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小大陸編
作られた者達
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小大陸
(あった。多分あそこが原因だ)
ユーゴは、高い山から周囲を一望できる場所に移動すると、その超人的な視力で魔物が特に集まっている場所を発見した。
(牧場の中に砦?)
そこはかなり荒れていたが、畜舎の様な建物が残っており、かろうじてかつては牧場だった事が分かる。
しかし、そんな牧場に似つかわしくない、石作りの砦の様な物が併設されており、よく見るとそこから魔物達が出て来ていた。
(あんな所から出て来ているんだ。間違いないな。婆さんに知らせよう)
それを見たユーゴは、あの建物こそが今回の騒動の原因と確信し、妹のお礼参りをしたがっているドロテアに知らせる事を決める。
(善は急げだ)
そう思いながらユーゴは転移をする。
高い高い。もう少しで雲に入るギリギリの地点から。
◆
「坊やが帰って来たね」
「あの人が?コレットおいで」
「まあまあ。お迎えしないと。クリス行きますよ」
「ぱ」
「ぱー?」
ソファに座りながらユーゴの帰宅を察知したドロテアが呟くと、ジネットとリリアーナが子供達を抱き上げて玄関へと向かう。
「ただいまー」
「お帰りさないあなた」
「おかえりなさい」
「ぱ」
「ぱー」
「ただいまジネット!リリアーナ!コレットオオ!クリスウウウ!会いたかったよおおおお!」
玄関で迎えてくれた、愛する妻達と子供達の姿を見たユーゴは、涙を流さんばかりに喜び、子供達を受け取って、それぞれの顔に自分の頬を擦り付ける。
「きゃー」
「ぱーぱー」
最も子供達は嫌がっているのか喜んでいるのか、判別に困る微妙な顔をして父の顔をペシペシと叩いてたが。
「おじちゃんおかりなさい!」
「ただいまソフィアちゃん。コレットとクリスと遊んでくれてありがとうね」
「うん!わたしおねえちゃんだもん!」
「ははは!」
遅れて到着したソフィアもユーゴを出迎え、彼は笑いながらリビングのドロテアの下へ向かう。
「お帰り坊や」
「ただいま」
家族との時間を邪魔しては悪いと、ドロテアも少し後からリビングを出ていたが、何かを察したのか、既に杖をその手に持っていた。
「何か分かったようだね」
「多分原因を見つけた筈」
「フェッフェッ。律儀に私のとこへ来てくれてありがとよ」
「妙な牧場にある砦から魔物が続々出てきてるんだ」
ユーゴは腕に抱いている子供達を、泣く泣く母親の下へ返しながらドロテアに話す。
「善は急げなんだけど、無茶苦茶高い山に転移するけど大丈夫?」
「フェッフェッ。古いエルフはよっぽどの環境でない限り、何処へでも行けるのさ」
そのドロテアの言葉に、そうなの?と言うように首を傾けてリリアーナを見るユーゴであるが、その彼女も首を傾けてさあ?と言う風にしていた。
尚クリスも、父母がしているのを真似て首を傾けていた。
「それじゃあ連れて行っておくれ」
「お任せあれ。行ってくるよジネット、リリアーナ。コレットオオ!クリスウウ!パパはもちょっとお仕事してくるからねえええ!」
「お気を付けてあなた」
「子供達はお任せくださいね」
「ぱー」
「ぱーぱー」
腕で顔隠して、泣く仕草をしているユーゴであるが、ひょっとしたら本当に泣いているのかもしれない。
「ぐす。じゃあ行こうか婆さん」
「はいよ」
目にほんの少しだけ涙を浮かべているユーゴ。本当に泣いてしまったようだ。
◆
「ああ。確かにあれは怪しね」
「だろ?」
ドロテアも遠目で砦と牧場を確認し、怪しいと言ったユーゴに同意する。
そう言っている間にも、複数の動物が入り混じった様な魔物が、続々と砦の門から出て来ていた。
「さて。それじゃあ行こうか。魔物の方はよろしく」
「任せな」
そう言いながらドロテアを背負うユーゴ。
これが街中なら、老婆を背負う男性という美談の様な光景であるが、ここは魔物ひしめく小大陸で、背負っている方は人の形をした最終兵器、背負われている方は史上最大の魔法発射装置なのである。
