隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?

プル・メープル

文字の大きさ
60 / 63

第60話 歩く騒音機は睡眠前も稼働する

しおりを挟む
唯斗ゆいと君、おやすみ」
「……」
「お・や・す・み!」
「……おやすみ」

 渋々返ってきた声に夕奈ゆうなは満足そうな顔で頷くと、電気を消してベッドへ横になる。
 天音あまねは3つ連なったうちの、真ん中のベッドの上ですやすやと眠っていた。
 よほど遊び疲れたのかヨダレを垂らしているので、唯斗がティッシュでそっと拭いてあげる。その様子を見ていた夕奈は、微笑ましそうに笑った。

「唯斗君って、天音ちゃんのこと好きだよね」
「妹だからね」
「すごくいいお兄ちゃんって感じ」
「そんなことないよ、遊んであげられないし」
「それは私が代わりにやったげるよ」
「教育に悪影響」
「善意なのに酷くない?!」

 急に大きな声を出したせいか、天音が「うう……」と唸る。夕奈は慌てて口を塞ぎ、しばらく様子を見てからホッとため息をこぼした。

「私のお姉ちゃんも、私の遊びに付き合ってくれなかったよ」
「へぇー、夕奈ってやっぱり妹だったんだ」
「やっぱりってどういう意味さ!」
「何も考えて……いや、無邪気だなって」
「今言い換えたよね? 全国の妹に謝れ」
「天音だけは例外だよ」
「私もそこに入れて?!」

 唯斗が何も言わずに天音の頭を撫で始めると、夕奈は話を元に戻すために小さく咳払いをする。

「私のお姉ちゃんは唯斗君とは違って、遊べるけど遊んでくれないタイプだったんだよね」
「仲悪かったの?」
「ううん、むしろ良かった。でも、お姉ちゃんは自分のやりたいことを最優先する人だから、いつも『忙しい』って断られてたよ」

 彼女はそう言いながら天音のそばに移動して、その小さな体を優しく抱きしめた。

「天音ちゃんの遊んで欲しい気持ちは、同じ妹としてすごくわかるの。だから、私がお姉ちゃんになってあげる」

 唯斗は「……ってダメ、かな?」と聞いてくる夕奈に、どう言葉を返せばいいのか迷ってしまう。
 正直、夕奈の存在が近くなるのは避けたかった。しかし、自分に天音の楽しい時間を奪う権利は無い。
 そんな考えに至ると、返せる答えはひとつしか残らなかった。

「いいよ、天音のためだから」
「ほんと? やった!」

 喜びのあまり抱きしめる力が強くなる夕奈。天音が少し暑苦しそうにもがいたのを見て、唯斗は「でも……」と妹の体に手を伸ばす。

「僕の妹だから。あんまりベタベタしないで」

 彼がそう言いながら天音の体を引き寄せると、夕奈も負けじと抱きつく腕に力を込めた。

「女の子同士なんだからいいでしょー!」
「夕奈だけはダメ。悪い方向に育つから」
「私のどこが悪いって?」
「口と性格」
「そんなのお母さんにも言われたこと……まあ、ないといえば嘘になるけど」

 唯斗が「ただでさえ似てきて困ってるんだから」と文句を言うと、夕奈は「さすが我が妹よ!」と天音に頬ずりする。兄を差し置いて羨ま……いや、許せない。

「天音が起きちゃうから離して」
「瑛斗君こそ、妹にベタつきすぎなんだけど!」

 2人の視線がバチッと火花を散らした瞬間、お互いに天音を奪い合う───────なんてことは起こらなかった。
 なぜなら、天音自身がむくりと起き上がったから。

「2人とも、うるさいよ!」
「「ご、ごめんなさい……」」

 不満そうに頬を膨らませた彼女は、謝る2人を交互に見たあと、両手でそれぞれの頭をよしよしと撫でる。

「2人の気持ちはよくわかったよ。でも、私はお兄ちゃんも師匠も大好きだから、取り合いはしないで欲しいな」

 なんて優しい妹なのだろう。唯斗は天音の言葉に胸を打たれたような気分だった。
 確かにこんなことみっともないし、天音自身だっていい気分ではないだろう。小声で「私のために争わないで」なんて言ってたけど、きっとそのはずだ。
 唯斗は兄として決心すると、夕奈に「ごめん」と素直に謝ることにする。

「夕奈、天音は2人で共有しよう」
「異議なしっ!」

 そういうわけで、天音から見て右側からは夕奈が、左側からは唯斗が抱きしめながら眠ることになったのだった。

「何だか子供と一緒に寝る夫婦みたいじゃない?」

 ふと夕奈呟いた言葉の意味に、唯斗は「いやいや」と首を横に振って見せる。

「『天音のお姉ちゃんになってもいい』って、別にそういう意味じゃないからね?」

 それを聞いた彼女は眉を八の字にしてしばらく悩み、十数秒後にガバッと起き上がると、顔を真っ赤にして言った。

「お、じゃないかんな?!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる

グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。 彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。 だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。 容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。 「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」 そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。 これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、 高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...