超強運

コサキサク

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第17話 夢のあと・・・

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ふふふ、昨夜は楽しかったなあ。殴られたちゃったけど、キスできたし、アタルもしばらくあの映画の衝撃は引きずるだろう。少なくとも、昨夜は僕のことで頭がいっぱいだったはず。

もう、それでいいや。もう満足。

これ以上は、望まないよ。

今日は、ウサミちゃんとトラジロウが僕の家に遊びに来る予定だ。ウサミちゃんと会うのは五日ぶり。ラインは毎日してたけど、ウサミちゃんは相変わらずバイトで忙しかったからだ。今日はトラジロウの夏休みの宿題を見てあげることになっている。インターホンが鳴ったので出ると、ウサミちゃん一人しかいなかった。
「あれ、トラジロウは?」
「家でゲームしたいって。たぶん、あたしとアタルくんに気使ってるのよ。」
「ええ?そんなこと気にしなくていいのに。」
「あたしもそう言ったんだけど、あの子言い出すと聞かないから。ま、昼間家でゲームしてるなら心配いらないでしょ。なんかあったら電話してくるわ。」
「そっか。あ、上がって。」
ウサミちゃんを家に上げる。リビングに通そうかと思ったが、
「アタルくんの部屋に行きたいな。」
とウサミちゃんが言い出したので、そうすることにした。ウサミちゃんを部屋に通した。今まで何回もウサミちゃんを家に呼んでいるが、部屋に入れたことはなかった。というか家にウサミちゃんと二人きりなのがそもそも初めてだ。
「おおー、さすがアタルくん、部屋ちゃんと片付いてるのね。」
「うん、まあ、その適当に座って。」
僕はぎこちなく返事しながらクーラーをつけた。ウサミちゃんと部屋で二人きりって、もうどうすれば・・・正直言って、もういやらしいことしか浮かばない。そもそもウサミちゃんってキャミソールとショーパンしか着てなくて薄着だし、もうすでにいやらしいから、余計に考えてしまう。昨夜のレイが、暴走したのをもう責められない気がする。好きな人と部屋で二人きりでなにもしないってキツいよな。だけど、まだ午前中だしもう少し落ち着いたほうがいいだろうか。とりあえずリビングに降りてお茶を用意しに行った。

ウサミちゃんにお茶を出し、僕も座ろうとすると、ウサミちゃんが近づいてきて僕の頬に触れた。
「アタルくんも、顔腫れてるね。」
レイに殴られた跡だ。だけど、「も」ってなに?
「アタルくん『も』って?」
「さっき、レイくんに会ったよ。」
「レイに!?」
「顔腫れてるからどうしたのか聞いたら、アタルくんとケンカしたって。アタルくんにこっぴどく振られたって言ってたよ。」
「うん。レイと恋愛なんてできないし、断ったら、気づいたら殴り合いになっちゃって。」
「そう。」
ウサミちゃんは僕の頬を撫でる。嬉しい。ウサミちゃんが触れたところからだんだん顔が熱くなっていっている。それと同時に、レイとの昨夜のやりとりも思い出してしまった。
「ねえ、ウサミちゃん、キスしていい?」
「え?アタルくんにしては展開が早いね。」
「昨夜レイに無理矢理キスされちゃった。だから早く忘れたいの。」
「ふふふ、いいよ。」
ウサミちゃんの方からキスしてくれた。その後、僕の方からもキスした。
「キス以上のことは、されてないよね?」
「されてないよ。されたくなくて、殴ったら、殴り返されて、殴り合いになったんだし。」
ウサミちゃんは、少し笑った後、身につけているアクセサリーを外し始めた。
「え?ウサミちゃん、それ外したら運下がっちゃうよ。」
「アタルくんに触られたら粉々になるんだから、取らないとまずいじゃん。」
ウサミちゃんは、アクセサリーを外すのを続ける。アクセサリー全部取ったらその後は服を脱ぎそうな勢いだ。正直僕もその気だからいいんだけど、やっぱり心配なことがある。ウサミちゃんの運は大丈夫だろうか。
「レイくん、さっき言ってたよ。あたしさ、運がいいときはどんなに良くても100止まり。その代わり、悪いときも-600ぐらいで止まってるって。たぶん、運の上限と下限があるタイプだってさ。なんでマイナスの方が幅広いのって言ったら、運が底なしに下がる体質よりマシだろって言われたわ。」
「え・・・」
ということは、何してもウサミちゃん運はは-600で止まるわけか。そしてブレスレットだのトラジロウだのですぐに戻るとしたら・・・

