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蛇
蛇よ
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【何人も動くこと叶わず】!!
「拘束魔法陣を起動せよ!」
蛇に絡みつく緋色の鎖。
それを確認した司令官は拘束魔法陣の起動を命令し、陣の中が光だす。
「よし!魔石をき…なんだ?」
続いて爆発魔石の起爆を命じようとしたときであった。緋色の鎖も、輝いていた陣も消え失せてしまったのだ。
「なんだ!?」 「何があった!」 「魔法が消えたぞ!」 「やはりあの大きさの物は…」 「いや、そうだとしても遺物の方も消えるのはおかしい」
「落ち着け!評議魔導師様今のは?」
「分からん…」
「そうですか…」
2人の評議魔導師たちにとっても予想外の出来事であったため、司令官は次の手をどうするかと悩み始める。
「おい動いたぞ!」
周囲のざわめきが酷くなる。
見ると、確かに石化していた蛇が動き始めていた。そして、段々と岩が剥がれ落ちていく。
「やはり脱皮近いのか?」
「だとすると成長を…」
石化した大蛇がどうなっているかと各々考えていたが、この大きさに関わらず、今だに脱皮して成長しているという悪夢に評議魔導師たちは絶望する。
「いかん!縄が千切れている!総員魔法攻撃開始!」
一刻も猶予がないと見た司令官は魔法による攻撃を命令する。
【炎よ 我が敵を 討て】!!
呆然としていた魔法使い達であったが、それぞれ得意な攻撃魔法を発射。少し遅れて騎士の国側からも飛竜の火炎弾や特級による魔法攻撃が開始された。
同時に、着弾した魔法により魔石も爆発するはずであったが、そのような気配がなかった。というより、魔法がそもそも着弾しなかったのだ。
「なんだ!?魔法が消えたぞ!」
そうこうしているうちに、縄が全てはじけ飛び、岩の様な抜け殻から出て来た大蛇が空に向かって背を伸ばし辺りを見渡した。無機質な目であったが…どこか笑っているようにも見えた。
「両目ともあるぞ!」
大蛇の目を嫌な目であると思っていた兵士があることに気が付く。勇者トマによって失われたはずの両目があったのだ。脱皮することによってある程度の再生力も大蛇は有していた。
「構わん撃ち続けろ!」
【雷よ 我が敵を 討て】!!
「ダメです!消えてしまいます!」
昼前にも関わらず、辺り一帯は様々な魔法攻撃によって照らし出されていく。
しかし、効果がない。いや、そもそも掻き消えていく。
「おい、なんか大蛇の奴大ききくなってないか?」
魔法が掻き消えていくことに皆が気を取られていたが、誰かがそう呟く。だが、遅すぎた。
シャラララララララララララ!!!!!
大きさゆえに、爆音の様な音で鳴きながら空にさらに背を伸ばす大蛇。すると、鱗が様々な色に変わり、見る見る魔力が高まり始める。
『魔法障壁を張れ!!伏せろおおおおおおお!!!』
評議魔導師のヴァンが肌に叩きつけられるほどの魔力を感じ、魔法で声を拡散しながら魔法障壁を正面に張る。
ピカリと大蛇が光輝くと、背を伸ばした大蛇から大地へと降り注ぐように魔力の塊が放射された。
ドオ!!!!!!!!
