召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第113話 ジェット機完成と住民反乱未遂と

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 爆音が響き、スマートな形状の飛行機が上空をフライパスして行く。うん、良い出来の機体だね。第1号の量産型ジェット戦闘機だ。まあ量産型とは言っても、まだ3機しか出来てないので、量産試作機とか量産先行型とか言うべきかも知れないが。

 わたしたちは今、バルゾラ大陸本部基地に併設して造った航空基地にて、そのジェット戦闘機の試験飛行を視察に来てるところだ。幾度もの失敗にもめげずに、技術者たちが頑張って完成させたこの機体は、実際かなりの性能だ。

 これまでジェット機は、実験機とか試作機は何機種か出現してたんだけどさ。量産を前提とした機体が、これほど早く出来上がるとは。と言うか、この機体は以前に元勇者のタケル君がテストしてた、当時の新型戦闘機をジェット化した物なんだよね。

 あの新型機は、前翼型飛行機だったからね。エンジンをジェットに積み替える設計変更も、比較的楽なはずだ。ちなみにあの機体は基本設計はわたしだけれど、かなりの部分で技術者たちが新規の案を盛り込んで、初期とは別物になっている。

 無論、それで何度も墜落したりしてるんだけど、先代の兵器開発局局長みたいに技術者連中が自害するとかは無かった。土妖精ドワーフ族は、神経太いからなあ……。試行錯誤とかが技術の進歩には必要だって、理解している事も大きいけど。

「凄い機体。魔竜軍団の下位竜だと、強化服なしだと太刀打ちできないかも」

「まだマッハは出せないんですよね?」

 アオイとミズホが、感心した様に空を見上げて言う。わたしは頷いた。

「うん、超音速飛行はまだ無理だけどね。ちなみに音速突破のための実験機はもう飛んでるよ。ベルX-1みたいな奴。
 以前わたしが教えた技術をツギハギして、技術者連中がロケット機を造ってるって話はしたよね。それの発展型」

「「ええっ!?」」

 どうしたんだろう。アオイとミズホが目を丸くして驚いてる。

「どうしたんだい?」

「あ、いえ。正直驚いた。つまりその音速突破実験機って、魔王様じゃなく部下の技術者連中が設計したの?」

「ああ、なるほど。うん、そうなんだよ。いや、感慨深いね。ついにそこまで至ったかと思うとさ」

 ちなみに今飛んでるあの機体は、先ごろ単独飛行の許可が出て、候補生から正式なテストパイロットに昇格した、元勇者タケル君が操縦している。相変わらず彼は、給与のかなりの部分を送金している様だ。まあ一時期みたいに自分の生活が成り立たなくなるほどには、送ってない様だけれど。

 そう言や、タケル君が手を出して妊娠させちゃった女の娘たち。もうすぐ臨月だ。交渉の末タケル君は、子供が産まれたらその子供に、ときどき面会できる様にはなったんだけどね。ちょっと不安な事があるんだよね。

 タケル君は、内面はともかく肉体的には今の14~15歳前後から、成長もしなければ老化もしない。寿命はあるのかも知れないが、少なくとも普通に老化する一般人よりはずっと長生きするだろう。……少年の姿のままで。

 そして彼の子供は、普通に成長する。成長しないんなら、母親の胎内でも成長しないはずだからね。彼の子供は普通に成長して、普通に歳をとり、彼の年齢を追い越して下手すると彼より先に死ぬ。母親たちもまた、今はまだタケル君と同年代だが、その内に年老いて彼を置いて死ぬだろう。

 年齢を勇者召喚により固定化された、アオイ、ミズホ、タケル君がどこまで長生きするかは、今の所分からない。だけど少なくともこの3人は、普通の時間とは切り離された存在なんだよなあ。

 いや、わたしは他人ヒトの事言えないけどさ。

「世の中、ままならないなあ……」

「「?」」

 大空をかけるジェット戦闘機を見遣りつつ呟いたわたしに、アオイとミズホは怪訝そうな視線を送って来た。



 さて、わたしたちは司令室に戻って来た。そこで待っていたのは、コンザウ大陸の占領地域についての報告だ。さっき上がって来たばかりの報告書を読んだんだけどさ。

「やれやれ、反乱を計画した者達を大量摘発か……」

「他の普通に暮らしている民衆を巻き込んで、大規模暴動を計画してたから、同情の余地は無いと思う」

「ですね。断固とした措置を取るべきです」

 うん、その意見には賛成だ。と言うか、甘い顔などできない。だけど……。

「だけど、こいつら国境線から離れた都市で暴動を起こして、万一成功して都市を手に入れて立てこもってもさ……。その後どうするつもりだったんだ?」

「旧『タラント連邦』の、ど真ん中だよね。こいつらの指導者層は『蜂起が成功すれば、『聖ゾラ国』『キニス・ゼア王国』から支援が来るに違いない』とか言ってたらしいけど」

