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第3章 ブルドー公爵領編
第41話 大婆様
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エストレーラで集落のど真ん中に乗り付け、今俺達の回りには何十人という村人(?)がいるわけだけど……全員のエストレーラを見る視線がなんというか……怖い。
まぁ確かに、突然乗り込んできたのはこっちだし、多分さっき急に景色が変わったのは何かのシールドだったのだろうし、状況としては100%侵入者なわけだから仕方ないのだけど。
「シ、シリウス……先に降りなさいよ!事情を話せば、きっと分かってくれるはずよ!」
うわ、この子俺を生贄にするつもりだ。でもまぁ会話をしないことには始まらない。とりあえずエストレーラを降りて挨拶を……とドアに手をかけた時人混みの中から独りの少女が姿を表した。少女は頭をターバンのような布で覆っているが、見た目的には恐らく俺たちと同じくらいの年か…せいぜい少し上くらいだろう。そして少女は眩しそうに両目を細めながらこちらに歩み寄ってきた。
しまった、ライトつけっぱなしだった。
俺はすぐにライトを消し、改めてドアを開いて独り外に降り立った。同時に村人たちからどよめきが起こる。
「☆sdfd◆hyhtれ?」
「ny▼dckjそ◯じゃ?」
「*@kdfgtgsんもs!」
……彼らのざわめきに耳を傾けてみたが、ハズール語とは違う言語でまったく理解できない。
「あ~えっと……シリウス」
先頭にいる少女に向かって俺は自分を指差しながら名前を名乗った。
「し、しりうす?」
少女は難しそうな顔で俺の名前を反復した。
【スキル『日進月歩』の効果により言語『エルトレス語(日常会話)』を習得しました】
お、久しぶりにスキル発動。けど……エルトレス語ってなんだ?
俺は、目の前の少女を鑑定でチェックしてみることにした。
【ステータス】
名称:ソニア・エルトレディア
種族:エルフ族
身分:王族
Lv:30
HP:250
MP:830
状態:正常
物理攻撃力:63
物理防御力:65
魔法攻撃力:420
魔法防御力:426
得意属性:光・風・水・火・土
苦手属性:闇
素早さ:250
スタミナ:200
知性:548
精神:325
運 :219
保有スキル:
(エルフ族)精霊の加護
(固有)精霊の寵愛
(固有)調教師
(一般)料理人
(一般)音楽家
(一般)薬師
(一般)採取
保有魔法:
(エルフ族)光魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)風魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)水魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)火魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)土魔法:精霊召喚:下位・中位
この人……エルフ族なのか。確か……ロード・オブ・ザ・◯ングに出てたやつと一緒だよな?それにしてもなんというか……異常なくらい精霊に愛されまくってる感じがするな。
「………いうの?」
ステータスを見ながらしばらくボーッとしてたら、目の前の少女に話しかけられていたようだ。
「あなたの名前は『シリウス』というの?」
「はい、俺の名前はシリウス、あなたはソニアさんで合ってます?」
俺がスキルで習得したばかりのエルトレス語を使って返すと周りから再びざわめきが起こった。ソニアも目を丸くしている。
「何だこいつ!?エルフの言葉を喋ったぞ!」
「何者なんだ?」
おぉ、今度は全部聞き取れた。
「あなた……なぜエルフの言葉を……それにどうして私の名前を知っているの?」
「あぁ、すいません。俺には「鑑定」というスキルがあるんで、ついフライングしてチェックしてしまいました」
「……鑑定?」
「えっと……人とかモノの詳細情報が分かる、といえば何となく伝わりますかね?」
「……神の目?」
神の目と言えば昔ジルさんも同じことをいてた気がする……
「多分、ソレです!」
そう聞いてソニアは一瞬目を大きく見開いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、険しい目つきで言葉を続けた。
「……聞きたいことはたくさんありますが、何をしにここへ?」
「えっと……ここに用があったわけでは無くて……森を抜けて海に出ようと思っていたら道に迷ってたまたまここを見つけた、というわけで」
「はぁっ!?たまたまですって!?ここに張ってあった結界はそんなに簡単に破れるものじゃなかったはずよ?魔物だって入っては来られない……少なくとも人間の魔力程度では到底ムリなはずよ、いやそもそももココを見つけることさえ出来ないはずだわ」
そんなこと言われても……突破できちゃったものはできちゃったわけだしなぁ……
困っているところでエストレーラの助手席のドアが開き、シエナが姿をあらわした。
「シリウス……ちょっと大丈夫なの?」
「えっと……なんか結界を破ったことについて追及されてるんだけど……」
「結界?そう言えば……なんかパリンってなったような気も……っていうかこの人たちエルフじゃない!?」
そっか、シエナも鑑定できるんだったな!ただ、エルフ語なんかしゃべれないだろ……
「こんにちは!あなたソニアっていうのね!私はシエナ、よろしくね!」
何この子……普通にエルフ語喋ってるんだけど……ってかコミュ力高っ!?
