手折られる花

しりうすさん〈しりかぴ工房〉

文字の大きさ
17 / 59

第15話 炬燵

しおりを挟む
ダッフルコートを羽織りマフラーを巻いて、急いで外に出た俺。

遼太がどこに逃げるのかも分からないけど、差し出された手を握り、駆け出すままについて行く。

数日前から降り続けている雪は街を白く染め上げて、街灯に照らされた雪は微かに光を放っている。

家の前の車道は雪で踏み固められていて、黒いアスファルトは一片も見えない。

俺の手を引くダウンジャケットを着た遼太の後ろ姿は何故か楽しそうで、俺の心も浮き立ってきた。

どこに行くのだろう?

何処でもいいけど…。

走った先に赤色のテールランプが点灯している自動車があり、遼太が運転席側のサイドガラスをノックした。ウィンドウが開き、自動車の中から顔を出したのは遼太のお母さんだった。

俺が身支度をしている時に連絡したのか俺の姿を見て「こんばんわ、色々と大変みたいね。」と優しく言われ、遼太にと共に後部座席に座ることになった。

助手席にも誰か乗っており、遼太を小さくした感じの男の子が後ろを振り向き愛想よく「こんばんわ」と言ってきた。

「こんばんわ」と返したが、どうも状況が分からない。

…あれ?遼太の家族の自動車に乗せられている?

逃げるって遼太の家族に保護されること?

隣に座る遼太のジャケットの袖を引っ張ると、いつもの人懐っこい笑顔で言う。


「とりあえず俺んち行こうよ、母さんもいいって言ってるしさ。」


俺の想像していた「逃げる」とは少し違うけど、自分の家には居たくはないのでお言葉に甘えることにした。

雪道の中、自動車に揺られて10数分、暫くぶりに遼太の家に着いた。

道すがらの会話で、クラスメイトとのクリスマスパーティに参加していた遼太の送り迎えを遼太のお母さんが自動車でしていたらしい。その帰りに俺にプレゼントを渡そうと俺の家に寄ったそうだ。

この雪の中、遼太の家から遥か遠くのバイパス通り沿いのファミレスなんてとても徒歩では行けない。送り迎えをしてくれるなんて遼太のお母さんは優しい、でもこれが普通なのかな?ウチの母がおかしいだけで…。

玄関先で「入って」と言われ入ろうと思ったが、今日はクリスマスイブ、遼太の家族団らんに混じっていいのだろうか。

足を止め「迷惑じゃ…」と遼太に言うと「今は父さんもいないし、大丈夫、入ってよ」と、「遼太のお父さんは?」と聞くと「病院に入院してる」と答えた。

…そんな話は一度も聞いたことがなかった。いつもニコニコしているだけで暗い話はしてこない。遼太は遼太で俺とは違う悩みを抱えているのかもしれない。

「寒いから入って、早く入って!」と背中を押された。遼太のお母さんに「ご飯は食べてるの?」と聞かれ「はい」と答えたら、「ウチも外で済ませてきてるからちょうど良かった、ケーキは一緒に食べましょう。」と誘われた。

リビングに通されてクリスマスケーキが出てきた、遼太の弟が無邪気に喜びカラフルな蝋燭に火を灯す。

照明を消した部屋にクリスマスケーキの蝋燭が煌めいて「メリークリスマス!!」と嬉しそうに言い、頬を膨らませた小学生とみられる遼太の弟が吹き消す。

俺の家も昔はこんな時もあったなと少し懐かしくなった。今は殺伐としてるけど…。

ホントいい人達、適当に髪を切られた俺なんかを優しく扱ってくれるし、ケーキまでご馳走になってしまった。

時刻は夜の11時近くになろうとしていて、親切にしてもらったので俺の心もだいぶ落ち着いたので家に帰ろうかと思った。

遼太を突っついて「今日はありがとう、家に帰るよ。」と言ったら、「泊ってけば、いいじゃん。」と返された。

「迷惑になるからいい」と言うと台所にいる遼太のお母さんに「泊めていいよねー」と大声て叫んで「いいわよー」という返事が軽く返ってきて、泊まることになった。

遼太の弟も俺に子犬の様にじゃれてくるし「ゲームしようよ」とか言うから炬燵に入ってテレビゲームしたりして、久々に普通の家庭を堪能してしまった。

いいな、遼太の家は愛に満ちている…。

遼太は優しくて良いヤツなのも頷ける。

さすが、俺がつき合っている男…。

なんか言い回しが変だな、違和感を感じる。

隣に座る遼太は垂れた目を細めて、無邪気にゲームをしている弟を眺めている。

あのまま家にいたら、どうなってたのかな俺は…、最悪なままクリスマスを終わっていただろう。

ここは暖かで気持ちがいい。

リビングのドアが開けられて、客用布団を抱えた遼太のお母さんが「友也君のお布団、どこに敷く?客間でいいかしら」と聞いてきて遼太が「俺の部屋にしてよ」と即答し2階にある遼太の部屋向かうパタパタと階段を登る音。

遼太の部屋にあるはずのSМ小道具の首輪が見つかってないだろうかと少し心配になった。

ぬくぬくと人の家の炬燵で丸くなるなんて、布団まで用意してもらって…。

「迷惑かけて、ごめん。」と俺の横で炬燵に入っている遼太に言うと「全然、オッケー!!」といい笑顔。

炬燵テーブルに頭をのせて俺の方を見ながらしみじみと呟く。


「友也の家行って良かった。友也のお母さんにもある意味感謝したいわ俺。」




…俺んちの鬼ババアに感謝?

どういう意味?

ゲームをしている遼太の弟に「もう、寝るぞ、お前も早く寝ろよっ」と言って俺の背中を叩き席を立つように促した。

俺、遼太の部屋で寝るんだよね?

いやいやいや、、このイイ感じの流れで何かしようなんて思ってないよね。

自室のへ向かう階段を登る遼太に恐る恐る声を掛けた。


「…あのさ、一応聞くけどさ、さすがに今日はなにもしないよね。家族とかいるしさ。」

「クリスマスイブって全国的にエロいことする日じゃないの?」


すごく平然とした顔で言うから、一瞬納得しかかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

処理中です...