「『~に違いない』とかで暴動を起こさないでください、って思うんですけれど」

「だいたいにして、それらの国との間の湾には、我が軍の海軍が遊弋ゆうよくしてるから向こう側から手出しなんて出来ないんだけどさ」

 ちなみに反乱を計画してたのは、『神教』の神官どもだ。信者たちの中でも狂信的な奴らを焚きつけてたみたいだね。ただ、信者の中にも信仰心に陰りが出て来てる者も多い。

「こちらの魔道軍団の間諜スパイが報せて来て発覚したんだけれど……。それとほぼ時を同じくして、暴動側の内部から密告者が出てるね。その密告者、もう『神教』は棄経して『真教』に改宗したいらしいけど」

「『神教』の……。『リューム・ナアド神聖国』の言う事聞いてアーカル大陸に大艦隊出して。そしたら総勢5万4千人が海の藻屑になったんだもの。
 そして『リューム・ナアド神聖国』は、それに対して『必要な犠牲であった』とか『この苦境は神が与えた試練だ』とか『必ずや魔王には正義の鉄槌を』とか言うばかりって報告が。何の補填も補償もしないんだもの」

「あの艦隊決戦での大量の犠牲者は、こちらがコンザウ大陸占領地の統治をする上で、障害になってますけど……。民の悪感情を買うとかで。
 でも、『リューム・ナアド神聖国』と『神教』に対しても悪感情は向いてるんですね。ざまみろです」

「まあ、それでも千年以上は確実に歴史のある宗教だ。その民への影響を完全に払拭するのは不可能だろうな。アーロン・アボット法皇の手の者が頑張って『真教』を布教して、少しずつ勢力範囲を乗っ取ってるけれど」

 アーロン法皇、頑張ってるんだよな。それに『神教』と違って、お布施の強要とかしないからね。魔物との共存共栄を説いてるのには、ちょっと民の側からすれば苦悩する部分もあるんだろうが。でも徐々に、改宗者は増えていると聞く。ちなみに『真教』を、『神教』側では邪教認定している。さもありなん。

 アオイがコンザウ大陸南岸の地図を見ながら言う。

「他の国々だった領域では、同じような動きは無いの?」

「他の場所では、まだ芽のうちにソレを潰す事に成功してるね。蜂起直前まで行ったのは、旧『タラント連邦』の件だけだよ。
 やはり食糧支援が物を言ってるね。なんだかんだ言っても、『リューム・ナアド神聖国』の周辺国への扱いは酷かったから。食糧支援とインフラ整備、経済の再建が我々主導で行われているんだ。
 今、魔王軍……『JOKER剣魔国』が手を引けば、たちまち戦前の貧困状態に戻ってしまうのは目に見えている」

「それなら無駄に暴発するよりも、自分たちの生活維持を選択する方を選ぶのが、普通ですね」

 その通りだ。飯を食わせ、着る物や住処を与える。衣食住の保証がしっかりしていれば、そうそう反乱とか起こさないだろう。例外は宗教とか社会思想イデオロギーがかったトンデモ連中だ。今回の反乱未遂連中は、そんな奴らだな。

 まあ、もっともわが軍の間諜スパイや工作員、そして奴らに付いて行けなかった内部の裏切り者の働きで、反乱は未遂に終わったんだけどさ。いや、捜査の手が及ばずとも、奴らが予定していたほどの大規模暴動になったかどうかすら怪しいんだが。

 だって仮に都市をとしたとして、その都市にある食料を食い尽せば飢えるだけだ。各都市への備蓄量は、実はたいしたこと無い。食料を始めとした物資が尽きないのは、我々がピストン輸送してるからだ。民の中でも、わかってる奴はわかってる事なんだが。

「まあ何にせよ、事前に摘発出来て良かったよ。」

「こいつらは全員、表向き処刑?」

「うん。そして低位から中位ぐらいの改造人間にして、脳改造だね。これで仮称改造人間兵団も、随分と規模が大きくなるよ。正式名称、さっさと決めないとなあ……」

 それと、仮称改造人間兵団を仮称改造人間軍団にする際の、軍団長になる最高位改造人間の設計も詰めなきゃなあ。要はミズホの事なんだけどさ。更にそれに前後して、アオイの改造人間化プランも進めないと。

 2人の改造は、他人には任せられない。頑張らなきゃな。
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