「あ、あなたもエルフ語を!?……ちょっと?どういうことか説明してもらえるかしら?」
ソニアの目は一層厳しいものになった。
「ま、まぁとにかく……結界の件はほんとに気づかなかったんだ!それについては謝ります!」
そう言って俺はソニアに頭を下げた。昔から謝罪のときによくやっていたぴったり45度のきれいな最敬礼で!
誠意は伝わったようでソニアさんもしばらく黙っていたのだが……
「ねぇ、ていうかメルリアさんってエルフの人知らない?パパとママの知り合いだって聞いてるんだけど……」
え?……何この子?俺が誠心誠意謝ってる中でそういうのぶっこんでくる?
しかし、俺なんかの謝罪よりこっちのほうが効果があったようだ。
「メルリア……あなた今そう言ったの?パパとママの知り合いってあなたはいったい何なの?」
ソニアの関心は完全にそっちに向いてしまった。シエナが一瞬俺の方に目線だけ向けて、正体を明かしていいものか確認を入れてきたがこの流れで正体を明かさないわけにもいかないだろうし、俺は頷いて返した。
「えっと……龍族だよ!」
そして服の中にしまってあった尻尾をちらっと見せた。
「りゅ、龍族……」
「おい、龍族だ!」
「龍だって!?」
「じゃぁ結界破ったのはあっちの龍族の方か?」
外野からいろんなざわめきが聞こえる。しかし当のソニアは一瞬驚いた様子だったが、何か思い当たるところがあったのかまったく騒ぎ立てることもなく静かに…
「あなた達を大婆様に会わせます。ついてきてください」
とだけ言って、人混みを下がらせ俺たちを先導し、奥のひときわ大きな建物へと案内した。
…………
………
……
…
大きな木造の建物で俺たちは客間のようなところに通され、しばらく2人で大人しく待っていた。
そしてシエナがそろそろしびれを切らしそうになったところで、部屋の扉が開き、50代ほどのおばさんがやってきた。「大婆様」なんていうからてっきりダン◯ルドア校長の女版みたいなのを想像してただけにだいぶ想像と違った。この人はターバンを巻いておらず、尖った耳が髪の間からしっかりと見えていた。
「あんたがシリウス、それからあんたがシエナだね。あたしがこの村の村長をしているメルリア・エルトレディアだ。今年で570歳になる」
「ご、570!?」
ハズール語で話しかけられたのにもビックリだったが、それ以上にあまりの高齢に驚いて俺はつい声を大きくしてしまった。
「まぁ人の子だと驚くのも無理はないね。エルフは龍族ほどではないにせよ長命の種族、まぁ570歳はかなり年を食ってる方だがね」
「へぇ……」
前世ではどちらかと言うと長命な方だった人間が、この世界ではなんと短命種……
「ところで、シエナ、あんたの父親と母親と言うのは?」
「パパが『蒼天龍ジルソレイユ』、ママが『輝龍アルマヴィエラ』だよ!」
「やはりか……そうするとアンタはジーフ山の上で育ったんだね?」
「うん!でもメルリアさんはなんでジーフ山の事知ってるの?」
「なんでも何も……あの御二人とあともう一人なんと言ったか……人族の坊やに頼まれて、あの山が外から見えんように結界を張ったのはあたしだからね。」
「えっと、それって300年くらい前の話です?」
「あぁ、そのくらい昔だね。あたしがまだピチピチだった時の話さ」
そうすると、人族の坊やってのは恐らく初代様ことカノープスだ。
「もっとも……あたしが結界を張るずっと前から御二人はあの場所に住んではいたようだけど……そうかい、やっと子を授かったんだねぇ」
メルリアさんはどこか感慨深そうな目で言った。
