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小大陸編
人型殲滅兵器&婆型極大魔法発射装置の上陸 それと可哀そうな騎士2人
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海の国
「ドナート枢機卿。守護騎士マイク出頭いたしました!」
「ご苦労マイク」
すぐに海の国へ転移したマイクは、そのまま現地の同僚の案内でドナートの前に来ていた。
「ベルトルド総長はなんと?」
「は。海の国にてドナート枢機卿の命を受けた後、小大陸に赴き、現地の情報を逐一通信魔具で報告せよと仰られました!」
「…他には?」
「いえありません!」
「…ベルトルドめ」
「ドナート枢機卿?」
どこか苦々し気な言葉で呟くドナートに、マイクは不思議そうにする。
「誰に同行するかは聞いていないのだな?」
「は?いえ、海の国の軍ではないのですか?」
「ええい。私に丸投げしよって」
今度こそはっきりと、ベルトルドに対して悪態をつくドナート。そしてマイクを見る目に憐みの色が出ていた。
「貴公はこれから、船の国の騎士が行う転移で、小大陸に渡る事になるが、同行者の中にユーゴ殿がいる」
「ユーゴ殿ですか?その方は?」
「…そうか。貴公は最近守護騎士になったばかりだったな。…なに、気さくな御仁だ。きちんと騎士として勤めれば大丈夫だ」
「はあ」
最近守護騎士になったばかりのマイクに、ユーゴとの接点はなかったが、そのせいで、ますます憐みのこもった目で彼を見るドナート。
「私の分の通信魔具はあるか?」
「は!こちらになります!」
「うむ。私も聞いているから、何か力になれるかもしれん」
「は!ありがとうございます!」
「それでは、ユーゴ殿が同行者をもう一人連れてくれば、すぐに出発する事になっている」
「は!」
「まあまずは、日帰りの強硬偵察の様なものだ。橋頭保が築かれてからが本番だな」
「は!」
(やっぱり歴戦の勇者であられるドナート枢機卿は違う!!この偵察が本番ですらないなんて!)
微妙に勘違いをしながら、マイクは覚悟を決めて準備するのであった。
◆
リガの街 ユーゴ邸
「婆さん。ちょっと日帰りで、小大陸へ行くことになったけどどうする?」
「ああそうだね。ソフィア、婆はちょっと散歩に行くけど、お姉ちゃんらしく、クリスとコレットの遊び相手を頼めるかい?」
「うんおばあちゃん!」
「ねーね。ねーね」
「ねー」
一旦家に帰って来たユーゴは、遊んでいる子供達を、微笑ましそうに見ているドロテアに声を掛ける。
それを聞いたドロテアは、ソフィアにコレット達の遊び相手を頼むと、ソフィアも大きく頷いた。ソフィアの周りにはコレットとクリスが、ねーねと言いながらころころとじゃれついていた。
「いい子だ。夕方までには帰って来ると思う。リリアーナ、悪いが頼んだよ」
「はいドロテア様。お気を付けて」
「そんじゃ行こうか」
「ああ」
ソフィアの頭を優しく撫でながら、リリアーナに彼女を頼むドロテア。そして、ユーゴと共に転移で海の国に向かうのであった。
◆
海の国
「お待たせしました」
「待たせて悪いね」
「いえ…」
(エルフの老婆?まるでユギ様の様だが、老婆を小大陸に連れて行くのは…)
「そのユギの姉さ。まあ、足手纏いにはならんから、連れてってくれ」
「ユギ様の姉!?」
船の国の騎士クルトは、神の使いと紹介されたユーゴに一縷の望みを託していたが、そのユーゴが連れてきたドロテアに対して、小大陸で敬愛されていたユギの様だと思っていた。しかし、地獄と化した小大陸に連れて行っていい物かと悩んでいたが、まさか本当にユギの血縁者とは思っておらず驚愕した。
「それではクルトさん。マイクさん。今日はよろしくお願いします」
「はい」
「は!全力を尽くします!」
「さて行こうかねえ」
こうして、怪物2人と憐れな騎士2人が小大陸へと赴くのであった。
◆
船の国 始まりの港
「何だこの数は!?」
「『報告!港と海岸は魔物で埋め尽くされています!大陸攻撃の準備と推測!』」
小大陸の人類が生まれた地とされている、船の国に存在する始まりの港。
そこへ転移した一行が見たのは、海岸線を埋め尽くさんばかりに集結している、魔物達の群れであった。
「撤退します!」
「まあ待ちな。ユギの墓はどこだい?」
「あ、あの小高い丘に!しかし、このままでは我々が!」
