11 / 72
第1部 夏
第9話 水着回だよ全員集合。
「海だぁー!!」
「美波ちゃん、早く早く!」
「マイちゃん待って……Tシャツうまく脱げない……」
「み、美波ちゃん、その水着……」
舞は絶句した。その理由は、美波の水着がどう見ても小学生の時に使用していたスクール水着だったからだ。
「ちょっと青嶋くん、海へ行くのに美波ちゃんに水着用意してあげなかったの?」
「いや、持ってるって言うから……」
「流石に中学生でこれは可哀想だよ。たぶん向こうにまだマシなの売ってるから美波ちゃん行こ?」
「うん……」
2人は売店へと向かった。
「女の子は大変なんだな」
「そうね。私も水着持ってなかったから、舞に選んでもらったわ。でもやっぱりみんなに比べて派手じゃないかしら? 舞にはこれが良いってのせられちゃったけど……」
「に、似合ってると思うぞ……?」
後藤さんの水着は黒のビキニだった。確かに少し露出が多い気がするが、小浦ナイスだ。
我が妹は可愛くなって戻ってきた。
「おにぃどお?」
シンプルなネイビーのワンピースタイプの水着だった。
「最高!! さすがは我が妹」
「ふふ……」
嬉しそうに笑うと、美波は肩までの金色の髪をなびかせた。
「小浦ありがとう、いくらだった?」
「いいよ。美波ちゃん可愛いし、あたしがプレゼントしたいの」
「そういう訳には……」
「ところで青嶋くん、あたしの水着姿には感想ないの?」
フリルがあしらわれた赤のビキニを見せびらかす小浦。
「か、かわいいです……」
「でしょう? これすっごいお気に入りなの!」
俺が可愛いと言ったのは、あなた自身だったんだが、喜んでいるようで良かった。
「ビーチバレーで負けたチームは、お昼奢りだよー!」
俺と美波、小浦と後藤さんでチーム分けをした。
「喰らえ、俺の必殺サーブ!」
は、ネットを越えなかった。
「おにぃ、ダサい……」
妹から向けられたくない視線が痛い。
「じゃあ次はこっちが行くよー!」
しっかりと負けて、俺はみんなのお昼をご馳走した。小浦には美波の水着で世話になったから、負けて良かった。
海の家のテーブルで昼食をとっていると、小浦が物欲しそうな目で見つめてきた。
「ねぇ青嶋くん、その焼きそば一口ちょうだい?」
「ん、おう、どーぞ」
「じゃあお礼に私のたこ焼きあげる。はい」
そう言って、小浦は楊枝にさしてあるたこ焼きを向けてきた。これは、まさか「あーん」のやつなのか。ここでキョドってはいけないと思い、俺は自然にそれを受けた。
「美味しい?」
「ん、うまい」
おいちょっと待て、なんだこれは……。海か? 夏がそうさせるのか? いや舞い上がっているのがバレてはいけない、落ち着け俺。落ち着くんだ。
そこに美波が言ってはいけない言葉を吐き出す。
「おにぃとマイちゃん付き合ってるの?」
「ち、違うぞ美波ぃ……」
たぶん俺の顔は歪んでいる。
「もし付き合ってたら、美波ちゃんはどう思う?」
小浦は横目で美波に尋ねた。
「は?」
何聞いてんだこの人? やっぱり夏で頭おかしくなってるのか?
「マイちゃんならいいよ。優しいし綺麗だし怒らなさそうだし……」
「妹公認いただいちゃった♪」
と、視線をそのまま俺に移した。
「ちゃった♪」じゃねーよ! ホントこれどーゆーことー? ドッキリですか? どっかにカメラあるんですかー?
俺は隣の後藤さんに耳打ちをする。
「なぁ、今日の小浦なんかおかしくないか?」
「何が? いつも通りじゃない」
「いや絶対おかしいって……」
「そんなに思うのなら本人に聞いてみたら?」
「お前おかしいだろ、なんて聞けるかっ!」
俺か? 俺がおかしいのか?
