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第二章 その魂、奮い立つ
第74話 魂が奮っている
しおりを挟むシュヴェルタルの討伐は予想だにつかない展開へ移り、撤退することになった。
あの後、洞窟から脱出した俺達は無事ココル村へ戻れたが……生還を素直に喜べる状況じゃなかった。
特に様子が変わってしまったのは、テレサだった。
戻った後の彼女は、ずっと上の空で返答もままならず。常に俯きがちで優しい目がいつもの元気を持っていない。
原因は既に判明しているのだが……あんな事、誰が起こると分かるものか。
とても活動できる状態ではなく、暫くは安静にしておく必要があった。
といったわけで、パーティは活動休止中。カルドは姿を消し、何処かでほっつき歩いている。テレサの精神が安定してない時に「一人になりたい」と薄情なことを言いやがった。
あいつの自分勝手さは今に始まったものではないが、少しくらい心配してほしい。
ちなみに俺はというと……。
「ルイゼン殿の最期は辛いものでした」
テレサの父親のことが気になって、村長の家で話を聞かせてもらった。
最初は渋った村長。喋った内容をテレサに言ってはならないのを条件に父親のことを話してくれた。
大事な人の生死は遺族にとっちゃキツいもの。父親の死を話さなかったのは優しさからだ。
それが……テレサの母親の病死の遠因と考えてしまえば、なおさら慎重になる。
父親ルイゼンは村の安全を守る為、討伐に行くことがあった。
その日も、いつものモンスター討伐に向かったのだが……何があったのか深い怪我を負って戻ってきたらしい。
傷は襲われたもので、モンスターに不意を突かれたのは簡単に推測できる。
容体はかなり酷く、治療もかなわず当日中に失血死で亡くなったそうだ。
話は終わり、テレサの家へ戻る。活気の無い足取りで歩いている間、納得のいかない思考がぐるぐる回っていた。
頭の中は当然、さっき聞いた話の中心人物の事だ。
「なんで、こうなっちまったんだよ……」
シュヴェルタルが、テレサの父親……。
こんな形で再会とは……あれが父親じゃないと思えばどんなに楽な事か。
だけど今さら別の誰かとは考え難いよな。名前をはっきりと喋ってたし、テレサに気づいて苦しんでたし。
どう考えてもそれ一択に行き着く。だってテレサの父親は剣の扱いが上手いって話を聞いている。同一の人物だと考えるのに辻褄が会わない点は無かった。
アレが元人間か。テレサの父親がどんな姿だったかは知らんが、かけ離れているのだけは分かる。それがロギニの手でさらに酷いことに……。
本当にヤツが父親だとして、強い疑問が主張する。
彼は何故モンスターとなったのか?
一体どうやって? 人間が、死人がモンスターになる可能性はあり得るのか? そうする方法は?
……全然分からん。真相はロギニのみぞ知るってところか。
『──無料じゃないんだぜ。モンスターを用意すんのは』
あの時ロギニはそう答え、けどその肝心な部分を言おうとしなかった。
敢えて教えないのなら自分で考えるまでだが、答えに繋がる材料が少なすぎる。繋げるには、テレサの父親がモンスターになった原因を考えるより、まず先に解かなくてはいけない謎がある。
そもそもヤツらは、モンスターとは何なのか──?