今ここに、最強最悪の生物兵器が誕生したのであった。
◆
「『凍てつけ 動くな 生ある者は 皆止まれ この地に 氷結地獄が現れる 対処する』」
ドロテアから放たれる"7つ"の魔法。
それが大地を埋め尽くす魔物の、息を、心臓を、命を、時間を永久に氷の大地と共に停止させる。
砦を壊さない様にと放たれた氷の魔法であったが、その結果は現れたのは青と白が支配する氷の地獄であった。
「お見事」
「何言ってんだい。タマもこれくらいは出来るよ」
「え!?」
その氷結地獄を走り抜けながら、自分の飼い猫の秘めた力に驚くユーゴ。
実は未だにタマとポチは、精霊体での実戦を経験しておらず、その力は未知数な所が多かった。
「タマがねえ」
確かに一度氷の虎となったタマを見ていたユーゴであるが、隙あらばコレットとクリスの近くで尻尾を振って、子供達の遊び相手を務めている姿からは、想像しにくいものがあった。
「さて砦に来たはいいが…」
「地下とはね」
砦の正面の門から入った2人であるが、なんとその門は砦の中ではなく、地下へと繋がっていた。
「絶対碌な事じゃないぞ」
「私もそう思う」
うんざりしたような表情を浮かべる2人であるが、それでも行かなければならず、ドロテアを背負ったまま渋々と言った様に歩を進めるユーゴ。
「なんじゃこりゃ」
「ああ全く…」
地上の余波で凍り付いた、大きな地下道をしばらく歩いた2人が見たのは、大きな魔石に閉じ込められている、大小様々な動物であった。
山羊や羊、牛の様な家畜に始まり、獅子や虎の様なものまで、小大陸にいる生物が全ているのではないかと思えるほどの数であった。
「悪の秘密結社の研究所そのまんまなんだけど…」
「その認識で合ってるよ。全く」
「なんで2匹づついるんだ?雄雌?」
「ああ多分ね」
よく見ると、閉じ込められている動物には、それぞれもう一匹が隣の魔石に封じられており、獅子の鬣を見るに、雄と雌がそれぞれいるものと思われた。
「全く。考える事は神も人も変わらんね…」
「婆さん?」
ブツブツと悪態をつくように独り言を言いながら、地下の中でも大きなスペースが取られている、作業所の様な場所をひっくり返しているドロテア。
「ああ。これだ」
「日誌?」
ドロテアが見つけたのは、血がこびり付いた服の横にあった日誌の様な物であった。
「どれどれ?」
『今日と言う日は歴史に刻まれる日だ!我々、畜産の国は地下の魔石鉱脈を利用して、ついに牛の複製に成功したのだ!これで小大陸中の家庭に、食肉が溢れる事になるだろう!』
『雄と雌、両方の複製に差異が無いか、家畜達の雌雄をそれぞれ運んでもらおう』
『素晴らしい!どちらも差異無く複製できた!次の目標は、ある程度自動で複製を作れるようになる事だな。そうすれば他の所へ人材を回せるだろう』
『素晴らしい事を思いついた。ひょっとして家畜を混ぜれば、豚の多産と牛肉の美味さを兼ね揃えた生物が出来るのでは?早速やってみよう』
『失敗だ。上手く混ざらず、それぞれの頭部を持つ上に、凶暴性が増していた。しかも人種を優先的に襲う様だ。こんなものは家畜と呼べない。まずは複製の方に力を入れて、しっかりとした基礎を作り上げよう』
『軍部が合成家畜の資料に目を付けたらしい。大陸中の雌雄を送るから、それの複製生物を混ぜて戦闘力を調べろとは…。そんな事よりも牛の味を持った鶏を作らせろよ…』
『全自動で家畜の複製を作り上げれる装置が出来たぞ!これで小大陸は永遠に繁栄するだろう!』
『軍部に全て取り上げられてしまった』
『もう手遅れだ。私の作った装置は、合成生物を作る生産工場に仕立て上げられていた。研究所の人間は全員食われた。私も傷で長くない。これを読んでいる人がいれば、すぐに装置を破壊して欲しい。地下にある魔石鉱脈は途方もない埋蔵量だ。このままでは永遠に合成生物が作られてしまう。どうか頼む』
「なんとまあ…」
「ふん」
その日誌には、今回の騒動の原因が書かれていた。
