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小大陸編
よりにもよって怪物と2人きりになってしまった守護騎士マイク
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海の国
「ご苦労だった騎士マイク」
「は…」
小大陸から帰還したマイクは、ドナートに今日あったことを報告していた。
「ドナート枢機卿、私は何か幻覚を見ていたのでしょうか?」
「騎士マイク。その気持ちは非常によく分かるとも。だが、起こった物事を冷静に処理するのも、騎士にとって重要な事だ」
たった半日しか経っていないにも関わらず、見るからにやつれているマイクを、憐れんだ表情で諭すドナート。
ドナートだって、地下深くの神殿にいたのに、そこから放たれた力の余波で地上どころか、空の雲まで消え去った光景をかつて見ているのだ。マイクの気持ちが非常によく分かり、また同情していた。
「小大陸の魔物がこちらに侵攻する前に叩けたし、我々の予想以上に魔物が組織立っていることも分かった。貴公の功績は大きい。今日はゆっくり休め」
「は。ありがとうございます」
疲れ切っているマイクを労わり、もう休む様に指示するドナートであったが、まだ伝えていない事があった…。
「それと…。魔物の数が多すぎるとユーゴ殿が判断してな。暫く現地で間引くとの事だ。引き続き貴公も同行して、情報を収集せよ」
「は…。は!?」
「うむ。もう少し小大陸で調査を続けてくれ。竜などの存在がいないとも限らんからな。それと後々派遣されるであろう、調査隊のルートや拠点の選定の情報もいる。魔物の襲撃で、船の国の持っている情報に誤差があるかもしれん」
マイクは、死刑宣告を通知された罪人の様な顔を見せて、雲の上の上司に聞き返してしまうが、ドナートは嫌な気持ちを少しも持たずに、彼に丁寧に説明した。
「しゅ、守護騎士マイク!全力で小大陸の調査に当たります!」
「うむ」
まさしくやけくそで声を張り上げるマイクを、ドナートは心底すまなそうで見ていたが、ドナートだってユーゴと2人でどこかの調査など、絶対に御免被るのであった。
もしこれがベルトルドなら、その日のうちに団長の職を辞して、どこかに隠居するだろう。それか倒れて意識不明だ。
◆
リガの街 ユーゴ邸
「おばあちゃんおかえりなさい!」
「ああただいま」
小大陸にある用事の半分を終わらせたドロテアは、海の国に残ったユーゴとは別に、一足先にユーゴ邸に戻っていた。
「どこまでおさんぽしたの?」
「なに、すぐ近所さ」
「へー」
ちょっと小大陸にまでとは流石に言わず、ソフィアの頭を撫でるドロテア。
「お帰りなさいドロテア様。旦那様はどうなされてます?」
「ああ、向こうの魔物が思ったよりもずっと多くてね。暫く間引くとさ」
「そうですか…」
小大陸の極々一部であったにも関わらず、途方もない数の魔物がいたのだ。数を減らさねば調査どころでは無いと考えたユーゴは、愛する家族との別離を涙を流しながら悲しんだが、小大陸へ出張する事を選んだ。
「すまんね。私の都合に坊やを巻き込んで」
「いいえ。小大陸から魔物が来るとなれば、個人の事を言っている場合ではないですからね」
夫が暫く帰ってこれない事に悲しく思っていたリリアーナであったが、大陸の危機に直面しているのだ。自分の感情で、ユーゴを引き留める訳にはいかないと思っていた。
「それに、旦那様は世界一強いんですから」
「フェッフェッ」
勿論心配はしていたが、それでもなお自分の夫は無事に帰って来ると確信していたリリアーナである。
「ユーゴのおじさん、そんなにつよいの?」
「ぱー」
「ぱー」
「フェッフェッフェッフェッ。最強無敵さ」
「へー」
「ねー」
「ねーねー」
「あ、もうクリスにコレット。ちゃんとあそんであげるから」
分かったような分からないような返事をするソフィアに、今は自分達を構ってとばかりにコレットとクリスが纏わりついて来るのであった。
◆
海の国
(つらい…。早く帰って、子供達のほっぺたをつんつんしたい…)
一夜を海の国で過ごしたユーゴは、もうホームシックに罹っており、一刻も早く家に帰って子供達と遊びたがっていた。まあ、当の子供達は、新しい遊び相手のソフィアが居るので、全く悲しんでいなかったが。
「本日もよろしくお願いします!」
(もうどうにでもなれ!)