ヒョボ
何か風が叩きつける様な音が聞こえた。それと同時に、何かが破裂する音も。
見ると、海岸線にいた魔物達は消え去り、代わりに存在していたのは、血しぶきとナニカの欠片だけだった。
「それじゃあ遠慮なく」
「穴を増えすんじゃないよ。調査隊の拠点になる港町なんだ」
「分かってるよ。ったく信用ねえなあ」
「さて、大陸にいくつ大穴があったかねえ」
「よーし。早いとこか片付けますか」
その間にも消え続ける魔物達。
「な、一体何が!?」
「『報告!魔物達が消え去っています!何が起こっているか分かりません!』」
『こちらベルトルド。気にしなくていい。そのまま報告を続けてくれ』
混乱する騎士2人をよそに、マイクの通信魔具から平坦な声のベルトルドの声が聞こえる。
「おい婆さん。山からも来たぞ」
「そうだねえ」
「楽すんな」
「フェッフェッ。年寄り使いが荒いねえ」
「あんだけいたら、俺が纏めてやると山が吹っ飛ぶ」
未だに出て来る海岸線と港町の魔物達だけではない。見ると、離れた禿山の向こうからも、山を埋め尽くしながら魔物が溢れだしていた。
「そいつは船の国も勘弁してほしいだろうね。仕方ない【舞えよ 風の精 渦巻け 逆巻け 天へと上る 風の柱 対処する】」
かつて愚かにも、"7つ"と名乗った魔女とは訳が違う。
本来の7つの魔法とは、世界に介入して現れる通常の魔法では無いのだ。
そんな隙間を縫って現れ、意味が劣化した魔法ではない、世界を押し広げてこの世に非ざる現象を押し付ける、最初の、本当の意味での【魔法】が【始まりの魔女】によって解き放たれた。
「あああ!?」
「【報告!竜巻が!?いえ風の壁が出来ています!ああ!?天まで!本当に天まで伸びている壁が!?】」
『こちらドナート。気にするな』
1つの禿山だけではない。その周りの、それまた周りの禿山を、それの周りすらも巻き込んだ大気の壁は、海岸を目指していた魔物をへしゃげさせ、すり潰し、幾千に切り刻んで渦へと巻き込み、天高く運び込む。
「お見事」
「ふん。これしきさ」
かつて竜達すらも逃れる事が出来なかった風の牢獄を、ただの魔物如きが耐えられる筈も無く、生あるもの全てが塵へと化した。
◆
「この馬鹿め。あんな小さな子をほっぽり出してからに」
小高い丘にポツンと佇む墓石を前に、そう悪態をつくドロテア。
「まあ、お前さんが目指して作り上げた新天地なんだ。ちょっとは手助けしてやるよ」
日が傾き始めたため、金色に輝きだす港町を見てそう呟く。
「今度はソフィアを連れて来るよ。またね」
長い別離での再会とは思えぬ短い時間であったが、ドロテアにはそれで充分であった。
◆
ー塵も積もれば?塵は塵だー
「ドナート枢機卿。守護騎士マイク出頭いたしました!」
「ご苦労マイク」
すぐに海の国へ転移したマイクは、そのまま現地の同僚の案内でドナートの前に来ていた。
「ベルトルド総長はなんと?」
「は。海の国にてドナート枢機卿の命を受けた後、小大陸に赴き、現地の情報を逐一通信魔具で報告せよと仰られました!」
「…他には?」
「いえありません!」
「…ベルトルドめ」
「ドナート枢機卿?」
どこか苦々し気な言葉で呟くドナートに、マイクは不思議そうにする。
「誰に同行するかは聞いていないのだな?」
「は?いえ、海の国の軍ではないのですか?」
「ええい。私に丸投げしよって」
今度こそはっきりと、ベルトルドに対して悪態をつくドナート。そしてマイクを見る目に憐みの色が出ていた。
「貴公はこれから、船の国の騎士が行う転移で、小大陸に渡る事になるが、同行者の中にユーゴ殿がいる」
「ユーゴ殿ですか?その方は?」
「…そうか。貴公は最近守護騎士になったばかりだったな。…なに、気さくな御仁だ。きちんと騎士として勤めれば大丈夫だ」
「はあ」
最近守護騎士になったばかりのマイクに、ユーゴとの接点はなかったが、そのせいで、ますます憐みのこもった目で彼を見るドナート。
「私の分の通信魔具はあるか?」
「は!こちらになります!」
「うむ。私も聞いているから、何か力になれるかもしれん」
「は!ありがとうございます!」
「それでは、ユーゴ殿が同行者をもう一人連れてくれば、すぐに出発する事になっている」
「は!」
「まあまずは、日帰りの強硬偵察の様なものだ。橋頭保が築かれてからが本番だな」
「は!」
(やっぱり歴戦の勇者であられるドナート枢機卿は違う!!この偵察が本番ですらないなんて!)