ある男の善意と、人間の欲の暴走が。
「どうすんのこれ?」
「決めってるさ。跡形も無く吹っ飛ばすんだよ」
「んだ」
一応ドロテアに確認を取ったユーゴであったが、ドロテアの考えも彼と一緒だった。
「じゃあ上に出るよ」
(えらく苛ついてるな)
「ああ」
ドロテアが随分苛ついているなと感じていたユーゴであったが、立ち入るべきではないと判断し、そのままドロテアを負ぶって地表に到着する。
「それでは俺が」
「私がやるから最初に来た山に運んでおくれ」
「お任せあれ」
ユーゴがさっそくとばかりそう言うが、ドロテアが待ったを掛けた。
「この辺でいい?」
「ああ。全く…。結果はよかったものの、神々でさえやらかしたんだ。私らにはその技術は早すぎる。『大地よ 起きよ 天よ 落ちよ 流れる 星が 押し潰す 対処する』!」
「こりゃまた」
世界を押し広げ、非ざる現象を引き起こす"7つ"よりも更に上。術者の願いをそのまま現実に引き起こす、神話の魔法"8つ"が小大陸にて唱えられた。
ユーゴはドロテアが魔法を唱えた瞬間から、はるか上空に出現した、とてつもなく巨大な魔力の塊を察知。
それをよく見ると、岩の塊のようなものに見えたが、地表遠くからみてそのサイズなのだ。砦どころか牧場全てを飲み込むほどの岩石は、そのまま落下を開始し地表に着激。しかし、そのまま勢いが衰えることなく、地下深くにめり込みながら爆散した。
「ふん」
「人に大穴作るなとか言ってたのに、婆さんが作ってどうすんだよ」
轟音とともに発生した、津波の様な土煙と、弾丸の様にはじけ飛ぶ岩が収まると、そこには牧場の後は無く、ぽっかりとした何処までも続く大穴が大地に刻まれていた。
「虫の居所が悪かったのさ」
「さよけ」
杖で自分の肩を叩くドロテアの姿を見て、呆れたようなユーゴであった。
「さて。帰ってソフィアに言ってあげないとね」
「…うちの子達泣くかな?」
「フェッフェッ。随分懐いていたからねえ」
先程の魔法でストレスを発散したのか、普段の気配に戻ったドロテアと、軽口を言い合いながらユーゴは大陸へと帰還する。
◆
魔物辞典
人種
大陸全体の人間種の総称。
◆
確かに箱舟は人を救ったが、引き起こされた災厄は大洪水ではなく、人以外にも本来乗るはずであった者達が原因であった。
(あった。多分あそこが原因だ)
ユーゴは、高い山から周囲を一望できる場所に移動すると、その超人的な視力で魔物が特に集まっている場所を発見した。
(牧場の中に砦?)
そこはかなり荒れていたが、畜舎の様な建物が残っており、かろうじてかつては牧場だった事が分かる。
しかし、そんな牧場に似つかわしくない、石作りの砦の様な物が併設されており、よく見るとそこから魔物達が出て来ていた。
(あんな所から出て来ているんだ。間違いないな。婆さんに知らせよう)
それを見たユーゴは、あの建物こそが今回の騒動の原因と確信し、妹のお礼参りをしたがっているドロテアに知らせる事を決める。
(善は急げだ)
そう思いながらユーゴは転移をする。
高い高い。もう少しで雲に入るギリギリの地点から。
◆
「坊やが帰って来たね」
「あの人が?コレットおいで」
「まあまあ。お迎えしないと。クリス行きますよ」
「ぱ」
「ぱー?」
ソファに座りながらユーゴの帰宅を察知したドロテアが呟くと、ジネットとリリアーナが子供達を抱き上げて玄関へと向かう。
「ただいまー」
「お帰りさないあなた」
「おかえりなさい」
「ぱ」
「ぱー」
「ただいまジネット!リリアーナ!コレットオオ!クリスウウウ!会いたかったよおおおお!」
玄関で迎えてくれた、愛する妻達と子供達の姿を見たユーゴは、涙を流さんばかりに喜び、子供達を受け取って、それぞれの顔に自分の頬を擦り付ける。
「きゃー」
「ぱーぱー」
最も子供達は嫌がっているのか喜んでいるのか、判別に困る微妙な顔をして父の顔をペシペシと叩いてたが。
「おじちゃんおかりなさい!」
「ただいまソフィアちゃん。コレットとクリスと遊んでくれてありがとうね」
「うん!わたしおねえちゃんだもん!」