殆ど現象として起動してもいない魔法であったが、効果は圧倒的であった。炎が、雷が、氷が、風が、次々と大蛇から発射される。
「逃げろおお!」 「【魔力よ 我を ま】ぎゃああああ!!」 「伏せろ伏せろ!!!」
「ぐぐぐぐぐ!!?」
全力で魔法によって軍全体を守ろうとしていた評議魔導師たちであったが、次々と突破され、今や己の周辺を守るので精一杯であった。
「こ、これでは…」
ようやく大蛇による攻撃が収まると、そこは死屍累々の地獄であった。
魔法の素養がない者や、あったとしても反応が遅れた者はほとんど死んでしまっていたのだ。
最早軍ではなく、無残な死体の山でしかなかった。
「司令官!無理じゃ!分かった!奴は魔法を吸収して成長しておるのじゃ!」
「そんなことが!?しかしそれでは打倒は!?」
大蛇が何故か再びとぐろを巻きだした隙に話を進める。
「魔法なしであの大きさは人種では無理じゃ!祈りの国に連絡して神々の慈悲を請わねば!エルフとも!」
「そ、そんな…分かりました『全軍撤退!特級、勇者、天馬、飛竜、評議魔導師は最優先!次の準備を整えた時に命を使え!』
「儂は最後まで居るからな!」
2度の敗北を経験したヴァンは、何があっても友軍の完全撤退が終わるまでこの地を離れるつもりはなかった。
恐らくそう言うと思っていた司令官は、ヴァンの後ろに立つもう一人の評議魔導師タルコに目配せする。
【深き 眠りに 落ちよ】
「な、なに……」
突如後ろからの眠りの魔法による不意打ちに、ヴァンは無防備に受けてしまう。
撤退命令により、騒然とし始めた陣地で2人は話を進める。
「ありがとうございます」
「いや、構わん。お主はどうする?」
「司令官としての責務を果たします。幸い、何故か奴は動きを止めています。ひょっとしたら助かるでしょう」
「分かった。武運を」
「ありがとうございます。『撤退急げよ!』」
◆
一方、攻撃開始時の騎士の国陣地にて
「なんだ?魔法が消える?」
「ダレル、おかしいよ」
攻撃命令に従って、自分達も魔法による攻撃を加えるも例外なく消失し、双子のダレルとパオラは困惑していた。しかも彼らは5つの呪文を唱えているにも関わらずだ。
「あー、俺様すっげえ嫌な予感してるんだが」
「やめてくれよブラッド。あんた達みたいな武器ぶん回し組の勘はバカにできないんだよ」
「いや、やっぱりするわ。2人とも来い」
「お、おい!」
「なにすんのよ!デリカシーゼロ!」
誰よりも前で魔物達と戦うブラッドの様な男の勘が、時として命を救う事を知っているダレルがその言葉に嫌がるが、ブラッドはお構いなしに2人の手を掴むと、どんどんと陣の中心に近づいていく。
「ん?特級冒険者?何かあったか?」
「いや、あんたは何があっても守らなきゃいけないからよお」
「どういうことだ?」
「おいブラッド」
「もー最悪」
着いた先は、軍司令部の司令官の所であった。話をしている間にも、しきりにブラッドは大蛇の方を気にしていた。
「そこにいる2人は高名な双子の魔法使いだろう?出来れば攻撃!!?」
「あんたら全員、俺様と双子の後ろにいろ!!魔法障壁を張れ!」
シャラララララララララララ!!!!!
叫び声を上げ、様々な色に光りだした大蛇に気を取られた司令官であったが、同じくそれを見たブラッドは司令官の服を掴んで無理やり後ろに移動させながら、司令部にいた全員に大声を出す。
「なにか特別な防御手段は!?」
「な、ない!」
「双子!全力だ!『全員防御手段を使え!無理なら伏せろ!!』」
「ブラッド!?」
「来るぞ!【俺様は動かん!絶対に!】」
ブラッドは魔法とは違う力ある言葉を叫び、続いて危険を察知した双子と、司令部にいた魔法を使える者が魔法障壁を張る。
