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半人半神性

入学2

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 人生最大の苦難を乗り越えて、やって来ましたクラス分け。早速入学式が行われた講堂のすぐ外に置かれている掲示板をお姉さまと見る。まあ50音順でクラス分けされてるみたいだから最後の掲示板だろう。そしてそれはつまりお姉さまと同じクラスという事。なんたってお姉さまも四葉ですからね。よ!つ!ば!

「あれ? 無いですねお姉さま」

「何がかしら?」

「僕達の名前です」

 だが一番後ろの掲示板にはどんなに目を凝らしても四葉の字が無い。ひょっとしてお姉さまが桔梗の苗字でクラス分けされているのかと危惧したが、俺の名前までないのはおかしい。……まさかやっぱりゼロ点だから入学できていない!? いや、それなら新入生代表の挨拶をやらされるわけがない。どうなっとんじゃ?

「ああ、誰か知り合いの名前でも探してるのかと思ったら知らなかったのね。こっちよ」

「え?」

 そうお姉さまが言うと、手を繋いだままどんどん50音順の掲示板を遡って行く。

「おお裕太と同じクラスか!」
「美玖ちゃんとは違うかあ」
「あの美人はどこだろ?」
「あれ? ひょっとして昔のお隣さん?」
「どうしよう初恋の人に……」

 なんか青春している人達をかき分けながら辿り着いたのはあ行から始まる掲示板。の更に先。

「ここよ」

「え?」

 え?

 お姉さまが指さした先には、やたらと古風な名前が多い掲示板が存在していた。

 確かにそこには四葉小夜子と四葉貴明の名前が。

 え?

 ままままままさか!?

「ほぼ即戦力扱い、場合によっては怪異達との戦いに招集されることだってある推薦組が、他の一般入試組とカリキュラムが同じわけないでしょ。言い方は悪いけれど、最初の力の使い方とかコントロールみたいな通常授業は殆ど無駄なのよ」

 そそそそそれはつまり私めは入試でゼロ点だって知ってる皆さんの中に混じって学園生活を送ると!? か、肩身狭ええええええ! 段ボールの中だってまだ余裕あるぞ! しかも主席合格として!

 終わったな俺の学園生活……。死因は急性胃潰瘍が原因で、中身のタールを漏らしながらの爆発四散だ。後でいつ爆発してもいいように採石場を探しとこ……。それとごめんなさい採石場の職員さん達。多分向こう1万年位は汚染されて人が入れない場所になります。下手をすれば地球が滅ぶその日までかもしれませんが。

「さあ行きましょうか。ね。あ、な、た」

「はいいいい!」

 ふぉおおおおおおおお! やったるでえええええ!

 ◆

 しーん。

 やべえよやべえよ。空気が厳か過ぎる。どうしたんですか試験の時はナンパしてたお兄さん。ああ分かりますよ。親御さん達皆、これぞお偉いさんとか、ザ・名家の方達ばっかりですもんね。何かしらのドンみたいな人だっていますし、中には世界最悪の人型呪いだっていますもの。今そいつはハンカチ顔に当てて感動してますが。

 ああ気にしないでください皆さん。俺の入学式と卒業式はいつもこうなんです。でもハンカチで顔が見えない方が不幸中の幸いかもしれません。ひょっとしたら馬鹿親父じゃなくて邪神バージョンの方を知っている方がいれば、今頃阿鼻叫喚の地獄絵図になっていた事でしょう。お姉さまの実家を思い出したらかなり可能性が高いと思います。いやあ、お袋の方はあんまり知られてなくてよかった。割と珍しい苗字な方だから、結びつけられるのは簡単だ。まあ学園長はそれに失敗したようだが。

「ふふ。注目されちゃってるわね私達。ラブラブだからかしら」

「お姉さま」

 流石はお姉さま。そんな空気なんか知らないとばかりに僕に話しかけてきます。はい自分もお姉さまとラブラブで幸せの絶頂です。でも注目されている理由は違うと思います。

 僕の邪神センサーに入って来る情報によると、僕達がラブラブ、つまりお姉さまの苗字が桔梗から四葉に代わっているのは2番目の理由なんです。

 1番の理由は何を隠そう、この四葉貴明がなぜいるかという事だと思います。はいそうですよね皆さん。測定値はゼロ。模擬戦にはボロ負け。家の名前は聞いた事が無い。そんな名家サロンの中に迷い込んだ異物ですもんね。気になるのは当然だと思います。僕も気になっています。

「ああ、私この人と結婚したの。もう四葉小夜子だから桔梗と呼ばないでね」

 お姉さまが爆弾をぶっこんだあああああ! 厳かだった教室がドヨってなってしまった! 親御さん達もだ! だがこの男貴明、お姉さまのご期待に応えて見せます!

「四葉小夜子の夫、四葉貴明と申します。よろしくお願いします」

 またドヨっとしたああ! だが半分くらいは親父が鼻をかむ音の様な気もする。勘弁してほしい。ね? お姉さま。ああ!? お姉さまそんな笑顔で見つめられると僕はあああ!