俺は目を覚ます為に少し風に当たりたくなって、昼食後は1人別行動をとった。
「マジでどうしたんだろ小浦のやつ……」
テトラポッドに座り黄昏る。みんなの様子はここからも見えた。すると、2人組の男が彼女たちの傍に寄ってきた。「ナンパかなぁ」と思っていると、様子がおかしい。男の1人が小浦の腕を掴んだ。それが見えた瞬間、俺は走り出していた。
「小浦っ! どうしたっ?」
「青嶋くん、この人たちしつこくって……」
「なんだ男いたのかよ」
「だから言ってるじゃない!」
「すみませんが、そういうことなんでお引き取り下さい」
「はあ? どういうことだよ? 声かけるのは俺らの自由だろ?」
「断るのも彼女たちの自由っすよね?」
「女の前でかっこつけたいのは分かるけど、年上にその態度はなんだよお前」
「小浦、後藤さん、美波連れて大人のいるところ行ってくれ」
「でも……」
「大丈夫だから」
「分かった……行こ美波ちゃん……」
「おにぃ……」
小浦達は美波の手を引いて走り出した。
「何勝手に話し進めてんだてめぇ? おい、女抑えろ」
片方の男がみんなのところへ向かおうとするのを腕を掴んで止めた。
「話し合いましょうよ」
「じゃあこの手離せやコラァ」
男たちはヒートアップしていた。
そこからはあまり覚えてないけど、結構殴られた気がする。後藤さんが呼んできてくれた警備隊の人が駆けつけると、男達は逃げていった。
「ごめんね、青嶋くん……」
横になって休んでいると、みんな泣いていた。
「大丈夫、このくらいすぐ治るよ」
「何か冷やす物買ってくるわ……」
後藤さんは売店へ向かった。
「おにぃ、なんでやり返さなかったの……?」
「まぁ怖かったのもあるけど、俺は別にあいつら殴っても得しないし、みんなが逃げられればいいかなって」
「怖かったのに、なんで……?」
「そりゃ、可愛い妹にダサいって言われたままじゃ嫌だからだよ」
「それだけ……?」
「それだけ」
「おにぃかっこいい……」
美波は俺に覆い被さって泣いた。
「ちょ、そこ痛いっ……」
「やっぱダサぃ……」
みんな無事だったし、大事にしたくないのでこの件は警察には届けなかった。翌日、美波が俺の部屋へやってきた。
「美波、どうした?」
「どうやったら、おにぃみたいに勇気でる?」
「うーん。好きな人が、出来たらかな……」
「マイちゃん?」
「それは秘密」
「じゃあどうやったら好きな人できる?」
「にいちゃんのこと好きじゃなかったの!?」
「好きだよ」
「あらら、それは予想外な答えで。光栄です」
「おにぃはどんな時に人を好きになるの?」
「そりゃ……好きになったときだよ」
「答えになってない」
「そーゆーもんなの!」
「そっか。そーゆーもん……か」
「まぁ俺にでも分かる事は、自分から行動しないと何も始まらないってことかな。もちろんそれでもダメな時なんて山ほどあるし、俺もそれはもう沢山振られたよ。でも、後悔した事は一度もない。だから恋ってすごいと思うよ。失敗しても後悔する事ないんだから。美波もそんな恋を見つける為に、学校、行ってみてもいいんじゃねーか? 勉強なんてしなくたって、たぶんなんとかなるって前例を、にいちゃんが作ってやるよ」
「やっぱおにぃ、かっこいい」
「ちょっとこっちに来たまえ」
「なに?」
美波がゆっくり近付く。
「大好きなにいちゃんがチューしてあげよう」
「やめてー! ハナセー! やっぱキモいー!」
あなたにおすすめの小説
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※特別編9が完結しました!(2026.3.6)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件
暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される
けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」
「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」
「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」
県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。
頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。
その名も『古羊姉妹』
本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。
――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。
そして『その日』は突然やってきた。
ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。
助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。
何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった!
――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。
そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ!
意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。
士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。
こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。
が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。
彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。
※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。
イラスト担当:さんさん
春から一緒に暮らすことになったいとこたちは露出癖があるせいで僕に色々と見せてくる
釧路太郎
キャラ文芸
僕には露出狂のいとこが三人いる。
他の人にはわからないように僕だけに下着をチラ見せしてくるのだが、他の人はその秘密を誰も知らない。
そんな三人のいとこたちとの共同生活が始まるのだが、僕は何事もなく生活していくことが出来るのか。
三姉妹の長女前田沙緒莉は大学一年生。次女の前田陽香は高校一年生。三女の前田真弓は中学一年生。
新生活に向けたスタートは始まったばかりなのだ。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」にも投稿しています。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。


