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第2部 新学期
番外編 【神のみぞ知る…】
これは修学旅行中、とある神社で舞が泣き出してしまってから30分間のお話。
「もしこれで青嶋くんとの縁が切れちゃったらどうしよう……」
「大丈夫よ舞、神様はきっとそんな意地悪しないわ。こんな場合はどうしたらいいか、神社の関係者の人に聞いてみましょう?」
「分かった……」
「一人で立てる?」
「うん……」
舞と姫華は、ほうきで境内を掃いていた神社関係者であろう60代くらいの男性に声をかけた。
「すみません、実は――」
姫華が事情を話すと、涙を流す舞を見た男性は諭すように笑顔で答える。
「お嬢ちゃん、よほどその人が好きなんだね。少しやり方を間違えたくらいでそんなに思い悩むことなんてないさ……またやり直せばいいんだよ。それに、君がその人をそれほど強く想っているのなら、その縁は簡単には切れやしないと私は思うよ」
「でも……さっきとは願いが違うから、神様になんだこいつって思われたらどうしよう……」
「神様だって一日に数え切れないほどの人の願いを聞いているんだから、全部を覚えてなんていないさ。あ、これは私の立場では言っちゃまずかったかな……?」
この男性の冗談に、姫華と舞は笑顔を見せた。
「ありがとうございました。……舞、やり直しに行きましょう? 私も一緒に祈るから」
「ありがとう姫……」
「君たちに良縁があることを、私も願っているよ……」
男性に言われた通り再度やり直した舞だったが、将と顔を合わせるのはまだ気まずかった。
「どんな顔して戻ればいいんだろう……急に泣き出して変な子だって思われてないかな?」
「青嶋君も石子君もいい人だから、きっと大丈夫よ」
「でも、やっぱり気まずいなぁ……」
「じゃあ気分転換に、あの恋みくじってやつを引いてみない?」
姫華の提案に舞は少しだけ元気を取り戻したようにも見えたが、これが舞をさらに追い詰めることになるとは、まさに神のみぞ知る……といった出来事だった。
「え……」
舞が引いた恋みくじの結果は、まさかの『凶』だった。そのポップでラブリーな色合いの紙には相応しくない言葉の羅列は、舞の残り少ないHPを限界にまで削り切った。
「まさか、本当にこんなのが入っているなんて……。ごめんなさい、私が変なこと言ったから……」
「うわぁ……波乱の予感。待ち人来ず。切り替えなさい。だってぇ……ははは……」
舞の目は、光を失い虚ろだった。焦点もどこにも合ってはいない。その姿に姫華は目も当てられなかった。またあの男性に相談しようと姫華はひとり彼を探しに向かったが見つからない。おみくじを売っていた巫女さんに男性の場所を尋ねたが、思いがけない返答が返ってくる。
「申し訳ありません。当神社には男性の職員はおりませんが……」
そんな筈はない。確かに神職の人間しか着ないような衣服で境内を掃除していたのだ。職員でない筈がない。そう伝えたが、巫女さんは不思議そうな表情を浮かべるだけだった。
姫華は何度も脳内で状況を整理したが、納得できる答えが得られないまま、舞の元へと戻った。
「おじさん見つかった……?」
「いいえ、いなかったわ。でも巫女さんからおみくじをどうすればいいか聞いてきたから……」
姫華は舞にこれ以上余計な混乱を与えない為に、この事実は伏せた。
「ここに括ればいいんだよね?」
「ええ、それできっと大丈夫」
2人は巫女さんに言われた通り、おみくじを柱に括り付けると、手を合わせた。
「そう言えば、姫はおみくじの結果はどうだったの?」
「……」
バツの悪そうな表情を浮かべ押し黙る姫華。
「気にしないから大丈夫だよ?」
「大吉……」
「すごいじゃん! なんて書いてあったの?」
「近いうち良縁にめぐり合うでしょう……って」
「もしかして、姫華についに彼氏が出来るのかなぁ。本当にそうなったらさ、いつかダブルデートとかしたいね……」
「……そうね。その、私だけ、ごめんなさい」
「あたしにとっては、姫の幸せだって自分のことみたいに嬉しいんだよ? 2人で悪い結果じゃなくて良かったよ」
「舞……」
「そろそろ戻ろう? あたしはもう大丈夫だから……」
将たちの元へ戻る途中、姫華はとある絵馬を目にする。そこには先ほど出会ったあの老人と瓜二つの男性が描かれていた。もしかして、あの人は神様本人だったのではないか……一瞬そうも思ったが、そんな訳ないと考えを改める。でもこの不思議な出来事は、自分の心の中だけに秘めておこうと思った姫華だった。
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