モンスターは、ゲームやアニメなら自然に発生する敵性生物だ。ざっくりではあるが。
エネミーではあるけど、動物の一種でもある。
しかし、この世界は違う。トールキンに生息するモンスターは生息する生物達とは明確に異なっていて、その行動には他種族への敵意があり、人や家畜、自然動物を襲う獰猛さを持っている。
これまでに遭遇したモンスターは恐ろしい外見をもった異形であったけど、何かの動物が元になっている。敵意の強い、系統の大きく違う生物かと思ったが、シュヴェルタルの存在と正体を知って考えが変わった。
おそらくモンスターには、全て共通する何かがある。俺達とは違う何かが。
普通の生物とモンスターとの違いがあるとすれば……発生する過程。そこを知れば、シュヴェルタルがいかに誕生したかが解るはずだ。
謎を解くには……確かめてみるか? 父親の遺体を墓から掘り起こして。
いや、それは流石に良くないか。亡くなった人の遺体を掘り返すなんて罰当たりの行為だ。掘り起こしてるところを見られてしまったら、テレサや村人達になんて軽蔑されるか。
でもな、うむ……別の方法で確かめる手段も無いし。
「う~。あー、くそっ」
相反する選択肢に煮え切らず、髪をくしゃくしゃに掻き乱す。そこまでやって、ようやく本心が決まった。
やっぱり実行するしかねえ。テレサの父さんの墓を掘って確かめてみなきゃ。
百聞も推理も真実に勝るものはない。もしシュヴェルタルがテレサの父親なら、遺体は盗まれてるはず。墓から持ち去られた後にモンスターにされてしまったんだろう。
非難されてもいい。無くなってるかどうか、墓場に行って掘ってみよう。
「……あ」
いつか村長に案内してもらった墓場に行くと、人が居た。
誰か墓参りしているのだろうが、もはや人前で掘っても構わないと進む……が、自分の足は少女の姿を見た途端に止まってしまった。
そこに居たのはテレサだ。付き添いにレトを追加して。
彼女は両親の墓の前に立ち、ずっと立ち尽くしている。ただ墓を見つめ静かに佇む背中は何を思っているのか。
どう声を掛けてやればいいか迷ってるうちに、近付く足音にテレサが気付き振り返った。
……目はまだ死んだままだ。
「シンジさん……」
「ここに来てたのか」
「どうしても気になって……シンジさんはどうしてここに?」
「俺もそんなとこだ」
墓を掘り起こすのを打ち明けようとしたが、傷心のテレサを労ってあげたい気持ちが強く、実行の意思が薄れてしまった。
今できる事は……傍に居てやるだけ。慰めてやれるはずなのに、割れかけのガラスのようなテレサに対して行動に移せなくて情けなく思う。
情けないと言えば、シュヴェルタルから逃げた時もテレサに何もしてやれずに連れて帰ったしまった件もある。
あの時はああするしかなかったのだが、それでもテレサには負い目を感じてしまう。
「その、なんだ……あの時は本当に悪いと思ってる。本当にごめん」
「謝らなくていいんです。あの時はシンジさん達の判断が正しいですから。謝るべきなのは私です」
済んだことを赦し、テレサはもう一度両親の眠る墓標を見つめる。
無言の彼女が何を考えてるのかは推し量れない。ただ隣に立って静寂に身を浸す。
「……お父さんの事、よく覚えていないんです」
言の葉に乗せたのは、自身の父の事だった。
話によれば、父親が死んだのは物心が付く前。それほど小さい頃に亡くなったのだから覚えていないはずだ。
家族の記憶に乏しいテレサが、シュヴェルタルを自分の父と気付けたのは……。
「でも私とお母さんの名前を呼んで、分かっちゃったんです。あの人はお父さんだって。そうでもなければ、このペンダントを見て苦しむはずがないんです」
「そうか、だから……」
あの時、テレサを殺そうとしたシュヴェルタルは首飾りの存在に気付き見つめていた。