「ええお願いします」
やけっぱちになったままのマイクが挨拶していたが、それもそのはずで、小大陸に行ったことで場所が分かり、船の国の者が連れずとも転移出来るようになったため、彼はユーゴと2人っきりで現地に向かう事になったのだ。
「それでは行きましょうか」
(パパはお仕事に行ってきます…)
「は!」
(父さん母さん!きっと無事に帰るからね!)
2人ともそれぞれ覚悟を持って小大陸に赴いたはずなのに、もう泣きが入りながら再び小大陸へと転移するのであった。
◆
『報告!そ、空が!?雲が割れました!あんなに空を埋め尽くして魔物が居ない!?』
『こちらベルトルド。安心しろ。それは我々も経験した。地下だったがな』
『こちらドナート。そうとも。何、少し悪夢を見るだけだ。害はない』
◆
『報告!こちらの魔物は、別の生物が混ざった様なものばかりです!』
『こちらベルトルド。竜が混じってなかったら大丈夫だ。そうだろドナート』
『こちらドナート。うむ。"2つ"首を見た時は、ここが死に場所かと思ったものだ』
『ははは。確かにあの時は死んだと思った』
『だろう?ははは』
◆
『報告!山の頂が消滅しました!なんであんな遠くの山が!?』
『こちらベルトルド。山が全部吹っ飛んだ訳ではないのだな?頂きだけなら構わんだろう』
『こちらドナート。うむ。十分許容範囲だ』
◆
『ほ、報告うう!や、山一つが丸ごと魔物の巣です!ああ!?今山が消えましたあああ!?』
『まあ一つならいいだろう』
『うむ。船の国には私から連絡しておく』
◆
『ほ、ほうこくううう!今いる場所の地下が、全て魔物で埋まっているそうですうう!あ、ああああ!?今巨大なあ、穴が出来ましたあああ!?』
『穴についてはそれこそ気にせんでいい。こちらの大陸にいくつもある』
『うむ。船の国の者達も気にせんだろう』
◆
『だ、大地も空も埋め尽くす魔物がこちらに!?い、今消えましたあああ!?』
『いい加減リリアーナ様のお子様を見に行かなければ』
『そうだなベルトルド。しかし時間がな…』
『ああ、最近は何かと忙しい』
◆
『こちらユーゴ。マイクさんが気絶しました。一旦帰りますね』
『む。そうか、帰ったら休暇を与えんとな』
『ご苦労様でしたユーゴ殿』
◆
マイクに幸あれ
「ご苦労だった騎士マイク」
「は…」
小大陸から帰還したマイクは、ドナートに今日あったことを報告していた。
「ドナート枢機卿、私は何か幻覚を見ていたのでしょうか?」
「騎士マイク。その気持ちは非常によく分かるとも。だが、起こった物事を冷静に処理するのも、騎士にとって重要な事だ」
たった半日しか経っていないにも関わらず、見るからにやつれているマイクを、憐れんだ表情で諭すドナート。
ドナートだって、地下深くの神殿にいたのに、そこから放たれた力の余波で地上どころか、空の雲まで消え去った光景をかつて見ているのだ。マイクの気持ちが非常によく分かり、また同情していた。
「小大陸の魔物がこちらに侵攻する前に叩けたし、我々の予想以上に魔物が組織立っていることも分かった。貴公の功績は大きい。今日はゆっくり休め」
「は。ありがとうございます」
疲れ切っているマイクを労わり、もう休む様に指示するドナートであったが、まだ伝えていない事があった…。
「それと…。魔物の数が多すぎるとユーゴ殿が判断してな。暫く現地で間引くとの事だ。引き続き貴公も同行して、情報を収集せよ」
「は…。は!?」
「うむ。もう少し小大陸で調査を続けてくれ。竜などの存在がいないとも限らんからな。それと後々派遣されるであろう、調査隊のルートや拠点の選定の情報もいる。魔物の襲撃で、船の国の持っている情報に誤差があるかもしれん」
マイクは、死刑宣告を通知された罪人の様な顔を見せて、雲の上の上司に聞き返してしまうが、ドナートは嫌な気持ちを少しも持たずに、彼に丁寧に説明した。
「しゅ、守護騎士マイク!全力で小大陸の調査に当たります!」
「うむ」
まさしくやけくそで声を張り上げるマイクを、ドナートは心底すまなそうで見ていたが、ドナートだってユーゴと2人でどこかの調査など、絶対に御免被るのであった。
もしこれがベルトルドなら、その日のうちに団長の職を辞して、どこかに隠居するだろう。それか倒れて意識不明だ。
◆
リガの街 ユーゴ邸
「おばあちゃんおかえりなさい!」
「ああただいま」
小大陸にある用事の半分を終わらせたドロテアは、海の国に残ったユーゴとは別に、一足先にユーゴ邸に戻っていた。
「どこまでおさんぽしたの?」
「なに、すぐ近所さ」
「へー」