「皆揃っているか?」

 そんな時教室に入って来たナイスミドル。てめえ学園長この野郎! クラス分けどうなっとんじゃ! お姉さまと一緒なのは感謝してるがな、ありがとよ! それが無かったらてめえは今頃尿路結石の呪いじゃ! あ、あとすいません、1人お腹と頭が痛くなってトイレにいると思います。まあちょっと前に許してやったのでそろそろ、あ、来ました来ました。

 それと言いにくいんですが、主役は僕達新入生なので、後ろにいる保護者の皆さんを凝視するのはどうかと思います。そんな目を離した瞬間爆発する危険物を見るような目で見なくてもいいじゃないですか。これから暫くそれよりかはマシかなあ? ってやつが学園に通うんすから。あ、すいません嘘つきました。その爆発物に単純な爆発力ではかなり劣りますが、人間とのハーフなのがこう、噛み合いがよかったみたいで、親父とはまた違う厄さを持ってましてですねはい。厄さでは劣っていないです。いやあ神愛がよかったってね? ははは。つまんなかったですかね?

「先ほども紹介したが、この伊能学園学園長の竹崎重吾だ。唐突だがこの推薦組、A組の担当を務める事になった」

 再びクラスがざわざわとし始める。まあ分からんでもない。普通学園長がクラス担任ってあるのか? 心当たりないですねえ。

「あまり大声では言えないが、少々君達は優秀で特別だからな。学園長としてどうしても外せないとき以外は、出来るだけ直接関わりたいのだ。それだけ君達には期待しているから、ぜひ頑張ってくれたまえ」

 お前は頼むから頑張るなよと聞こえたのは幻聴だったかな?

 いやそれにしても、やっぱり皆さん特別だったんですねえ。誇らしげな人やチラッとお姉さまを見ている人、当然だって顔してる人を見るとそう感じちゃいます。いよ! 流石名家に成り上がり! あ、成り上がりはマズい。急成長! よし。心の中で皆さんをよいしょするイメージトレーニングを積んでおこう。そうやって名家サロンに食い込むのだ。

「それでは今日は集合写真を撮って終わりだ。細々したことは明日からにしよう。皆は家でお祝いをしないといけないからな」

 集合写真はお姉さまと手を繋いででした。でへ、でへへ。

















 ◆


「お時間を取らせて申し訳ありません」

「いいよいいよ! 竹崎君には入学のことで骨を折って貰ったからね! 皆がお昼を食べ終わる頃に終わったらいいさ! それにお祝いの本番は夕飯だしね!」

 予め周囲の者に絶対に近づくなと念を押して、竹崎は自分の執務室に恐るべき邪神を招いていた。服の下には自分が全力の霊力を込めて作成した数多の霊符を、まるで鎧の様に貼り付けながら。

「それで何を聞きたいんだい?」

「一つだけ、息子さんの扱いです」

 主席として新入生代表の挨拶も行わせ、最優秀の者の集団A組に所属させた。他に何かするべきことはないかと竹崎は暗に問う。もし貴明がこの場に居れば竹崎の口を塞いでいただろう。

「いやあ、そんなこと気にしなくていいよ! 都会で暮らせたらそれでいいって息子だしね! いや、今は小夜子ちゃんも一緒にか! いやあ小夜子ちゃんには本当に頭が上がらないね! まさか息子にもう春が来るとは! ははは!」

「それなら、普通の学生として扱っていいと?」

 桔梗小夜子との間に何が起こったのかも知りたくはあったが、一番重要な事を聞ければこの邪神と長い間一緒にいるのは危険だと、竹崎は本題だけ終わらせようとする。

「ああうん……」

「……なにかありましたか?」

 まるで先程の喜びはなかったかのように、急に声のトーンを落とした邪神に問う竹崎。

「うーんどうしようかなあ。言ったら人のプライバシーを勝手に言うなって怒られそうだしなあ……」

「……」

 何か思い悩んでいる邪神だが、促すような真似は決してできない。

「でも竹崎君は教師だし一応知っとく必要があるよなあ……」

 じわりじわりと汗をかきながら、それでも竹崎は口を開かない。

「うん伝えとくか。今から言うのは息子のプライバシーだから、他言すると呪うからね」

「……はい」

 脅しなのだろう。必死に意識を固めて話を聞こうとする。

「なんというか、呪いを行う人って言う種族と相性が良かったみたいでね。ああ、後それと厳密には神でないってこともあるか。貴明は俺と違って緩いんだよね」

「……緩い?」

「そう緩い。うーん。あ、敷居が低い? 上手く言えないけどそんな感じ」

「……」

「ごめん上手く言えないや。うーん。神って言うのはある程度ルールに則ってたり縛られたりするでしょ?」

「はい」

「俺の調査書見たら分かるだろうけど、それは俺も例外じゃない。恨みはきちんとその対象に送り込んでる訳。まあ人の姿を崩したりとか、色々裏技ですり抜けられるんだけど、自分からしようと思ったら手順がいるんだよね」

「……まさか」

「うん。貴明はね」





















 呪いたい相手を自由に呪えるのさ
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