「シエナ、あんた生まれてどのくらいだい?」
「15年!」
「そうかいそうかい、目元なんか奥様にそっくりだね……で、なんで龍族が人族と一緒にいるんだい?」
「なんで……ってシリウスと旅をしてるからだよ?」
「人族と旅!?はぁ……そういうところは旦那様に似たんだねぇ」
今度も感慨深そうではあるがどこか心配げな表情だ。
「しかし、あんた……まだ15だろ?その年じゃろくに魔法も使えないだろ?」
「う~ん……まだパパには勝てないけど、魔法は結構使えるようになったし、この間は魔族に乗り移られた相手とも戦えたよ!」
「魔族だって!?いくらなんでも、それは危険すぎる……しかし、魔族本体じゃなくて良かったね……」
「本体の方はシリウスが倒しちゃったからねぇ」
そう言ってシエナはまるで俺が美味しいところを持っていったかのようなジト目でこちらを向いた。
「……はぁ!?人族の子供が一人で魔族を倒しただって!?」
メルリアさんもこれにはおどろいたようで、前のめりになって俺の顔を覗き込んだ。
「まぁ……ですが、下級魔族でしたし、そんなに大したことでは……」
「何いってんだい!下級だろうがなんだろうが魔族はヤバいんだよ!あたしたちなんか魔法しか取り柄がないから魔法が効かないあいつらは天敵なのさ……」
「なるほど……」
「まったく……300年前のあの坊やと同じだねぇ……でも、それだけの強さがあるんなら結界を破られたのも納得だよ」
メルリアさんは呆れたようにそう言うと、しばらく何かを考え込んでいたがやがて姿勢を正してこちらに向き直った。
「シリウス、シエナ……あんたたちを見込んで頼みがある。結界のことはチャラにしてやるから、ちょっとあたしの依頼を引き受けちゃくんないかい?ほら、ソニアもそこでどうせ盗み聞きしてるんだろ?こっちへおいで」
扉の外に声をかけるとゆっくりと扉が開き、そこには赤面したソニアが立っていた。
「す、すいません……」
「はぁ……あんたもわかりやすい子だねぇ……まぁいいさ。あんたもそこへお座り」
ソニアは申し訳なさそうにトボトボと俺の横にやってきてソファに静かに腰を下ろした。
まぁ確かに、突然乗り込んできたのはこっちだし、多分さっき急に景色が変わったのは何かのシールドだったのだろうし、状況としては100%侵入者なわけだから仕方ないのだけど。
「シ、シリウス……先に降りなさいよ!事情を話せば、きっと分かってくれるはずよ!」
うわ、この子俺を生贄にするつもりだ。でもまぁ会話をしないことには始まらない。とりあえずエストレーラを降りて挨拶を……とドアに手をかけた時人混みの中から独りの少女が姿を表した。少女は頭をターバンのような布で覆っているが、見た目的には恐らく俺たちと同じくらいの年か…せいぜい少し上くらいだろう。そして少女は眩しそうに両目を細めながらこちらに歩み寄ってきた。
しまった、ライトつけっぱなしだった。
俺はすぐにライトを消し、改めてドアを開いて独り外に降り立った。同時に村人たちからどよめきが起こる。
「☆sdfd◆hyhtれ?」
「ny▼dckjそ◯じゃ?」
「*@kdfgtgsんもs!」
……彼らのざわめきに耳を傾けてみたが、ハズール語とは違う言語でまったく理解できない。
「あ~えっと……シリウス」
先頭にいる少女に向かって俺は自分を指差しながら名前を名乗った。
「し、しりうす?」
少女は難しそうな顔で俺の名前を反復した。
【スキル『日進月歩』の効果により言語『エルトレス語(日常会話)』を習得しました】
お、久しぶりにスキル発動。けど……エルトレス語ってなんだ?