ちょっと小大陸にまでとは流石に言わず、ソフィアの頭を撫でるドロテア。
「お帰りなさいドロテア様。旦那様はどうなされてます?」
「ああ、向こうの魔物が思ったよりもずっと多くてね。暫く間引くとさ」
「そうですか…」
小大陸の極々一部であったにも関わらず、途方もない数の魔物がいたのだ。数を減らさねば調査どころでは無いと考えたユーゴは、愛する家族との別離を涙を流しながら悲しんだが、小大陸へ出張する事を選んだ。
「すまんね。私の都合に坊やを巻き込んで」
「いいえ。小大陸から魔物が来るとなれば、個人の事を言っている場合ではないですからね」
夫が暫く帰ってこれない事に悲しく思っていたリリアーナであったが、大陸の危機に直面しているのだ。自分の感情で、ユーゴを引き留める訳にはいかないと思っていた。
「それに、旦那様は世界一強いんですから」
「フェッフェッ」
勿論心配はしていたが、それでもなお自分の夫は無事に帰って来ると確信していたリリアーナである。
「ユーゴのおじさん、そんなにつよいの?」
「ぱー」
「ぱー」
「フェッフェッフェッフェッ。最強無敵さ」
「へー」
「ねー」
「ねーねー」
「あ、もうクリスにコレット。ちゃんとあそんであげるから」
分かったような分からないような返事をするソフィアに、今は自分達を構ってとばかりにコレットとクリスが纏わりついて来るのであった。
◆
海の国
(つらい…。早く帰って、子供達のほっぺたをつんつんしたい…)
一夜を海の国で過ごしたユーゴは、もうホームシックに罹っており、一刻も早く家に帰って子供達と遊びたがっていた。まあ、当の子供達は、新しい遊び相手のソフィアが居るので、全く悲しんでいなかったが。
「本日もよろしくお願いします!」
(もうどうにでもなれ!)
「ええお願いします」
やけっぱちになったままのマイクが挨拶していたが、それもそのはずで、小大陸に行ったことで場所が分かり、船の国の者が連れずとも転移出来るようになったため、彼はユーゴと2人っきりで現地に向かう事になったのだ。
「それでは行きましょうか」
(パパはお仕事に行ってきます…)
「は!」
(父さん母さん!きっと無事に帰るからね!)
2人ともそれぞれ覚悟を持って小大陸に赴いたはずなのに、もう泣きが入りながら再び小大陸へと転移するのであった。
◆
『報告!そ、空が!?雲が割れました!あんなに空を埋め尽くして魔物が居ない!?』
『こちらベルトルド。安心しろ。それは我々も経験した。地下だったがな』
『こちらドナート。そうとも。何、少し悪夢を見るだけだ。害はない』
◆
『報告!こちらの魔物は、別の生物が混ざった様なものばかりです!』
『こちらベルトルド。竜が混じってなかったら大丈夫だ。そうだろドナート』
『こちらドナート。うむ。"2つ"首を見た時は、ここが死に場所かと思ったものだ』
『ははは。確かにあの時は死んだと思った』
『だろう?ははは』
◆
『報告!山の頂が消滅しました!なんであんな遠くの山が!?』
『こちらベルトルド。山が全部吹っ飛んだ訳ではないのだな?頂きだけなら構わんだろう』
『こちらドナート。うむ。十分許容範囲だ』
◆
『ほ、報告うう!や、山一つが丸ごと魔物の巣です!ああ!?今山が消えましたあああ!?』
『まあ一つならいいだろう』
『うむ。船の国には私から連絡しておく』
◆
『ほ、ほうこくううう!今いる場所の地下が、全て魔物で埋まっているそうですうう!あ、ああああ!?今巨大なあ、穴が出来ましたあああ!?』
『穴についてはそれこそ気にせんでいい。こちらの大陸にいくつもある』
『うむ。船の国の者達も気にせんだろう』
◆
『だ、大地も空も埋め尽くす魔物がこちらに!?い、今消えましたあああ!?』
『いい加減リリアーナ様のお子様を見に行かなければ』
『そうだなベルトルド。しかし時間がな…』
『ああ、最近は何かと忙しい』
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『こちらユーゴ。マイクさんが気絶しました。一旦帰りますね』
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◆
マイクに幸あれ
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そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
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