伝説の勇者が闇堕ちした日に、ポンコツは爆誕する

空木卯々

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第一部一章二話

特殊依頼をこなして④

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◇◇◇◇◇


町の頭上に登っていた太陽が随分と傾いた。


土の薫りが濃く広がる大地。
ざっと見渡す限りには
広大な畑が広がっていた。

まだ夕刻…とまでは、いかない。
日差しが傾き、若干ではあるが、
暑さが和らぎ、陽は橙に色を染めかけていた。

四方向けども、
ジャガイモ、ジャガイモ、ジャガイモ…
偶に飛び出す巨大なミミズに
心臓を跳ね上げながら
額に汗を滲ませ、
汗を拭う度に顔に土を張り付かせ、
イルは必死に作業をしていた。

リーンも例外ではない。
陶器のような白い頬は
珍しく花を咲かせたかの如く
淡く朱に染まり、
イル同様、美しい顔には土が付いていた。

既に三時間以上、ニ人は
ジャガイモと格闘していたのだった。




「ううう…ジャガイモ収穫なんて
転生前の僕ならショックで倒れていたよ」

「勝手に転生したのが悪い。
そもそも巷の物語譚のように転生したら、
記憶も能力も引き継いだ!
なんて…そう上手くは、いかないのだぞ?」

「それは…転生してから気付いたよ
記憶は転生前のものなのに…
体は全然引き継げないって…」

「まぁ…その強固な意思で
記憶が継承して転生するだけでも…
奇跡だがな」

「いやぁ…照れるなぁ…デュフフ」

「どちらかと言えば、呆れているのだが?」

今、もし…
かつての二人のことを知る人物が
いたとしたら…
本当に驚き、慌てふためき…
二人にこんな事はさせられないと
必死に止めていただろう。


イルは愚痴を吐いていたが…
リーンはこのような状況を少しだけ
楽しんでいた。
こんな落ちぶれて畑仕事をする
二人も新鮮で良いではないか…

正に我々にとっては、
リスタートだ。

これから、また登り詰めればいい。




陽は完全落ち、町に灯りが灯り始めた頃…


既に体力の限界がきて寝落ちてしまった
リーンを背負い、
イルもまた…
酷使した足腰は、
産まれたての子鹿の如く有様で、
プルプルさせながら
ふらふらと、足取り覚束ない状態ながら、
なんとかギルド窓口へ
依頼達成の報告へ行くのだった。


銀の月がもう真上に差し掛かっている。


月の中心はほのかに赤い、
昔話ではあの赤い部分に
神様の世界があるのだと…
子供の頃によく聞かされた御伽噺を
思い出す。

神様は僕らのことを
見て下さっているだろうか?

イルは背負っているリーンの重みを感じながら
祈るように月を見上げて進む。
明日も頑張ろう。
リーンの為に、自身の矜持を取り戻す為に…
世界の平和のために…
なんて、カッコ付けたら…
またリーンに小突かれてしまうだろうか?



◇◇◇◇◇



(第三話へ続く)
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