俺は、目の前の少女を鑑定でチェックしてみることにした。
【ステータス】
名称:ソニア・エルトレディア
種族:エルフ族
身分:王族
Lv:30
HP:250
MP:830
状態:正常
物理攻撃力:63
物理防御力:65
魔法攻撃力:420
魔法防御力:426
得意属性:光・風・水・火・土
苦手属性:闇
素早さ:250
スタミナ:200
知性:548
精神:325
運 :219
保有スキル:
(エルフ族)精霊の加護
(固有)精霊の寵愛
(固有)調教師
(一般)料理人
(一般)音楽家
(一般)薬師
(一般)採取
保有魔法:
(エルフ族)光魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)風魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)水魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)火魔法:精霊召喚:下位・中位
(エルフ族)土魔法:精霊召喚:下位・中位
この人……エルフ族なのか。確か……ロード・オブ・ザ・◯ングに出てたやつと一緒だよな?それにしてもなんというか……異常なくらい精霊に愛されまくってる感じがするな。
「………いうの?」
ステータスを見ながらしばらくボーッとしてたら、目の前の少女に話しかけられていたようだ。
「あなたの名前は『シリウス』というの?」
「はい、俺の名前はシリウス、あなたはソニアさんで合ってます?」
俺がスキルで習得したばかりのエルトレス語を使って返すと周りから再びざわめきが起こった。ソニアも目を丸くしている。
「何だこいつ!?エルフの言葉を喋ったぞ!」
「何者なんだ?」
おぉ、今度は全部聞き取れた。
「あなた……なぜエルフの言葉を……それにどうして私の名前を知っているの?」
「あぁ、すいません。俺には「鑑定」というスキルがあるんで、ついフライングしてチェックしてしまいました」
「……鑑定?」
「えっと……人とかモノの詳細情報が分かる、といえば何となく伝わりますかね?」
「……神の目?」
神の目と言えば昔ジルさんも同じことをいてた気がする……
「多分、ソレです!」
そう聞いてソニアは一瞬目を大きく見開いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、険しい目つきで言葉を続けた。
「……聞きたいことはたくさんありますが、何をしにここへ?」
「えっと……ここに用があったわけでは無くて……森を抜けて海に出ようと思っていたら道に迷ってたまたまここを見つけた、というわけで」
「はぁっ!?たまたまですって!?ここに張ってあった結界はそんなに簡単に破れるものじゃなかったはずよ?魔物だって入っては来られない……少なくとも人間の魔力程度では到底ムリなはずよ、いやそもそももココを見つけることさえ出来ないはずだわ」
そんなこと言われても……突破できちゃったものはできちゃったわけだしなぁ……
困っているところでエストレーラの助手席のドアが開き、シエナが姿をあらわした。
「シリウス……ちょっと大丈夫なの?」
「えっと……なんか結界を破ったことについて追及されてるんだけど……」
「結界?そう言えば……なんかパリンってなったような気も……っていうかこの人たちエルフじゃない!?」
そっか、シエナも鑑定できるんだったな!ただ、エルフ語なんかしゃべれないだろ……
「こんにちは!あなたソニアっていうのね!私はシエナ、よろしくね!」
何この子……普通にエルフ語喋ってるんだけど……ってかコミュ力高っ!?
「あ、あなたもエルフ語を!?……ちょっと?どういうことか説明してもらえるかしら?」
ソニアの目は一層厳しいものになった。
「ま、まぁとにかく……結界の件はほんとに気づかなかったんだ!それについては謝ります!」
そう言って俺はソニアに頭を下げた。昔から謝罪のときによくやっていたぴったり45度のきれいな最敬礼で!
誠意は伝わったようでソニアさんもしばらく黙っていたのだが……
「ねぇ、ていうかメルリアさんってエルフの人知らない?パパとママの知り合いだって聞いてるんだけど……」
え?……何この子?俺が誠心誠意謝ってる中でそういうのぶっこんでくる?