ペンダントが切っ掛けだったんだ。苦しみ始めたのは。そうだとすれば、テレサの勘は合っている。
この首飾りで正気を取り戻した上、目の前に居た女の子が自分の娘だと分かったって事は……おおよそ自分から娘に贈ったもの。小さい愛娘への家族愛の証明なんだ、このペンダントは。
「やはりアイツはテレサの父さんで間違いないんだな?」
「はい。ですけど、お父さんがどうしてモンスターに……」
頷くも、確信を持つ程に疑問は強くなる。
何がどうなってるのか、テレサにも分からないだろうな。死んだはずの父親があんな姿になってしまって。
「分からない。分からないけど……」
シュヴェルタルがモンスターに変貌した理由を、俺達は知らない。だけど──
「お父さんが苦しそうにしてて、痛むんです……っ」
戦慄き、途切れ途切れに啜り泣く声が溢れた。
「ひどい……ひどいです……」
……泣いている。血の繋がりを持つ者の為に。
悲しいんだ、悔しいんだ。心が痛くて張り裂けそうなんだ。
見かねたレトが、脚に自分の身体を擦り寄せる。しかし、それだけで緩和するのは難しい。
「ううぅ……う……っ」
耳を撫でる涙声は今にもテレサが崩れそうで、心をひどくかき乱す。
俺は……何をしてやれるのか。どうすればテレサの心の傷を癒やし、悲しみを取り除いてやれるのか。
シュヴェルタルから逃げて、何もしてやれなくて、これからどうする事も考えついていない。無力な自分を呪う。
──本当に、何もしないでいいのか。
自分の中の、心の一つがそう呼びかける。小さかったそれは波紋するように大きくなる。
そう……だよな。なに後ろ向きに考えてんだ。
できないのは諦めていいことじゃない。
このまま放っておくのは凄く嫌だ。テレサが悲しむの見過ごすことはもっと辛い。
「──戻してみせるよ」
咄嗟に言った言葉は、泣いているテレサを振りむかせる力があった。
「へ……?」
涙混じりに見つめたテレサはまだ自分の耳を疑っているようで、俺は決めたことをもう一度言葉にする。
「戻してみせると言ったんだ。テレサの親父さんを元の姿にな」
「でも……」
「俺を信じてくれ」
震えた肩に手を置いて、面と向かって伝える。俺の顔を映した瞳は少しだけ光を取り戻したようだった。
しかし、言うは容易い。口からのでまかせは、その場凌ぎの嘘と同等だ。
自分が言った事の本気さを示すには……そうだ、アレがあるじゃないか。
「手を出してくれないか?」
と頼む。テレサは不思議そうにしながらも自分の手を出した。
差し出された手を迎え、そして──
自分の指をテレサの指に絡めた。
息が一つ溢れる。
これは初めて会った日、テレサが教えてくれた約束の証明のやり方。脳裏の片隅に残っていたのを思い出してやってみた。
前回はまた会えることを約束した。その約束は実現した。
偶然なのかもしれないけど、これには約束を叶える力があると俺は信じている。
「約束だ。お前の父さんを元に戻してやる。絶対に、絶対に」
誓いの証明に、テレサは静かに見上げる。二つの水晶は厚く湿り、水面が揺らいでいた。
畳み掛けるように、さらに自分の誓言を頑なものにする。
「なんたって、俺はオリジンだからな」
「うぅ、あぁ…………ああぁぁぁぁ……!!」
創世主の名をかけた絶対の約束に、テレサは大粒の涙を流す。
一人の少女の、ぼろぼろに泣き崩れる声が、死者の眠る地に響く。
テレサは胸の内に秘めたものを吐露し、俺の胸に身を預けて泣きじゃくった。
「大丈夫だからな? テレサを悲しませることなんざ俺が何とかしてやっから」
払拭するように、頭を撫でてやる。せっかくの綺麗な顔が台無しだ。
でも、これほど泣くテレサは初めて見た。
いつも優しくて、家族と死に別れても健気に明るくて、困難に立ち向かう勇気を持っているテレサが今は脆く弱々しく見える。
愛する家族をあんな醜い姿にされて、悲しまずに耐えるのが無理ってものだ。