微妙に勘違いをしながら、マイクは覚悟を決めて準備するのであった。
◆
リガの街 ユーゴ邸
「婆さん。ちょっと日帰りで、小大陸へ行くことになったけどどうする?」
「ああそうだね。ソフィア、婆はちょっと散歩に行くけど、お姉ちゃんらしく、クリスとコレットの遊び相手を頼めるかい?」
「うんおばあちゃん!」
「ねーね。ねーね」
「ねー」
一旦家に帰って来たユーゴは、遊んでいる子供達を、微笑ましそうに見ているドロテアに声を掛ける。
それを聞いたドロテアは、ソフィアにコレット達の遊び相手を頼むと、ソフィアも大きく頷いた。ソフィアの周りにはコレットとクリスが、ねーねと言いながらころころとじゃれついていた。
「いい子だ。夕方までには帰って来ると思う。リリアーナ、悪いが頼んだよ」
「はいドロテア様。お気を付けて」
「そんじゃ行こうか」
「ああ」
ソフィアの頭を優しく撫でながら、リリアーナに彼女を頼むドロテア。そして、ユーゴと共に転移で海の国に向かうのであった。
◆
海の国
「お待たせしました」
「待たせて悪いね」
「いえ…」
(エルフの老婆?まるでユギ様の様だが、老婆を小大陸に連れて行くのは…)
「そのユギの姉さ。まあ、足手纏いにはならんから、連れてってくれ」
「ユギ様の姉!?」
船の国の騎士クルトは、神の使いと紹介されたユーゴに一縷の望みを託していたが、そのユーゴが連れてきたドロテアに対して、小大陸で敬愛されていたユギの様だと思っていた。しかし、地獄と化した小大陸に連れて行っていい物かと悩んでいたが、まさか本当にユギの血縁者とは思っておらず驚愕した。
「それではクルトさん。マイクさん。今日はよろしくお願いします」
「はい」
「は!全力を尽くします!」
「さて行こうかねえ」
こうして、怪物2人と憐れな騎士2人が小大陸へと赴くのであった。
◆
船の国 始まりの港
「何だこの数は!?」
「『報告!港と海岸は魔物で埋め尽くされています!大陸攻撃の準備と推測!』」
小大陸の人類が生まれた地とされている、船の国に存在する始まりの港。
そこへ転移した一行が見たのは、海岸線を埋め尽くさんばかりに集結している、魔物達の群れであった。
「撤退します!」
「まあ待ちな。ユギの墓はどこだい?」
「あ、あの小高い丘に!しかし、このままでは我々が!」
ヒョボ
何か風が叩きつける様な音が聞こえた。それと同時に、何かが破裂する音も。
見ると、海岸線にいた魔物達は消え去り、代わりに存在していたのは、血しぶきとナニカの欠片だけだった。
「それじゃあ遠慮なく」
「穴を増えすんじゃないよ。調査隊の拠点になる港町なんだ」
「分かってるよ。ったく信用ねえなあ」
「さて、大陸にいくつ大穴があったかねえ」
「よーし。早いとこか片付けますか」
その間にも消え続ける魔物達。
「な、一体何が!?」
「『報告!魔物達が消え去っています!何が起こっているか分かりません!』」
『こちらベルトルド。気にしなくていい。そのまま報告を続けてくれ』
混乱する騎士2人をよそに、マイクの通信魔具から平坦な声のベルトルドの声が聞こえる。
「おい婆さん。山からも来たぞ」
「そうだねえ」
「楽すんな」
「フェッフェッ。年寄り使いが荒いねえ」
「あんだけいたら、俺が纏めてやると山が吹っ飛ぶ」
未だに出て来る海岸線と港町の魔物達だけではない。見ると、離れた禿山の向こうからも、山を埋め尽くしながら魔物が溢れだしていた。
「そいつは船の国も勘弁してほしいだろうね。仕方ない【舞えよ 風の精 渦巻け 逆巻け 天へと上る 風の柱 対処する】」
かつて愚かにも、"7つ"と名乗った魔女とは訳が違う。
本来の7つの魔法とは、世界に介入して現れる通常の魔法では無いのだ。
そんな隙間を縫って現れ、意味が劣化した魔法ではない、世界を押し広げてこの世に非ざる現象を押し付ける、最初の、本当の意味での【魔法】が【始まりの魔女】によって解き放たれた。
「あああ!?」
「【報告!竜巻が!?いえ風の壁が出来ています!ああ!?天まで!本当に天まで伸びている壁が!?】」
『こちらドナート。気にするな』
1つの禿山だけではない。その周りの、それまた周りの禿山を、それの周りすらも巻き込んだ大気の壁は、海岸を目指していた魔物をへしゃげさせ、すり潰し、幾千に切り刻んで渦へと巻き込み、天高く運び込む。
「お見事」
「ふん。これしきさ」
かつて竜達すらも逃れる事が出来なかった風の牢獄を、ただの魔物如きが耐えられる筈も無く、生あるもの全てが塵へと化した。
◆
「この馬鹿め。あんな小さな子をほっぽり出してからに」
小高い丘にポツンと佇む墓石を前に、そう悪態をつくドロテア。
「まあ、お前さんが目指して作り上げた新天地なんだ。ちょっとは手助けしてやるよ」
日が傾き始めたため、金色に輝きだす港町を見てそう呟く。
「今度はソフィアを連れて来るよ。またね」
長い別離での再会とは思えぬ短い時間であったが、ドロテアにはそれで充分であった。
◆
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そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
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