しかし、俺なんかの謝罪よりこっちのほうが効果があったようだ。
「メルリア……あなた今そう言ったの?パパとママの知り合いってあなたはいったい何なの?」
ソニアの関心は完全にそっちに向いてしまった。シエナが一瞬俺の方に目線だけ向けて、正体を明かしていいものか確認を入れてきたがこの流れで正体を明かさないわけにもいかないだろうし、俺は頷いて返した。
「えっと……龍族だよ!」
そして服の中にしまってあった尻尾をちらっと見せた。
「りゅ、龍族……」
「おい、龍族だ!」
「龍だって!?」
「じゃぁ結界破ったのはあっちの龍族の方か?」
外野からいろんなざわめきが聞こえる。しかし当のソニアは一瞬驚いた様子だったが、何か思い当たるところがあったのかまったく騒ぎ立てることもなく静かに…
「あなた達を大婆様に会わせます。ついてきてください」
とだけ言って、人混みを下がらせ俺たちを先導し、奥のひときわ大きな建物へと案内した。
…………
………
……
…
大きな木造の建物で俺たちは客間のようなところに通され、しばらく2人で大人しく待っていた。
そしてシエナがそろそろしびれを切らしそうになったところで、部屋の扉が開き、50代ほどのおばさんがやってきた。「大婆様」なんていうからてっきりダン◯ルドア校長の女版みたいなのを想像してただけにだいぶ想像と違った。この人はターバンを巻いておらず、尖った耳が髪の間からしっかりと見えていた。
「あんたがシリウス、それからあんたがシエナだね。あたしがこの村の村長をしているメルリア・エルトレディアだ。今年で570歳になる」
「ご、570!?」
ハズール語で話しかけられたのにもビックリだったが、それ以上にあまりの高齢に驚いて俺はつい声を大きくしてしまった。
「まぁ人の子だと驚くのも無理はないね。エルフは龍族ほどではないにせよ長命の種族、まぁ570歳はかなり年を食ってる方だがね」
「へぇ……」
前世ではどちらかと言うと長命な方だった人間が、この世界ではなんと短命種……
「ところで、シエナ、あんたの父親と母親と言うのは?」
「パパが『蒼天龍ジルソレイユ』、ママが『輝龍アルマヴィエラ』だよ!」
「やはりか……そうするとアンタはジーフ山の上で育ったんだね?」
「うん!でもメルリアさんはなんでジーフ山の事知ってるの?」
「なんでも何も……あの御二人とあともう一人なんと言ったか……人族の坊やに頼まれて、あの山が外から見えんように結界を張ったのはあたしだからね。」
「えっと、それって300年くらい前の話です?」
「あぁ、そのくらい昔だね。あたしがまだピチピチだった時の話さ」
そうすると、人族の坊やってのは恐らく初代様ことカノープスだ。
「もっとも……あたしが結界を張るずっと前から御二人はあの場所に住んではいたようだけど……そうかい、やっと子を授かったんだねぇ」
メルリアさんはどこか感慨深そうな目で言った。
「シエナ、あんた生まれてどのくらいだい?」
「15年!」
「そうかいそうかい、目元なんか奥様にそっくりだね……で、なんで龍族が人族と一緒にいるんだい?」
「なんで……ってシリウスと旅をしてるからだよ?」
「人族と旅!?はぁ……そういうところは旦那様に似たんだねぇ」
今度も感慨深そうではあるがどこか心配げな表情だ。
「しかし、あんた……まだ15だろ?その年じゃろくに魔法も使えないだろ?」
「う~ん……まだパパには勝てないけど、魔法は結構使えるようになったし、この間は魔族に乗り移られた相手とも戦えたよ!」
「魔族だって!?いくらなんでも、それは危険すぎる……しかし、魔族本体じゃなくて良かったね……」
「本体の方はシリウスが倒しちゃったからねぇ」
そう言ってシエナはまるで俺が美味しいところを持っていったかのようなジト目でこちらを向いた。
「……はぁ!?人族の子供が一人で魔族を倒しただって!?」
メルリアさんもこれにはおどろいたようで、前のめりになって俺の顔を覗き込んだ。
「まぁ……ですが、下級魔族でしたし、そんなに大したことでは……」
「何いってんだい!下級だろうがなんだろうが魔族はヤバいんだよ!あたしたちなんか魔法しか取り柄がないから魔法が効かないあいつらは天敵なのさ……」
「なるほど……」
「まったく……300年前のあの坊やと同じだねぇ……でも、それだけの強さがあるんなら結界を破られたのも納得だよ」
メルリアさんは呆れたようにそう言うと、しばらく何かを考え込んでいたがやがて姿勢を正してこちらに向き直った。
「シリウス、シエナ……あんたたちを見込んで頼みがある。結界のことはチャラにしてやるから、ちょっとあたしの依頼を引き受けちゃくんないかい?ほら、ソニアもそこでどうせ盗み聞きしてるんだろ?こっちへおいで」
扉の外に声をかけるとゆっくりと扉が開き、そこには赤面したソニアが立っていた。
「す、すいません……」
「はぁ……あんたもわかりやすい子だねぇ……まぁいいさ。あんたもそこへお座り」
ソニアは申し訳なさそうにトボトボと俺の横にやってきてソファに静かに腰を下ろした。
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