「ははは!」
遅れて到着したソフィアもユーゴを出迎え、彼は笑いながらリビングのドロテアの下へ向かう。
「お帰り坊や」
「ただいま」
家族との時間を邪魔しては悪いと、ドロテアも少し後からリビングを出ていたが、何かを察したのか、既に杖をその手に持っていた。
「何か分かったようだね」
「多分原因を見つけた筈」
「フェッフェッ。律儀に私のとこへ来てくれてありがとよ」
「妙な牧場にある砦から魔物が続々出てきてるんだ」
ユーゴは腕に抱いている子供達を、泣く泣く母親の下へ返しながらドロテアに話す。
「善は急げなんだけど、無茶苦茶高い山に転移するけど大丈夫?」
「フェッフェッ。古いエルフはよっぽどの環境でない限り、何処へでも行けるのさ」
そのドロテアの言葉に、そうなの?と言うように首を傾けてリリアーナを見るユーゴであるが、その彼女も首を傾けてさあ?と言う風にしていた。
尚クリスも、父母がしているのを真似て首を傾けていた。
「それじゃあ連れて行っておくれ」
「お任せあれ。行ってくるよジネット、リリアーナ。コレットオオ!クリスウウ!パパはもちょっとお仕事してくるからねえええ!」
「お気を付けてあなた」
「子供達はお任せくださいね」
「ぱー」
「ぱーぱー」
腕で顔隠して、泣く仕草をしているユーゴであるが、ひょっとしたら本当に泣いているのかもしれない。
「ぐす。じゃあ行こうか婆さん」
「はいよ」
目にほんの少しだけ涙を浮かべているユーゴ。本当に泣いてしまったようだ。
◆
「ああ。確かにあれは怪しね」
「だろ?」
ドロテアも遠目で砦と牧場を確認し、怪しいと言ったユーゴに同意する。
そう言っている間にも、複数の動物が入り混じった様な魔物が、続々と砦の門から出て来ていた。
「さて。それじゃあ行こうか。魔物の方はよろしく」
「任せな」
そう言いながらドロテアを背負うユーゴ。
これが街中なら、老婆を背負う男性という美談の様な光景であるが、ここは魔物ひしめく小大陸で、背負っている方は人の形をした最終兵器、背負われている方は史上最大の魔法発射装置なのである。
今ここに、最強最悪の生物兵器が誕生したのであった。
◆
「『凍てつけ 動くな 生ある者は 皆止まれ この地に 氷結地獄が現れる 対処する』」
ドロテアから放たれる"7つ"の魔法。
それが大地を埋め尽くす魔物の、息を、心臓を、命を、時間を永久に氷の大地と共に停止させる。
砦を壊さない様にと放たれた氷の魔法であったが、その結果は現れたのは青と白が支配する氷の地獄であった。
「お見事」
「何言ってんだい。タマもこれくらいは出来るよ」
「え!?」
その氷結地獄を走り抜けながら、自分の飼い猫の秘めた力に驚くユーゴ。
実は未だにタマとポチは、精霊体での実戦を経験しておらず、その力は未知数な所が多かった。
「タマがねえ」
確かに一度氷の虎となったタマを見ていたユーゴであるが、隙あらばコレットとクリスの近くで尻尾を振って、子供達の遊び相手を務めている姿からは、想像しにくいものがあった。
「さて砦に来たはいいが…」
「地下とはね」
砦の正面の門から入った2人であるが、なんとその門は砦の中ではなく、地下へと繋がっていた。
「絶対碌な事じゃないぞ」
「私もそう思う」
うんざりしたような表情を浮かべる2人であるが、それでも行かなければならず、ドロテアを背負ったまま渋々と言った様に歩を進めるユーゴ。
「なんじゃこりゃ」
「ああ全く…」
地上の余波で凍り付いた、大きな地下道をしばらく歩いた2人が見たのは、大きな魔石に閉じ込められている、大小様々な動物であった。
山羊や羊、牛の様な家畜に始まり、獅子や虎の様なものまで、小大陸にいる生物が全ているのではないかと思えるほどの数であった。
「悪の秘密結社の研究所そのまんまなんだけど…」
「その認識で合ってるよ。全く」
「なんで2匹づついるんだ?雄雌?」
「ああ多分ね」
よく見ると、閉じ込められている動物には、それぞれもう一匹が隣の魔石に封じられており、獅子の鬣を見るに、雄と雌がそれぞれいるものと思われた。