光が溢れ、様々な魔法が蛇より発射された。
「んぎぎぎ、双子!?余裕は!?」
「この辺なら大丈夫だ!だがこれ以上は広げられない!」
「ならいい!命令出す奴が無事なら後は何とかなる!多分!」
「私は嫌だけど、今のあんたならそこらの娘は引っ掛けられるわよ!」
「帰ったらそうするぜ!」
真正面から魔力の奔流を耐えて、出来るだけ魔法障壁の負担を減らしているブラッドは、その言葉に安堵する。
攻撃するにしろ逃げるにしろ、指示を出す者が居ないとマズいと考えていたのだ。
「くそったれ!」
何とか防いだブラッド達であったが、他の場所は魔法の国側と同じく地獄であった。
「勇者と特級よ!意見を聞かせてくれ!お前達だけで奴を討てるか!?」
「勝算はほぼありません!撤退を進言します!」
「逃げの一択!エドガーとカークを呼ばなきゃどうしようもねえ!」
「わかった!!」
魔法も効かず、あの嵐の様な攻撃を掻い潜って接近するのも不可能と判断した、司令部にいた勇者とブラッドは撤退を進言する。
『全軍撤退!特級、勇者、天馬、飛竜、評議魔導師は最優先!次の準備を整えた時に命を使え!』
魔法の国からも、拡声された大声が聞こえてくる。
天馬や飛竜など若干指揮権を侵しているが、司令官に異論は全くなかった。
「『撤退だ!撤退!次の再起に命を使え!!』勇者に特級よ、お前達もだ。お前たちが最優先だ」
「いやあ、依頼されてるだけだから完全に指揮されてるわけじゃないんだなこれが」
「同じく。私への直接命令は国王陛下だけです」
「…馬鹿どもめ」
「…私らも?」
「まあ最悪ブラッド連れて転移で逃げよう。ギルマスから持たされてる」
精鋭であるため、なんとか騎乗していた騎士達が魔法で防ぎ、お互い守りあった天馬や飛竜たちが夕日の中次々と飛び立っていく。
明らかに人種の敗北であった…。
◆
国境地帯 深夜
とぐろを巻いた大蛇であったが再び石化していた。自らに当てられた魔法や、周囲に漂う魔力を吸収し、さらなる成長を遂げようとしていたのだ。
そして、ぴしりぴしりと岩が剥がれ落ちていく…。
岩から出て来た大蛇は更に、更に成長し、もはや比べる物は山しかないというほどの巨体さに、その鱗は七色に輝いていた。
jjjjarararararaalalalalalalalala!!!!!!
空に向かって背を伸ばし、満月の夜を背後に大蛇は歓喜の叫びを上げる。
かつて、まだ己が矮小だった頃に見上げる存在でしかなかった、同じ鱗を持つにもかかわらず空を飛ぶ恐るべき者達や、それに対抗する大いなる者達に、ついに追いついたのだ。至ったのだ。
追いついてしまった
至ってしまった
大蛇が更なる進化を求め、少し離れているがその感覚器でとらえた魔力が集中している方、どちらにしようかと悩んでいるときであった。
「おいアオダイショウ。夜中に五月蠅いぞ」
バシュッ!!!!!
果たしてその声は大蛇に聞こえたであろうか…。
音すら置き去りにしたナニカが大蛇の体を単なる摩擦で燃やし尽くす。
大蛇は己の死を知覚すること無く、その体のほとんどを吹き飛ばされて絶命し、後に残ったのは僅かな尾の端だけであった。
見ていたのは満月のみであった。
魔物辞典
"名付ける者無き時代の蛇" "大蛇" 後世に記されるは"バジリスク"
神々と竜達の戦争の時代から生き抜いて来た蛇。戦争終了後に余波で大陸に満ちた魔力を糧に大型化するも、時代が経つにつれて魔力と餌となる生物が減少し、自ら山の中で石化、再び大きな魔力を感知するまで眠りにつくこととなった。
