隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?

プル・メープル

文字の大きさ
39 / 63

第39話 見送りは場所に限らずしてもらえると嬉しい

しおりを挟む
 学校に到着する頃には、空もそれなりに明るくなっていて、校庭に止まっているバスもはっきりと見えた。
 既に山に監禁される人達は乗り込んでいたらしく、一行の姿を見つけた夕奈ゆうなは、先生に一言伝えてから飛び出してくる。

「みんな、見送りに来てくれたの?」
「おう、しばらくは会えないからな」

 そう言って笑う瑞希みずきに、夕奈は思いっきり抱きついた。それにつられるように他3人も夕奈を取り囲み、お互いをお互いで温め合う。
 ひとしきり抱きしめ合った後、夕奈はちらりと唯斗ゆいとの方へと視線を向けた。

「唯斗君もしたい?」
「やめとく」
「連れないなー!」

 よほど人肌の温もりが恋しいのか、断られた腹いせとばかりにべしべしと肩を叩く彼女。
 20発ほどでようやく満足したらしく、「そんな悲しい顔すな! 2週間後に会えるやろ?」と何故か関西弁で励ましてきた。
 ちなみに唯斗は悲しんでいるのではなく、早く行けと言いたい気持ちをグッと堪えているところである。でないと、アイスを奢って貰えなくなるから。

佐々木ささきさん、もう出発するわよ」
「はーい! それじゃ、行ってくるね!」

 先生に呼ばれ、手を振りながらバスへと戻っていく夕奈。最後列窓際の席から手を振ってくる彼女を、一行は「がんばれよー!」と声をかけながら見送る。
 校門を出てから左に曲がり、バスが見えなくなるまで見送った唯斗は、疲れを吐き出すようにため息をついた。
 もしもこれが最後の別れだったのなら、少しは寂しいと思ったかもしれないが……。

「山ってあそこに見えてるやつだったか?」
「確かここから3キロだよね~」
「近いな」

 徒歩でも行けなくないような距離だから、唯斗からすれば寂しさを感じないどころか、もっと遠くにいけとさえ思う。
 まあ、校長が代々受け継いできた山らしいから、場所に文句を言っても仕方ないとは思うけど。

「それでも、2週間会えないとなると寂しいです。スマホも取り上げられちゃうみたいですし……」
「まあ、勉強しなかった夕奈が悪いわけだしな」

 瑞希はそう言って花音かのんの頭を撫でると、「代わりに私たちが楽しんでやろうな!」と笑った。

「はい!めいっぱい楽しみます!」
「それじゃ、とりあえず遊びに行く予定立てないとだな」
「スポ〇チャも行きたいわ~♪」
「それな」

 女子4人がワチャワチャと夏休みの計画を立てていくのを、唯斗は少し離れたところから眺める。早くアイスを食べたいけど、邪魔するのも悪い気がするし。
 そう言えば、夏休みなのに制服で行って大丈夫なんだろうか。寄り道なんかをしたことがない彼にとって、そこは少し心配ポイントなのである。

「じゃあ、明後日5人でボーリングだな!」
「……ん?」

 気付けば瑞希の目がこちらを向いていた。唯斗はこの場にいる人数を数えてみてから、「いやいや」と首を横に振る。

「4人の間違いだよ」
「何で小田原おだわらを抜くんだよ」
「一緒に行くよね~♪」
「不可避」

 すぐに訂正してみるも、彼女らの中では5人が正しいらしい。目に見えない人間が紛れ込んでいるとも思えなかった。
 唯斗はようやく自分も数えられていることに気がつくと、再度首を横に振る。

「僕は家でのんびり……」
「親睦会だ、断るなんて許さないぞ?」
「拒否権ないよ~♪」
「それな」

 どうやら行かないという選択肢はないらしい。唯斗は最後の頼みとばかりに花音の方を見るも、「お迎えに行きますね!」とキラキラした笑顔を見せられてしまった。

「……わかった、行くよ」

 どうせ居留守を使っても、この4人は今日のように2階までやってくる。
 そうでなくても花音は既に天音あまねの師匠だ。妹が家にいる時間なら家に上がることは容易いだろう。
 そうなるともう逃げ場は残されていない。遅かれ早かれ、最終的には連れ出されてしまうのだ。
 それなら、降参した方が無駄な体力を使わずに済む。そう判断した唯斗は、大人しくメンバーに数えられることにしたのだった。

「明後日、楽しみですね!」

 さすがの唯斗も、この純粋な笑顔を無慈悲に壊すような真似はできないのである。
 彼は霞んでいく平穏の文字を思い浮かべながら、風の音で消えそうなほど小さな声で答えた。

「……まあ、うん」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...