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第3部 巴
エピローグ 十年後
しおりを挟む――10年後――
「おにぃ、結婚式遅刻するよ? まだ準備出来てないの?」
「髪型が全然決まらないんだよな……」
「そんなに変わんないよ、ヒメちゃんはもう家出たってさ」
23歳になった美波は、今では立派な社会人だ。趣味が転じて、アニメ制作会社のアシスタントとして県外に住んでいる。
「美波、お前あの彼氏とはまだ続いてんのか?」
「おにぃには関係ないでしょ。わたし先行くから」
とうとう妹が兄離れしてしまい、俺は非常に寂しい毎日を送っていた。
結婚式場に到着すると、まずは花嫁に挨拶をしようと控室を探した。新婦控室の張り紙を見つけると、なぜか緊張してしまい深呼吸を挟んだ。
ノックをして控室に入ると、ウェディングドレス姿の小浦が座っていた。俺の姿を見るなり、立ち上がってそれを見せびらかすようにポーズを決める。
「青嶋くん、どう? 似合ってる?」
「すげぇ似合ってる……」
「あたしを4回も振ったこと、後悔してるんじゃない?」
「小浦、お前まだそれを言うか……?」
「だって、あたしは根に持つタイプだから」
「今は、素敵な旦那さんがいるだろう?」
「うん。あの人と出会えたのも、今思い返せば青嶋くんのおかげなんだよね……」
「それは違うぞ? あれは小浦の行動力以外の何物でもない」
「そうかな……?」
「人生に無駄な事なんてないんだって、最近心底思うよ」
「そうだね。あたしもそれは実感してる……」
係の人からそろそろ式の時間だと言われ、控室を出て姫華と合流した。
「あら、あなたそんなスーツ持っていたの?」
「この日の為に新調したんだけど、似合ってるか?」
「まあまあね」
「お前は、ホント素直に褒めらんねーのかよ」
「あなたこそ、私のドレス姿に感想はないのかしら?」
「似合ってる……超かわいい」
「あなたはいつもストレート過ぎるのよ……」
こいつの照れた顔はどれだけ年月が経とうと、相変わらず可愛いかった。
「そう言えば、風香さん最近3人目産まれたんだろ?」
「ええ、よく子守りをさせられているわ……」
「今度出産祝い持って行くって伝えといてくれよ」
「自分で連絡すればいいじゃない? 昔はあんなに仲が良かったのだし……」
「お前も根に持つタイプかよ……」
そこへ遅れて愛里那がやってくる。
「はぁ、なんとか間に合った、ギリギリセーフ!」
「結婚式場でダッシュすんなよ……」
「お、将、元気してた?」
「お前こそ、最近忙しそうじゃん」
愛里那は、インフルエンサーとしてモデルや美容関係の仕事で幅広く活躍していた。
「まぁね、ホントは今日も仕事で海外の予定だったんだけど、無理言って一日遅らせて貰っちゃった」
「もうすぐ式、始まるらしいぞ」
「ヤッバ、すぐ受付済ませてくる~!」
また走って行ってしまった。どいつもこいつも、相変わらずだ。
――教会に移動して式が始まり、新郎が入場となる。
気になる小浦のお相手はなんと、高校2年の時に体育祭で赤組団長を務めた黒子大先輩だ。小浦とは大学時代に再会し、黒子先輩の熱烈なアプローチで交際がスタートし、晴れて今日ここに夫婦となる。さっき控室で散々小浦と呼んでしまっていたが、今日からは黒子舞になる訳だし、これからなんと呼ぼうか姫華に相談してみた。
「別に、今さら変える必要ないんじゃない?」
「そんなもんなのか?」
「そんなものよ」
俺たちも今年で27歳――いい大人だ。周りの友達も続々と結婚をしていき、今年呼ばれた結婚式は、これで既に3度目だった。俺は大学を卒業してからとある飲食店で修業を積みながら、夢である店を建てる為の資金を貯めている。やっと目処が立ってきて、2年後には夢が実現しそうだった。姫華のことを随分と待たせてしまっているのではないかと、後ろめたさも感じていた。
式と披露宴が無事に終わり、タクシーで2次会の会場へ姫華と2人で向かっている最中に、懐かしい場所を通りかかる。それは、後継者不在の為、現在ではもう既に閉店してしまった『焼き鳥たまだ』だ。
運転手さんに車を止めてくれるよう頼んで飛び出すと、姫華は驚いた顔をするが、外を見て納得したように車を降りる。
「ここからは、歩いて向かわないか?」
「ええ、そうね……」
川沿いを並んで歩くと、昔の記憶がつい昨日のことのように蘇る。
「ここから、全部が始まったんだよな」
「もし私がここへアルバイトに来ていなかったら、今日舞と結婚していたのは、あなただったかもしれないわね?」
「どうだろうな……でもひとつ言えるとするなら、その世界線の俺は、今とは全く違う人生を送ってる、別人みたいな存在の筈だよ」
「なぜそう思うの?」
「……俺の夢の話、覚えてるか?」
「もちろん……」
「その夢の中で俺の隣にはずっと、姫華がいた。だからこそ、ここまでガムシャラに頑張ってこられたんだ。まだまだ未熟で夢の途中だけど、これからも俺と一緒にいてくれるか?」
「これまで文句も言わずについてきたのだから、今更誰かに乗り換えるつもりなんてないわよ……」
「俺の夢が叶ったら、結婚して欲しい……」
「もしも叶わなかったら、私は捨てられるのかしら?」
「そんな訳ないだろ、今まで待たせてごめん。でも、姫華が応援してくれた夢の景色を、俺はどうしても見せてあげたいんだ!」
「私はあなたの夢を応援はするけれど、それに付き合うつもりはないわ」
「え……」
「でも……あなたの人生には、一生ついていきたいって思ってる……」
「怖がらせんなよ……人生終わったかと思ったわ!」
「大丈夫よ。少なくとも、私よりは長生きしてもらわないと、私が困るもの」
「じゃあ、良いんだな? 俺の予定では2年後だけど、今の内から予約を入れても」
「すでに私の左手の薬指には、予約席の札がずっと立てられているのに気が付かなかった?」
「せめて油性ペンとかで書いといてくれれば分かりやすかったんだけどな……」
「しぃ……愛してる」
「それ、久しぶりだな……忘れかけてたわ」
「いつもみたいに将って呼んだ方がいいかしら?」
「呼び方なんて、伝わればなんだっていいよ」
「私を今よりもっと、幸せにしてくれる?」
「そうだな……とりあえず今のところは、毎日美味い飯は作ってやれそうだ」
「ふふ……それは楽しみね……」
サンスクミ 【完】
ここまでサンスクミをご愛読下さいまして、心からお礼を申し上げます。
この物語は、初めて小説のゴールを定めてから構想を練り始めた作品でした。ラブコメというジャンルに初挑戦ということもあり、読みやすさやキャラクターの魅力を伝えることを強く意識していましたが、いかがでしたでしょうか?
初めて長編作品を完結させてみて、私はやっと、スタートラインに立てた様な気がしています。
今後も、皆さんに楽しんでいただける作品を生み出していけるように、筆を待ち続けますので、私の作風が気に入って頂けた方はこれからもお付き合いいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
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