その蛇が眠る山の付近で、騎士の国と魔法の国の軍勢が衝突。多くの生物の動きと、乱発される魔法、遺物の使用により再び目覚め、その古き時代の力を人種に刻み込んだ。
脱皮することによって、ある程度自分の体を作り替えることができ、勇者トマによる自爆魔法で与えられた激痛の原因に対処するため、魔法を口で食うのではなく、体全体で吸収するよう調整。その副産物として、溜め込んだ魔力を体外に放出する事が出来るようになる。
度重なる魔力の吸収によって、下位の竜に匹敵するほどの存在となるも、原因不明の死を遂げる事になる。
ーバジリスクが大陸に与えた衝撃は凄まじいものであった。大国、騎士の国と魔法の国ですら対処できない怪物が存在することが明るみになったのだ。そしてそれを殺したナニカがいることもー
「拘束魔法陣を起動せよ!」
蛇に絡みつく緋色の鎖。
それを確認した司令官は拘束魔法陣の起動を命令し、陣の中が光だす。
「よし!魔石をき…なんだ?」
続いて爆発魔石の起爆を命じようとしたときであった。緋色の鎖も、輝いていた陣も消え失せてしまったのだ。
「なんだ!?」 「何があった!」 「魔法が消えたぞ!」 「やはりあの大きさの物は…」 「いや、そうだとしても遺物の方も消えるのはおかしい」
「落ち着け!評議魔導師様今のは?」
「分からん…」
「そうですか…」
2人の評議魔導師たちにとっても予想外の出来事であったため、司令官は次の手をどうするかと悩み始める。
「おい動いたぞ!」
周囲のざわめきが酷くなる。
見ると、確かに石化していた蛇が動き始めていた。そして、段々と岩が剥がれ落ちていく。
「やはり脱皮近いのか?」
「だとすると成長を…」
石化した大蛇がどうなっているかと各々考えていたが、この大きさに関わらず、今だに脱皮して成長しているという悪夢に評議魔導師たちは絶望する。
「いかん!縄が千切れている!総員魔法攻撃開始!」
一刻も猶予がないと見た司令官は魔法による攻撃を命令する。
【炎よ 我が敵を 討て】!!
呆然としていた魔法使い達であったが、それぞれ得意な攻撃魔法を発射。少し遅れて騎士の国側からも飛竜の火炎弾や特級による魔法攻撃が開始された。
同時に、着弾した魔法により魔石も爆発するはずであったが、そのような気配がなかった。というより、魔法がそもそも着弾しなかったのだ。
「なんだ!?魔法が消えたぞ!」
そうこうしているうちに、縄が全てはじけ飛び、岩の様な抜け殻から出て来た大蛇が空に向かって背を伸ばし辺りを見渡した。無機質な目であったが…どこか笑っているようにも見えた。
「両目ともあるぞ!」
大蛇の目を嫌な目であると思っていた兵士があることに気が付く。勇者トマによって失われたはずの両目があったのだ。脱皮することによってある程度の再生力も大蛇は有していた。
「構わん撃ち続けろ!」
【雷よ 我が敵を 討て】!!
「ダメです!消えてしまいます!」
昼前にも関わらず、辺り一帯は様々な魔法攻撃によって照らし出されていく。
しかし、効果がない。いや、そもそも掻き消えていく。
「おい、なんか大蛇の奴大ききくなってないか?」
魔法が掻き消えていくことに皆が気を取られていたが、誰かがそう呟く。だが、遅すぎた。
シャラララララララララララ!!!!!
大きさゆえに、爆音の様な音で鳴きながら空にさらに背を伸ばす大蛇。すると、鱗が様々な色に変わり、見る見る魔力が高まり始める。
『魔法障壁を張れ!!伏せろおおおおおおお!!!』
評議魔導師のヴァンが肌に叩きつけられるほどの魔力を感じ、魔法で声を拡散しながら魔法障壁を正面に張る。
ピカリと大蛇が光輝くと、背を伸ばした大蛇から大地へと降り注ぐように魔力の塊が放射された。
ドオ!!!!!!!!