僕はその場でウサミちゃんを押し倒し、かなり強引にキスした。ずっとこうしたかった。もう止められない。ウサミちゃんの服の下に手を入れようとすると、
「アタルくん、ベッドでしようよ。すぐそこにあるんだし。」
と、言われ、少し落ち着いた。

僕達はベッドに移動して続きをやった。僕は初めてだったけどウサミちゃんはやっぱり慣れていて、そのおかげで特に困ることもなく、楽しく過ごした。夢のような時間だった。

事が終わって、ウサミちゃんがシャワーを浴びに行った。僕はしばらくぼーっと待っていたが、シャワーにしてはウサミちゃんが遅い気がする。ふとベッドの下を見ると、ウサミちゃんはアクセサリーはそのまま机に置いてある。服はないから服は持って洗面所に行ったのか。だけどウサミちゃん、そこ、逆じゃない!?いや、本来はそれでいいんだけど、ウサミちゃんの場合はすぐブレスレットつけないとまずいんじゃないだろうか。とにかく洗面所に向かった。

洗面所で、ウサミちゃんは頭から血を流して倒れていた。
「ウサミちゃん!!」

僕は慌てて救急車と、レイを呼んだ。どうしよう。やっぱり、運を奪ってしまったんだ。このままウサミちゃんの身になにかあったら・・・

救急車よりも先に、レイが来た。
「レイ!」
「ウサミちゃんは!?」
「洗面所で寝かせたまま」
レイが洗面所に駆け込む。
「シャワー浴びて服来たあとに転んで頭打った感じだな。」  
「運、めちゃくちゃ下がってる?」
「いや、-603。下がってはいるけど、そこまでじゃないよ。普段のウサミちゃんレベル。」
僕はホッとした。
「レイ、僕の部屋に置いてある、ウサミちゃんはのブレスレット持ってきてあげて。僕はあれに触れないから。」 
「わかった。」
レイがウサミちゃんにブレスレットをつけてあげると運は0ぐらいまで戻ったようだ。その後救急車が来て、ウサミちゃんは搬送された。僕も救急車に乗った。やっぱり頭を打っただけらしいが、ウサミちゃんは眠ったままだ。僕はウサミちゃんの手を握りたかったけど、運を奪いそうで怖くてできない。

ウサミちゃんは頭を打っただけで、命に別状ないそうだ。意識もそのうち戻るだろうと言われ、ウサミちゃんはそのまま病室に寝かされた。レイはトラジロウを連れて病院にやってきた。トラジロウは眠ったウサミちゃんを見るなり手を握った。僕も本当はああしたい。だけどできない。辛くて涙が出た。レイが僕の様子に気づいて慰める。
「大丈夫だよ。アタル。トラジロウも来たし、ウサミちゃんの運はもう100まで戻ってるし。すぐ意識戻るから。運-600なんてウサミちゃんはしょっちゅうあることだし、今日頭打ったのもたまたまだよ。アタルのせいじゃない。」
「レイ・・・レイ、ごめんな、昨日あんなひどいこと言ったのに、こんなに頼って、本当にごめん。」
「なに言ってんの。いいんだよ。」
「レイ、ありがとう。」

ウサミちゃんは夜になっても目を覚まさない。
僕は、生きた心地がしなかった。もう、運なんていらない。こんな自分が嫌だ。二度とウサミちゃんに触れなくてもいいから、お願いだから、ウサミちゃん、目を覚まして。












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