、ジャムを買い求めてたのよ。勝手な解釈しないで」
「なるほど、ジャムです。どうぞ」
「ありがとう」
カイルからジャムを手渡され、代金を渡した。
「ジャム、お家に定期的に配達するサービスやっていますよ。よかったら」
「お断りします!」
そろそろ食料を買いに行くか、と商店街に行き、買い物を済ませた辺りで、
「あっ、ライラ様、こんにちは!」
とカイルが話しかけてきた。何か箱を首からぶら下げている。
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カイルが首からぶら下げていた箱には瓶詰めのジャムが入っていた。
私は少し悩んだ。ジャム、買ってしまったらつけあがりそうだ。
「ジャムはもう十分あるの。だからごめんなさいね」
丁重に断りカイルの元を去ろうとした。いつもならここで終わるのだが、なんとカイルはそのまま私の後を追いかけてきた。
「な!? ちょっと、ついてこないで」
「営業しているだけです。ジャム買ってください」
カイルは大真面目な顔で答えた。
私は逃げるように屋敷に向かった。カイルはそのまま追いかけてくる。まずい。このままだと屋敷まで追いかけて来てしまう。
「しょうがないわね、一個買ってあげるからお帰り」
私は仕方なくそう言った。一個分のお金を渡す。
「ありがとうございます。ライラ様なのでおまけつけます」
一個だけ買うと言ったのに、五個も渡してきた。
「こんなに持って帰れないわよ」
「サービスでお家に運んであげます」
「あなたそう言って私の家まで来る気でしょう! 一個だけ置いて早くお帰り!」
「あ、バレました? じゃあ一個で。毎度ありです。ではライラ様、また」
カイルはジャムを一個だけ手渡して去って行った。
「はあ、買い物一つで疲れる……」
私は屋敷に帰ると疲れが出てへたりこんだ。
しかし、よりによってカイルから買ったジャムはとても美味しかった。また欲しいけど……カイルに私から話しかけようもんなら大変なことにならないかしら。なんて考えていたが、その後カイルを街でしばらく見かけなかった。
「もう、今ならジャム買うために話しかけてやるのに、いないなんて間の悪い男ね」
街の片隅でそうぼやくと、
「ジャム気に入っていただけました?」
背後にカイルが立っていた。私の悲鳴が街に響きわたる。
「なんでいるの」
「ライラ様、目立つんですもの、この街でそんな洒落た人他にいませんよ。なんですかその恐ろしくつばの大きい帽子」
カイルに見つからないように被っていたのにどうも逆効果だったようだ。
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「そりゃ僕も街の外に出ることもありますよ。僕に会いたがってくれたなんて光栄です」
「あなたに会いたいんじゃなくて、ジャムを買い求めてたのよ。勝手な解釈しないで」
「なるほど、ジャムです。どうぞ」
「ありがとう」
カイルからジャムを手渡され、代金を渡した。
「ジャム、お家に定期的に配達するサービスやっていますよ。よかったら」
「お断りします!」
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