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第19話 意外なところに敵はいる
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「夕奈ちゃん参上!ドヤァ……って、誰もいない……」
教室に飛び込んで決めポーズを決めた夕奈は、無人の教室を見回してため息をついた。
せっかく引き返してきたのに、唯斗は既に帰ってしまったらしい。
「教室の鍵くらい閉めろやおら」
鍵についたサメのぬいぐるみにパンチしつつ、前と後ろのドアの鍵を閉めて職員室へと向かう。
どうして自分がこんなこと……という気持ちはあったが、見つけてしまった以上はやらなくてはいけない。
夕奈はそういうところだけ真面目なのだ。
「いなかったみたいだな」
「残念ね~」
「どんまい」
後をつける3人組にはまだ気がついていないらしく、職員室に鍵を直した夕奈はそこからいつもとは違う道を通って校門へと向かう。
掃除の時にゴミを捨てるゴミステーションの前を通り、特別教室などがある別棟の横を通る道だ。
「はぁ、一人で帰るのつまらないよー!」
そんな独り言をこぼしながら歩いていると、角を曲がったところで2人組が歩いているのが見えた。
男女、カップルだろうか。よろしくしやがって……と心の中で愚痴をこぼすのと同時に、女子の方が横を向く。
「……あれ?」
見覚えのある顔、カノちゃんだ。自分達以外にあんなにもニコニコしている彼女は初めて見た。
しかし、花音に彼氏がいるという話を聞いたことがない夕奈は、どんな人なのか確かめてみたくなった。
「カーノーちゃん!」
「ふぇっ?! ゆゆゆゆゆ夕奈ちゃん?!」
後ろから駆け寄って、両肩を同時にパーンと叩くと、花音は驚いたように数センチ飛び上がって振り返る。
いつもこの挨拶をしているのに、この子は全く慣れないのだ。
「教えてくれたら良かったのにー♪一体どんな素敵な彼氏を───────────へ?」
夕奈は男の方の顔を見上げて、つい言葉を失ってしまった。
「ゆ、唯斗君……?」
「夕奈、まだ残ってたんだね」
その男、平然と夕奈を見下ろしていたのは、つい先程までメガネ姿を見せようと思っていた唯斗だったのだから。
夕奈は、落ち着いてるところを見せようと思ったのに!という気持ちと、花音が唯斗君と一緒に?という気持ちが入り混ざって困惑していた。
「夕奈ちゃん、大丈夫ですか?」
「へ?だいりょーぶだいりょーぶ……」
「うん、大丈夫そうだね。いつも通りの夕奈だし」
「誰が酔っぱらいのおじさんやねん!」
「うわ、本当に元に戻っちゃったよ」
「……残念そうな顔しないで貰えます?夕奈ちゃん、そろそろ傷つくよ?」
クラクラする頭を何とか平常運転まで戻して、「まだ傷ついてなかったんだ」という唯斗の言葉は無視。
一番聞きたいことがある花音へと顔を向ける。
「花音、彼氏が居るなら言ってよ!水臭いなー!」
「か、彼氏?! 違います!唯斗さんはただの友達ですから!」
「そんなこと言って、やる事やってんだろこんちくしょう!」
「ふぇぇ……」
情緒不安定な夕奈に怯える花音。見兼ねた唯斗は、夕奈の額にデコピンを叩き込むと、花音を一歩遠ざけさせる。近くにいたら危険だ。
「夕奈、落ち着いて。花音とは本当に友達だから」
「もう呼び捨てしてる!ずるいんじゃずるいんじゃ!」
「夕奈も初めから夕奈だけど」
「それじゃ足りない!ゆうこりんって呼んで、ゆうこりんって!」
「別人じゃん」
ワーワーうるさいので、とりあえず「ゆいP」と呼んでみたら、満足したようで大人しくなってくれた。
「夕奈、いつにも増して変だよ」
「別にカノちゃんに嫉妬なんてしてないし!」
「嫉妬?なんで夕奈が嫉妬するの?」
「そ、それは……唯斗君が構ってくれないから……」
よく分からないが、要するに拗ねちゃってるわけか。無視してうるさくなるのなら、適度に構った方がマシかもしれない。
唯斗はなるほどと頷くと、夕奈に一歩近づく。
「そんな子供みたいなことしてたら、せっかく賢そうなメガネ掛けてるのに勿体ないよ」
そう言ってメガネを取り、レンズに息を吐いて汚れを落とす。それからもう一度、かけ直してあげた。
「唯斗君……」
夕奈はほんのりと頬を赤くすると、唯斗を見上げて賢そうな顔を作る。……が、彼女の期待に反して唯斗は目を背けると。
「一生分優しくしたから、僕に一生構わないでね」
そう言って、花音と共に脇を通り過ぎて行ってしまった。その背中を呆然と見つめていた夕奈は、2人が見えなくなってしまってからガクッと膝をついた。
「まさか、こんなにも身近に強敵がいたなんて……」
「花音が小田原狙いとはな」
「さすがに驚きだよ~♪」
「それな」
「みんな、どうしてここに?!」
影から見ていた3人の登場に、驚きのあまり目を丸くする夕奈の肩をそっと叩いてあげる3人。
その優しさに胸打たれたのか、夕奈はポロポロと涙をこぼすと瑞希に抱きついた。