少しでも悲しみを取り除くように、砕けそうな心を守るようにそっと抱き締めた。
テレサの涙を目に灼き付けて、泣く声を胸に受け止めて、強く覚えたものがある。
それは──
魂が奮っている。
それからテレサを連れて家に戻って……彼女をベッドに寝かせることにした。
「ごめんなさい。迷惑を掛けてしまって」
「気にすんなよ。これぐらい何とも思わねえよ。いくらでも掛けてもいいくらいだ」
なんて冗談を言ってると、テレサは微笑む。枯れかけの花のような彼女だが、まだそこまでの元気が残って安心した。
「あの、手を握ってくれませんか?」
「手を……?」
「眠るまででいいんです。眠るまでですから……」
「……わかった」
断る理由はなく、彼女の頼みを受け入れる。女の子の手を好きなだけ触っていられる、というキショい考えは一縷も抱かずに。
ベッドに腰掛け、握ってあげる。テレサの手は小刻みに震えていた。
「これでいいか?」
「はい。シンジさんの手は温かくていいですね」
「え? あっ、お、おおぅっ。お世辞でもそう言われるのはちょっと恥ずかしいというか嬉しいというか。手ぇ湿ってて気持ち悪いとかない?」
「気持ち悪くありませんし、お世辞ではありませんよ」
少し力を抜いても離そうとしてくれなかったのが証拠で嬉しいけど、それくらい他人の温もりを感じたかったのだと察する。
「……本当に大丈夫なのか?」
「心配ありませんよ。そのうちに自然と止まりますから」
「そうか……」
心配無いとは言うが、天井を見る目はまだ好調という程でもなかった。
「……テレサのお母さんってどんな人だったんだ?」
と何気なく話題を振る。今に話すべき事ではないかもしれんが、テレサは不快なく「そうですね……」と過去を遡る。
「優しくて……身体が弱くてお家の中で過ごすことが多くて、でも元気に振る舞っていました。無理をしてほしくはなかったですけど、私を気遣ってくれたことは感謝しています」
昔を懐かしむその表情は愛おしみがあり、母親に大切にされたことが分かる。
娘思いな母親だな。自分のことより娘を思いやって……こんな健気な子に育ったと思うと、苦労が良い方向に咲いたんだなって感心する。
その人はどんな見た目だったんだろう? 聞いたところ美しい外見で、テレサはそれを引き継いでると聞いたからよく似ているのか?
似ているのなら、テレサを大人の姿にした感じか。
優しい性格と慈愛に満ちた眼差しを持っていて、胸も大きかったのかな……って、なに変なこと想像してんだ。
「他には?」
「それで……時々、家の中で死んでいる振りをしていました」
「え?」
「イタズラが好きなんです。何度も驚かされて……その度に叱って、でも止めようとしなくて」
「あー……」
茶目っ気なところがあるんだな。
でもお母さん、身体弱いのに死んだフリは冗談キツいっすよ。
「シンジさんは……家族は元気でいらっしゃいますか?」
「え? あ、ああ。現実世界で……たぶん元気に過ごしてる」
「会っていないのですか?」
「連絡は一応取ってるけど、面を合わせてはないなあ」
一人で生活を始めたきり、家族と直接会うことはなかった。
どうやらテレサはその事をよく思わなかったらしい。
「いけませんよ。時には会ってあげないと」
「そんなもんかあ?」
「ええ……ですから、いつか元気な姿を見せてください。シンジさんの家族は、まだ生きているのですから」
なんとも重い言葉だ。テレサが言うのだから重い。
自分の都合で離れた俺とは違い、彼女は幼い頃に死に別れたのだから。
会話はそのうちに途切れ、テレサはようやく眠りについた。
レトに睡眠中の見張りを頼み、外へ出る。薄いオレンジ色に染まってきた外界へ出た時、そこには来客者が立っていた。
「カルド……」
腕を組んで立ち、変わらず冷たい目線を放っている。カルドもテレサを心配してやって来たのか?