殆ど現象として起動してもいない魔法であったが、効果は圧倒的であった。炎が、雷が、氷が、風が、次々と大蛇から発射される。
「逃げろおお!」 「【魔力よ 我を ま】ぎゃああああ!!」 「伏せろ伏せろ!!!」
「ぐぐぐぐぐ!!?」
全力で魔法によって軍全体を守ろうとしていた評議魔導師たちであったが、次々と突破され、今や己の周辺を守るので精一杯であった。
「こ、これでは…」
ようやく大蛇による攻撃が収まると、そこは死屍累々の地獄であった。
魔法の素養がない者や、あったとしても反応が遅れた者はほとんど死んでしまっていたのだ。
最早軍ではなく、無残な死体の山でしかなかった。
「司令官!無理じゃ!分かった!奴は魔法を吸収して成長しておるのじゃ!」
「そんなことが!?しかしそれでは打倒は!?」
大蛇が何故か再びとぐろを巻きだした隙に話を進める。
「魔法なしであの大きさは人種では無理じゃ!祈りの国に連絡して神々の慈悲を請わねば!エルフとも!」
「そ、そんな…分かりました『全軍撤退!特級、勇者、天馬、飛竜、評議魔導師は最優先!次の準備を整えた時に命を使え!』
「儂は最後まで居るからな!」
2度の敗北を経験したヴァンは、何があっても友軍の完全撤退が終わるまでこの地を離れるつもりはなかった。
恐らくそう言うと思っていた司令官は、ヴァンの後ろに立つもう一人の評議魔導師タルコに目配せする。
【深き 眠りに 落ちよ】
「な、なに……」
突如後ろからの眠りの魔法による不意打ちに、ヴァンは無防備に受けてしまう。
撤退命令により、騒然とし始めた陣地で2人は話を進める。
「ありがとうございます」
「いや、構わん。お主はどうする?」
「司令官としての責務を果たします。幸い、何故か奴は動きを止めています。ひょっとしたら助かるでしょう」
「分かった。武運を」
「ありがとうございます。『撤退急げよ!』」
◆
一方、攻撃開始時の騎士の国陣地にて
「なんだ?魔法が消える?」
「ダレル、おかしいよ」
攻撃命令に従って、自分達も魔法による攻撃を加えるも例外なく消失し、双子のダレルとパオラは困惑していた。しかも彼らは5つの呪文を唱えているにも関わらずだ。
「あー、俺様すっげえ嫌な予感してるんだが」
「やめてくれよブラッド。あんた達みたいな武器ぶん回し組の勘はバカにできないんだよ」
「いや、やっぱりするわ。2人とも来い」
「お、おい!」
「なにすんのよ!デリカシーゼロ!」
誰よりも前で魔物達と戦うブラッドの様な男の勘が、時として命を救う事を知っているダレルがその言葉に嫌がるが、ブラッドはお構いなしに2人の手を掴むと、どんどんと陣の中心に近づいていく。
「ん?特級冒険者?何かあったか?」
「いや、あんたは何があっても守らなきゃいけないからよお」
「どういうことだ?」
「おいブラッド」
「もー最悪」
着いた先は、軍司令部の司令官の所であった。話をしている間にも、しきりにブラッドは大蛇の方を気にしていた。
「そこにいる2人は高名な双子の魔法使いだろう?出来れば攻撃!!?」
「あんたら全員、俺様と双子の後ろにいろ!!魔法障壁を張れ!」
シャラララララララララララ!!!!!
