隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?

プル・メープル

文字の大きさ
6 / 63

第6話 危険な匂いのする四角い箱

しおりを挟む
「あのー、唯斗ゆいと君?」
「……なに?」

 今日は快晴、机くんも温もりを目一杯に蓄え、唯斗の睡眠をお膳立てしてくれている。そんな心地よい日の朝、夕奈ゆうなは彼の机をコンコンと指で叩いた。
 眠たそうに顔を上げた唯斗は、開ききらない目で彼女を見る。先日のカイロの件があって以降、唯斗が夕奈を無視することはあまり無くなった。
 スーパーパリピ、されどカイロをくれるくらいの優しさを持ち合わせていることがわかった今なら、それほど関わりを断とうとする必要も無いだろうという考えだ。
 もちろん、危険だと判断すれば睡眠モードに入って自己防衛をする準備は出来ているが。

「飴玉のお礼って言うか、作りすぎたって言うか。とにかく作ってきたんだけどさ、いる?」
「……お弁当?」

 差し出されたのは四角い弁当箱。彼女が目を合わせようとしないのを見て、唯斗は何か怪しいなと思った。
 しかし、わざわざくれるというものを断るのも失礼になる。事情くらいは聞いておこうかな。

「すごいね、型にはめて作ったの?」
「そうそう、いい石油見つけたからプラスチックに加工して……って違うわ!作ったのは中身!箱の方じゃないから!」

 何だ、違うのか。ということは中に何か入れたらしいけど……やっぱり目を合わせてくれない。いつもはしつこいくらい見てくるだけに、明らかに何かを隠している気がする。
 唯斗は心の中でそう推理すると、小さく頷いてから首を横に振った。

「いらない。自分で持ってきてるから」
「……え?普通断る?! ていうか、このイベント断る人いたんだ……」
「食べたら倒れたりしそうだからね」
「あ、もしかして、私が料理下手だと思ってるのかな?こんな見た目だから勘違いしちゃうよねーうんうん」

 夕奈は一人で何かに頷くと、「食べればわかるから!」と無理矢理弁当箱を机に置いてくる。しかし、唯斗もここで引き下がるわけにはいかない。
 受け取ったら最後、食べて毒で死ぬか、開けた瞬間に爆弾で吹き飛ぶかの二択……バッドエンドにしか繋がらないだろうから。
 しかし、あちらも持ち前の強引さを存分に発揮し、どれだけ首を横に振っても「大丈夫だから、ね?」と攻撃の手を緩めてはくれなかった。
 こうなったら最後の手段を使うしかないらしい。

「分かった。じゃあ、そっちの弁当をくれる?」
「……こっち?」

 唯斗は一度弁当箱を受け取ると、彼女の机の横にかかっている別の弁当箱を指差した。おそらく、あちらは夕奈自身がお昼に食すためのもの。
 つまり、中身は絶対に安全なはずだ。

「それ、唯斗君のために作ってきたのに……」
「あれ、作りすぎたからじゃなかったっけ?」
「あー、別にそっちでもいいかなぁ!どーぞどーぞ!」

 夕奈は突然独り言を言い始めると、唯斗に安全な方の弁当箱を押し付けてきた。しかし、やはりこれでは不公平な気もする。
 唯斗はお詫びとして、危ない弁当箱と自分が元々持って来ていた弁当箱も合わせて彼女に渡した。

「え、いいの?」
「珍しく僕が作ったやつだから、危ないものは入ってないよ」
「ゆ、唯斗君が作った……手作り……?」
「まあ、そういうことになるかな」
「うへへ……はっ?! ま、まあ、余っても困るからね。私が食べておいてあげる」
「そんなに食べたら太りそうだね」
「っ……大丈夫、その分運動すれば……」
「もうすぐテスト前だから、時間もなくなるよ」

 その言葉に表情を無にした夕奈は、「大丈夫、徹夜でやれば平均点くらいは……」とブツブツ呟いていたが、唯斗の「まあ、僕は勉強しなくてもいけるけど」という一言で額を机に思いっきりぶつけた。

「神様は不公平だぁぁぁぁ!」
「そういうことしてるから見捨てられるんだよ」
「私は何も悪いことをしていないよ!清く正しく生きてるよ!」
「制服を着崩す、髪を染める、授業中に携帯を触る。校則違反は悪いことじゃないんだね」
「ぐぬぬ……」
「あっ、危険物を持ってくるのもやめた方がいいよ」
「誰の弁当が暗黒物質ダークマターやねん!」

 ……中身は爆弾じゃなくてブラックホールだったのか。いや、ダークマターという名の爆弾なのかな。
 まあ、どんな爆弾も巻き込まれれば暗黒世界《あの世》に連れていかれるし、どれも同じようなものだよね。

「とにかく、勉強は頑張った方がいいよ」
「そこまで言うなら、唯斗君が手伝ってくれてもいいんだけど」
「自分のことで手一杯」
「さっきやらなくても大丈夫とか言ってたやないかい」

 さすがはスーパーパリピだね。何とか断り続けようと思ったけど、最終的には頷かされてしまったよ。

「じゃあ、駅前のシュークリーム2個で買収!」
「買われた」
「よしっ!」

 捨てる神あれば拾う神ありって言うし、たまには神になってみるのも悪くない。
 唯斗はシュークリームに思いを馳せながら、「これで赤点回避ー♪」と喜んでいる夕奈を眺めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...