「テレーゼの容態は?」
「今のところは大丈夫。怪我も無いしな……」
「そうか。ならいい。それで……アレは本当にテレーゼの父親なのか?」
「ああ、間違いなくな。テレサが確信してる。モンスターとやらは死人でもなれるらしい」
まだその辺りの事ははっきりとしてないんだけど、もう少しで解りそうな気がする。
だが俺達に圧し掛かる問題は単純なものじゃなくて……。
「これからどうする? 猶予は無いのだろう?」
「まあ、辛い状況だな……」
「お前にはやれるのか?」
「なんの事だよ?」
「シュヴェルタルがテレサの親だとして……どうする? これまでどおり討つのか?」
「討たない。俺はテレサと約束したんだ。元に戻すって」
「元に戻す? そんな事が可能なのか? その方法は?」
「それはまだ……見つかっていない」
墓場の時はテレサを助けたくて戻すと言ったが、方法はまだ見つかっていない。
これまでモンスターは討つことしか手段がなかった。その結果が誰かを守ることに繋がったからだが、元の状態に戻すとなると困窮する。その選択を選ぶこともなければ、そうする手段も無いからだ。
せめて、そういう効果を発するアイテムなどがあればいいのだが、そう都合の良いことは直ぐに起きてはくれない。
静かな溜息が一つ。怒ってるような呆れているようなそれはカルドのもので、甘さを指摘するものだった。
「手掛かりもないのに、お前に何ができると言うんだ」
「なんだと……?」
「二回も言わせるな。解決する術が無いままで事を動かせるなどと甘い考えを持つんじゃない」
厳しい現実が刺さり、苦い反応しか返せない。
ではカルドはこれからどうするのか訊こうとした先、残酷なことを宣告した。
「できないのなら──オレが討つ」
「は? 討つって……テレサの親父を殺すのかよ!?」
「そうだ」
迷いも感情も排し、カルドは冷たく肯定する。ますます信じられない。
「本気か!? テレサの家族を殺すとかおかしいだろ?」
「おかしくはない。アレはもう死人で、今はモンスターだろう?」
「違うっ!! アイツは……!」
「どちらにしても討つ相手だ。オレ達はアレを討たなきゃならない。もう時間は無いんだぞ」
時間……タイムリミットか。
ロザリーヌが課した期限は近くまで来ている。今ここで渋っていたら、何も果たせずに終わってしまう。それはテレサにとって良くない結果だ。
最悪の選択肢は回避したい……けど、シュヴェルタルをどうにか救いたいんだ。
「どうしてお前はそんな事が平気で言えるんだ?」
「……救いようが無い狂人に施せる手は一つしかなかろう。殺すことも救いになる」
救いになる? 命を奪うことが?
「誰にとってだよ、それは?」
「……」
「言えよっ!!」
答えない。踵を返して拒否する。
非常にドライな翻りは、会話を打ち切る合図でもあった。
「長く話してしまったな。ともかく早いうちに考えを纏めろ。アレが誰かを殺すまでにな」
「あっ、おい……っ!」
制止の声を無視して、カルドは俺の前から離れていった。
歩み去る背中を追えなかったのは、カルドの言うことにも一理あったからだ。
討つか、討たないか。
その二つの選択肢は厳しく、単純に決めてはいけないもの。前者を選べばテレサだけが深く傷付き、後者を選べばテレサは助けられず、また思わぬ被害が発生する。
どちらも正解であり、またどちらも間違っている。
カルドは前者を選んだ。テレサが傷付くだけで大事にならなくて済むほうが良いと信じたからだ。
それは正しく、また彼女への酷い仕打ちだ。
じゃあ、自分はどちらを選べばいい──?
「俺は……俺は……」
甘いのかもしれない。人として、討伐者として。
でも、それでも……テレサの為に尽くしたい。
あの涙を、悲しむ心を見たから。
シュヴェルタルは……テレサの父は討てない。いや、討たない。どうにかして元に戻す。
その方法はまだ見つかっていないけど、やるしかないんだ。いつかは……。
与えられている猶予は少ない。シュヴェルタルをどうにか戻すには、解決の方法を探すのを含めて充分な時間が必要だ。
だとすれば──
「あそこに行ってみるか」
ある方角を見つめる。その方向には村の景観には似合わない、所有者の性格と趣味の顕れた建物が小さく佇んでいた。
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