「うわぁぁぁぁん!カノちゃんの裏切り者ぉぉぉ!」
「よしよし、まだこれからだろ」
「元気出して~」
「がんば」
教室に飛び込んで決めポーズを決めた夕奈は、無人の教室を見回してため息をついた。
せっかく引き返してきたのに、唯斗は既に帰ってしまったらしい。
「教室の鍵くらい閉めろやおら」
鍵についたサメのぬいぐるみにパンチしつつ、前と後ろのドアの鍵を閉めて職員室へと向かう。
どうして自分がこんなこと……という気持ちはあったが、見つけてしまった以上はやらなくてはいけない。
夕奈はそういうところだけ真面目なのだ。
「いなかったみたいだな」
「残念ね~」
「どんまい」
後をつける3人組にはまだ気がついていないらしく、職員室に鍵を直した夕奈はそこからいつもとは違う道を通って校門へと向かう。
掃除の時にゴミを捨てるゴミステーションの前を通り、特別教室などがある別棟の横を通る道だ。
「はぁ、一人で帰るのつまらないよー!」
そんな独り言をこぼしながら歩いていると、角を曲がったところで2人組が歩いているのが見えた。
男女、カップルだろうか。よろしくしやがって……と心の中で愚痴をこぼすのと同時に、女子の方が横を向く。
「……あれ?」
見覚えのある顔、カノちゃんだ。自分達以外にあんなにもニコニコしている彼女は初めて見た。
しかし、花音に彼氏がいるという話を聞いたことがない夕奈は、どんな人なのか確かめてみたくなった。
「カーノーちゃん!」
「ふぇっ?! ゆゆゆゆゆ夕奈ちゃん?!」
後ろから駆け寄って、両肩を同時にパーンと叩くと、花音は驚いたように数センチ飛び上がって振り返る。
いつもこの挨拶をしているのに、この子は全く慣れないのだ。
「教えてくれたら良かったのにー♪一体どんな素敵な彼氏を───────────へ?」
夕奈は男の方の顔を見上げて、つい言葉を失ってしまった。
「ゆ、唯斗君……?」
「夕奈、まだ残ってたんだね」
その男、平然と夕奈を見下ろしていたのは、つい先程までメガネ姿を見せようと思っていた唯斗だったのだから。
夕奈は、落ち着いてるところを見せようと思ったのに!という気持ちと、花音が唯斗君と一緒に?という気持ちが入り混ざって困惑していた。
「夕奈ちゃん、大丈夫ですか?」
「へ?だいりょーぶだいりょーぶ……」
「うん、大丈夫そうだね。いつも通りの夕奈だし」
「誰が酔っぱらいのおじさんやねん!」
「うわ、本当に元に戻っちゃったよ」
「……残念そうな顔しないで貰えます?夕奈ちゃん、そろそろ傷つくよ?」
クラクラする頭を何とか平常運転まで戻して、「まだ傷ついてなかったんだ」という唯斗の言葉は無視。
一番聞きたいことがある花音へと顔を向ける。
「花音、彼氏が居るなら言ってよ!水臭いなー!」
「か、彼氏?! 違います!唯斗さんはただの友達ですから!」
「そんなこと言って、やる事やってんだろこんちくしょう!」
「ふぇぇ……」
情緒不安定な夕奈に怯える花音。見兼ねた唯斗は、夕奈の額にデコピンを叩き込むと、花音を一歩遠ざけさせる。近くにいたら危険だ。
「夕奈、落ち着いて。花音とは本当に友達だから」
「もう呼び捨てしてる!ずるいんじゃずるいんじゃ!」
「夕奈も初めから夕奈だけど」
「それじゃ足りない!ゆうこりんって呼んで、ゆうこりんって!」
「別人じゃん」
ワーワーうるさいので、とりあえず「ゆいP」と呼んでみたら、満足したようで大人しくなってくれた。
「夕奈、いつにも増して変だよ」
「別にカノちゃんに嫉妬なんてしてないし!」
「嫉妬?なんで夕奈が嫉妬するの?」
「そ、それは……唯斗君が構ってくれないから……」
よく分からないが、要するに拗ねちゃってるわけか。無視してうるさくなるのなら、適度に構った方がマシかもしれない。
唯斗はなるほどと頷くと、夕奈に一歩近づく。
「そんな子供みたいなことしてたら、せっかく賢そうなメガネ掛けてるのに勿体ないよ」
そう言ってメガネを取り、レンズに息を吐いて汚れを落とす。それからもう一度、かけ直してあげた。
「唯斗君……」
夕奈はほんのりと頬を赤くすると、唯斗を見上げて賢そうな顔を作る。……が、彼女の期待に反して唯斗は目を背けると。
「一生分優しくしたから、僕に一生構わないでね」
そう言って、花音と共に脇を通り過ぎて行ってしまった。その背中を呆然と見つめていた夕奈は、2人が見えなくなってしまってからガクッと膝をついた。
「まさか、こんなにも身近に強敵がいたなんて……」
「花音が小田原狙いとはな」
「さすがに驚きだよ~♪」
「それな」
「みんな、どうしてここに?!」
影から見ていた3人の登場に、驚きのあまり目を丸くする夕奈の肩をそっと叩いてあげる3人。
その優しさに胸打たれたのか、夕奈はポロポロと涙をこぼすと瑞希に抱きついた。
「うわぁぁぁぁん!カノちゃんの裏切り者ぉぉぉ!」
「よしよし、まだこれからだろ」
「元気出して~」
「がんば」
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