「全く。考える事は神も人も変わらんね…」
「婆さん?」
ブツブツと悪態をつくように独り言を言いながら、地下の中でも大きなスペースが取られている、作業所の様な場所をひっくり返しているドロテア。
「ああ。これだ」
「日誌?」
ドロテアが見つけたのは、血がこびり付いた服の横にあった日誌の様な物であった。
「どれどれ?」
『今日と言う日は歴史に刻まれる日だ!我々、畜産の国は地下の魔石鉱脈を利用して、ついに牛の複製に成功したのだ!これで小大陸中の家庭に、食肉が溢れる事になるだろう!』
『雄と雌、両方の複製に差異が無いか、家畜達の雌雄をそれぞれ運んでもらおう』
『素晴らしい!どちらも差異無く複製できた!次の目標は、ある程度自動で複製を作れるようになる事だな。そうすれば他の所へ人材を回せるだろう』
『素晴らしい事を思いついた。ひょっとして家畜を混ぜれば、豚の多産と牛肉の美味さを兼ね揃えた生物が出来るのでは?早速やってみよう』
『失敗だ。上手く混ざらず、それぞれの頭部を持つ上に、凶暴性が増していた。しかも人種を優先的に襲う様だ。こんなものは家畜と呼べない。まずは複製の方に力を入れて、しっかりとした基礎を作り上げよう』
『軍部が合成家畜の資料に目を付けたらしい。大陸中の雌雄を送るから、それの複製生物を混ぜて戦闘力を調べろとは…。そんな事よりも牛の味を持った鶏を作らせろよ…』
『全自動で家畜の複製を作り上げれる装置が出来たぞ!これで小大陸は永遠に繁栄するだろう!』
『軍部に全て取り上げられてしまった』
『もう手遅れだ。私の作った装置は、合成生物を作る生産工場に仕立て上げられていた。研究所の人間は全員食われた。私も傷で長くない。これを読んでいる人がいれば、すぐに装置を破壊して欲しい。地下にある魔石鉱脈は途方もない埋蔵量だ。このままでは永遠に合成生物が作られてしまう。どうか頼む』
「なんとまあ…」
「ふん」
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ある男の善意と、人間の欲の暴走が。
「どうすんのこれ?」
「決めってるさ。跡形も無く吹っ飛ばすんだよ」
「んだ」
一応ドロテアに確認を取ったユーゴであったが、ドロテアの考えも彼と一緒だった。
「じゃあ上に出るよ」
(えらく苛ついてるな)
「ああ」
ドロテアが随分苛ついているなと感じていたユーゴであったが、立ち入るべきではないと判断し、そのままドロテアを負ぶって地表に到着する。
「それでは俺が」
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「こりゃまた」
世界を押し広げ、非ざる現象を引き起こす"7つ"よりも更に上。術者の願いをそのまま現実に引き起こす、神話の魔法"8つ"が小大陸にて唱えられた。
ユーゴはドロテアが魔法を唱えた瞬間から、はるか上空に出現した、とてつもなく巨大な魔力の塊を察知。
それをよく見ると、岩の塊のようなものに見えたが、地表遠くからみてそのサイズなのだ。砦どころか牧場全てを飲み込むほどの岩石は、そのまま落下を開始し地表に着激。しかし、そのまま勢いが衰えることなく、地下深くにめり込みながら爆散した。
「ふん」
「人に大穴作るなとか言ってたのに、婆さんが作ってどうすんだよ」
轟音とともに発生した、津波の様な土煙と、弾丸の様にはじけ飛ぶ岩が収まると、そこには牧場の後は無く、ぽっかりとした何処までも続く大穴が大地に刻まれていた。
「虫の居所が悪かったのさ」
「さよけ」
杖で自分の肩を叩くドロテアの姿を見て、呆れたようなユーゴであった。
「さて。帰ってソフィアに言ってあげないとね」
「…うちの子達泣くかな?」
「フェッフェッ。随分懐いていたからねえ」
先程の魔法でストレスを発散したのか、普段の気配に戻ったドロテアと、軽口を言い合いながらユーゴは大陸へと帰還する。
◆
魔物辞典
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