叫び声を上げ、様々な色に光りだした大蛇に気を取られた司令官であったが、同じくそれを見たブラッドは司令官の服を掴んで無理やり後ろに移動させながら、司令部にいた全員に大声を出す。
「なにか特別な防御手段は!?」
「な、ない!」
「双子!全力だ!『全員防御手段を使え!無理なら伏せろ!!』」
「ブラッド!?」
「来るぞ!【俺様は動かん!絶対に!】」
ブラッドは魔法とは違う力ある言葉を叫び、続いて危険を察知した双子と、司令部にいた魔法を使える者が魔法障壁を張る。
光が溢れ、様々な魔法が蛇より発射された。
「んぎぎぎ、双子!?余裕は!?」
「この辺なら大丈夫だ!だがこれ以上は広げられない!」
「ならいい!命令出す奴が無事なら後は何とかなる!多分!」
「私は嫌だけど、今のあんたならそこらの娘は引っ掛けられるわよ!」
「帰ったらそうするぜ!」
真正面から魔力の奔流を耐えて、出来るだけ魔法障壁の負担を減らしているブラッドは、その言葉に安堵する。
攻撃するにしろ逃げるにしろ、指示を出す者が居ないとマズいと考えていたのだ。
「くそったれ!」
何とか防いだブラッド達であったが、他の場所は魔法の国側と同じく地獄であった。
「勇者と特級よ!意見を聞かせてくれ!お前達だけで奴を討てるか!?」
「勝算はほぼありません!撤退を進言します!」
「逃げの一択!エドガーとカークを呼ばなきゃどうしようもねえ!」
「わかった!!」
魔法も効かず、あの嵐の様な攻撃を掻い潜って接近するのも不可能と判断した、司令部にいた勇者とブラッドは撤退を進言する。
『全軍撤退!特級、勇者、天馬、飛竜、評議魔導師は最優先!次の準備を整えた時に命を使え!』
魔法の国からも、拡声された大声が聞こえてくる。
天馬や飛竜など若干指揮権を侵しているが、司令官に異論は全くなかった。
「『撤退だ!撤退!次の再起に命を使え!!』勇者に特級よ、お前達もだ。お前たちが最優先だ」
「いやあ、依頼されてるだけだから完全に指揮されてるわけじゃないんだなこれが」
「同じく。私への直接命令は国王陛下だけです」
「…馬鹿どもめ」
「…私らも?」
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精鋭であるため、なんとか騎乗していた騎士達が魔法で防ぎ、お互い守りあった天馬や飛竜たちが夕日の中次々と飛び立っていく。
明らかに人種の敗北であった…。
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国境地帯 深夜
とぐろを巻いた大蛇であったが再び石化していた。自らに当てられた魔法や、周囲に漂う魔力を吸収し、さらなる成長を遂げようとしていたのだ。
そして、ぴしりぴしりと岩が剥がれ落ちていく…。
岩から出て来た大蛇は更に、更に成長し、もはや比べる物は山しかないというほどの巨体さに、その鱗は七色に輝いていた。
jjjjarararararaalalalalalalalala!!!!!!
空に向かって背を伸ばし、満月の夜を背後に大蛇は歓喜の叫びを上げる。
かつて、まだ己が矮小だった頃に見上げる存在でしかなかった、同じ鱗を持つにもかかわらず空を飛ぶ恐るべき者達や、それに対抗する大いなる者達に、ついに追いついたのだ。至ったのだ。
追いついてしまった
至ってしまった
大蛇が更なる進化を求め、少し離れているがその感覚器でとらえた魔力が集中している方、どちらにしようかと悩んでいるときであった。
「おいアオダイショウ。夜中に五月蠅いぞ」
バシュッ!!!!!
果たしてその声は大蛇に聞こえたであろうか…。
音すら置き去りにしたナニカが大蛇の体を単なる摩擦で燃やし尽くす。
大蛇は己の死を知覚すること無く、その体のほとんどを吹き飛ばされて絶命し、後に残ったのは僅かな尾の端だけであった。
見ていたのは満月のみであった。
魔物辞典
"名付ける者無き時代の蛇" "大蛇" 後世に記されるは"バジリスク"
神々と竜達の戦争の時代から生き抜いて来た蛇。戦争終了後に余波で大陸に満ちた魔力を糧に大型化するも、時代が経つにつれて魔力と餌となる生物が減少し、自ら山の中で石化、再び大きな魔力を感知するまで眠りにつくこととなった。
その蛇が眠る山の付近で、騎士の国と魔法の国の軍勢が衝突。多くの生物の動きと、乱発される魔法、遺物の使用により再び目覚め、その古き時代の力を人種に刻み込んだ。
脱皮することによって、ある程度自分の体を作り替えることができ、勇者トマによる自爆魔法で与えられた激痛の原因に対処するため、魔法を口で食うのではなく、体全体で吸収するよう調整。その副産物として、溜め込んだ魔力を体外に放出する事が出来るようになる。
度重なる魔力の吸収によって、下位の竜に匹敵するほどの存在となるも、原因不明の死を遂げる事になる。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
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「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
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